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2012年11月第2週号
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2012年11月第2週号

2012-11-12 09:18
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    ┃    め る ま が ア ゴ ラ     ┃
    ┃        ちゃんねる         ┃
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    ─ 2012年11月第2週

    めるまがアゴラちゃんねる、第017号をお届けします。
    発行が遅れまして申し訳ございません。
    今号から新しい連載が始まります。
    経済アルファブロガーの藤沢数希氏と池田信夫の対談『世界金融バブル 宴の後の二日酔い』です。
    第一回の今週は、金融業界に携わる人たちの高額な収入と過熱したマネーゲームの背景について語っていただきます。

    コンテンツ

    ・ーム産業の興亡(27)【特別篇】ソーシャルゲーム協会(JASGA)の今後のソシャゲ市場への影響

    ・『世界金融バブル 宴の後の二日酔い』藤沢数希氏×池田信夫 第一回「暴走したマネーゲーム」(その1)

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    特別寄稿:

    新 清士
    ゲーム・ジャーナリスト

    ゲーム産業の興亡(27)
    【特別篇】ソーシャルゲーム協会(JASGA)の今後のソシャゲ市場への影響

    一般社団法人ソーシャルゲーム協会(JASGA)が成立した。今回は特別篇として、この団体の成立はどのような効果をもたらすのかを、私なりにまとめた情報としてお伝えしておきたい。

    3月にソーシャルゲームが社会的に問題視されたことを受ける形でスタートした、前身となるソーシャルゲームのプラットフォーム事業者6社(NHN Japan、グリー、サイバーエージェント、ディー・エヌ・エー(DeNA)、ドワンゴ、ミクシィ)に加え、家庭用ゲーム機向けソフトウェアの業界団体と一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)、パソコン向けのオンオンラインゲーム事業者を中心として発足した一般社団法人日本オンラインゲーム協会(JOGA)など、関連団体と関連事業者50社により構成される。

    多くの報道が行われているように、設立の記者会見では、6社協議会では市場競争力の観点から、最も大きな影響力を持つ2社、共同会長代表理事にはグリー代表取締役の田中良和氏に、DeNAの代表取締役社長の守安功氏が就任する発表が行われた。

    しかし、守安氏が会見に欠席し、各社の足並みが揃っていないことを露呈させる異常な事態が起きた。また、事務局長には、ソーシャルゲームの分野には詳しいとは考えにくい元郵政省の官僚出身の慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科の中村伊知哉教授が就任するなど、JASGAの実行能力に対する疑問がいきなり突きつけられる不安定な体制でのスタートとなった。

    私は、JASGAの成立後に注目すべきポイントを3点上げておきたい。

    1.JASGAは社会的批判に一定の防波堤になるが、大きな批判に脆弱な可能性
    2.公的機関がソシャゲに対して追加の規制を行う可能性は現状では小さい
    3.依存症は他のギャンブルに比べ小さく、批判の再燃は広がりにくいがリスクはある


    ■1.JASGAは社会的批判に一定の防波堤になるが、大きな批判に脆弱な可能性

    ソーシャルゲームでは、どの程度、ユーザーの「射幸心」を煽ってビジネスを展開していいのかという線は現状でははっきりしていない。各プラットフォーム企業の上限キャップ制(金額は未公表)により、1プレイヤーの月の利用上限金額に制限が行われている形で自主規制を行っているが、それが社会的に妥当であるのかどうかは、今後も明快にならない。この問題は、今後も社会的に認められる受容性によって決まるため、JASGA成立後も
    曖昧な状態が継続する。JASGAは、ゲーム業界が社会に対してアピールする防波堤になると思われるが、大きな社会的な批判には、各企業の足並みを揃える難しさから、脆弱である可能性が出てきた。

    しかし、すでに消費者庁のコンプガチャを対象とした法令に反しない範囲内での、新しいガチャスタイルが複数登場してきており、コンプガチャによる業績の影響があまりなかった会社も少なくない。
    一方で、すでにガラパゴス携帯から始まったソーシャルゲーム市場は、グリー、DeNAといったプラットフォームといった中心企業と、初期参入によって成功した新興グループ(ドリコム、オルトプラス、Gumi、Gloops、クルーズなど)、家庭用ゲーム機会社(コナミ、バンダイナムコなど)と、はっきりと勝ち負けが明快になりつつあり、急成長が頭打ちになる傾向がはっきりではじめてきた。ガラケー出自のソシャゲ市場成熟の様子が感じられはじめている。

    一方で、ガチャそのものを使わないソシャゲも登場してきており、むしろ、市場成長性という観点では、ガチャは最も重要な問題ではない。特にiPhoneやアンドロイド市場で独自展開している企業のなかにその傾向が出てきている。例えば、「ガーディアンクルス」(iPhone、スクウェア・エニックス)では、カードバトルゲームではあるが、一切ガチャは使っておらず回復アイテムを消費するスタイルで、ゲームを提供している。ゲーム内の仮想通貨も存在していないゲームデザインになっているため、RMTが極めて成立しにくいゲームになっている。

    これらの動きは、グリー、DeNAといったプラットフォームの影響力を相対的に下げる可能性を秘めている。また、アップル、Google等はJASGAに加盟していないこともあり(今後も加盟しないだろう)、JASGAの価値を相対的に引き下げる効果を持つ。これらの海外プラットフォームに、JASGAの基準が当てはまるのかは、曖昧な状態だ(消費者庁の見解でも、どう法的な解釈をするべきなのかは、曖昧な部分)。


    ■2.公的機関がソシャゲに対して追加の規制を行う可能性は現状では小さい

    私の取材では、消費者庁のみならず、11年夏頃から、警察(国家公安委員会)は独自に関心を持ちはじめていたことを把握していた。2〜5月の頃には、ゲームセンターやパチンコが対象となっている風営法の規制対象となりうる潜在的な可能性を秘めていた。もし、対象となった場合には、日本のソーシャルゲーム業界そのものの成長性の可能性が完全になくなるリスクがあった。

    警察が規制に入る場合には、大きなポイントはRMTによる賭博性が存在しているかどうか、そして、社会的な問題として高い関心を得ているのかが重要なポイントだった。ただ、6社協議会成立以降、社会的な問題が収縮しており、現状も大きな問題は起きているという状況ではない。そのため、一応、JASGAの成立によって、現状、新たなアクションがすぐに起きる可能性は低いとみている。

    ただし、国民生活センターが10月31日に明らかにした、相談件数の推移では、9月30日時点での2012年の相談件数は2043件と、11年の同時期の1026件より大幅に増加していることもあり、ソーシャルゲームが社会的に問題視されるリスクがなくなったとまでは言えない。また、JASGA自身の発足時の不安定さは、公的機関の介入の可能性に含みを残してしまったとも言える。


    ■3.依存症は他のギャンブルに比べ小さく、批判の再燃は広がりにくいがリスクはある

    私はこの観点について、現在取材を進めているが、ソーシャルゲームが生みだす依存症は、競輪、競馬、パチンコといったギャンブル依存と同じ脳内のメカニズムにより発生している可能性がある。
    一方で、世界的に人口の1%はなんらかの依存症を抱えているとの研究がある。そのため、フリーミアムでアイテム課金のビジネスモデルを展開している以上、射幸心を利用したビジネスモデルにならざる得ず、ソシャゲには依存症は確実に存在すると考えた方がよい。

    しかし、IT機器を利用したソーシャル性依存症は相対的に、ギャンブル依存より依存性が低い可能性を指摘する専門家の意見もある。もちろん、タバコやアルコールといった物質による依存に比べるとはるかに軽い。そのため、今後、過剰な射幸心を煽っている、という批判は大きくなりにくい可能性がある。特に、未成年者の保護が成功している限りは、問題が大きく広がる可能性は今のところ低い。

    ただ、JASGAのみならず、各ゲーム会社は、依存症の問題に踏み込んだ議論を行った形跡はない。依存症ユーザーは高額課金者であることが想定される。
    本来であれば、大規模な社会的な調査を行い、対策を行う必要の検討があってしかるべきだが、そのような声までは、出てきていない。まだ、それだけ、ソシャゲ企業の認識が甘い部分でもある。この部分は、外的な批判にさらされないと、JASGA成立後も具体的な施策を積極的に行わないと考えられる。依存症の問題は、すぐに大きな問題とはなる可能性は低いが、何かをきっかけにして、今後も再燃する可能性は十分に存在しているとみている。


    ■まとめ

    以上から、JASGAの成立は、ソシャゲ業界の成長を守る一定の能力を持つと考えられるが、団体としての活動は受け身的なスタンスの強さが際立っているように感じられる。また、自浄能力については未知数な部分があり、強い社会批判が再燃した場合には、脆弱な可能性を抱えているとみている。この問題は団体の成立によって決着したのではなく、今後もリスクを抱えながら進むことになると思われる。

    (注記:私は、4月よりグリー「利用環境の向上に関するアドバイザリーボード」の外部識者の一人としてボードメンバーに参加している。一方で、6社協議会及び、JASGA成立については、一切関与しておらず、以上の情報は筆者の独自取材に基づいている)


    新 清士(しん きよし)
    ジャーナリスト(ゲーム・IT)。1970年生まれ。慶應義塾大学商学部、及び、環境情報学部卒。他に、立命館大学映像学部非常勤講師。国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)副代表。日本デジタルゲーム学会(DiGRAJapan)理事。米国ゲーム開発の専門誌「Game Developers Magazine」(2009年11月号)でゲーム産業の発展に貢献した人物として「The Game Developer 50」に選出される。連載に、日本経済新聞電子版「ゲーム読解」、ビジネスファミ通「デジタルと人が夢見る力」など。
    Twitter ID: kiyoshi_shin





    世界金融バブル 宴の後の二日酔い
    藤沢数希×池田信夫

    1.暴走したマネーゲーム

    池田:今回は、9月に藤沢さんがダイヤモンド社から上梓された『外資系金融の終わり─年収5000万円トレーダーの悩ましき日々』に書かれた内容に基づいて、いろいろとお話をお伺いしたいと思います。
     藤沢さんは、サイエンスの分野の研究者を経て、外資系投資銀行でキャリアを積んできたわけですが、2008年のいわゆるリーマンショック以降、かつて花形だった外資系投資銀行が激しくバッシングを受け、この本にも書いてあるようにあまり見通しも明るくない……。

    藤沢:たしかに明るくないんですけど、でも金融業界ってやっぱり、まだまだ儲かる業界ではあるんですよ。構造的に。ただ、リーマン・ショック以前は、そこそこがんばれば、たとえばふつうの大企業のエリート・サラリーマンの5倍ぐらいの年収だったんですが、これからは2倍とか3倍くらいに落ち着いて行きつつある、ひょっとしたらもっと下がるかもしれない、という感じですね。それでもやっぱり金融業界の給与水準は、他の産業に比べて高いんですよ。
     この本にも書いたんですけど、金融業界って、見えない補助金ですとか、複雑怪奇な法規制による参入障壁だとか、既得権益の塊でして、必ずしも経済に対する貢献で、その高い報酬が説明できるわけではないんですよ。でも、補助金といっても、何か政治家と癒着してお金をもらっているわけじゃなくて、ふつうの人には理解しにくい「リスク」をうまいこと社会に押し付ける、というような非常にわかりにくい方法になっているわけです。まさに「見えない」補助金です。
     この本で、僕はそういう難しいけど、とても大事なことを、簡単な言葉で書きたかったんですよ。

    池田:日本はそれほどでもないと思うんですけど、アメリカの金融の人たちの収入ってちょっと異常じゃないですか。

    藤沢:外資系、たとえば米系の投資銀行の場合、ニューヨーク勤務でも、東京勤務でも、トレーダーとかセールスなどの専門職の報酬の決め方が変わるわけではありませんから、そういう意味では日本の外資系金融の人たちの収入も高かったですね。マネジメント職は、本社の方に給料が高い人が集中してますけどね。でも、メガバンクなど、日本の金融機関も、メーカーなどに比べると結構給料高いですよね。
     2008年のリーマンショックまで、金融業界の給与水準はひたすらあがり続けてきたわけなので……。
     僕は、この本を書くために、過去のこういう外資系投資銀行の暴露本をいろいろ読んだんですけど、一番古い本は、マイケル・ルイスの世界的なベストセラーで『ライアーズ・ポーカー』という本です。舞台は今はなきソロモン・ブラザーズという投資銀行なんですけれども、ルイスはそこでセールスをやってて、住宅ローン担保証券など、大量に集めた住宅ローンを束ねたりして、様々な金融商品をいろいろ作って売っていくんですね。
     だから、まさに世界中で大問題になったアメリカのサブプライムのMBS(Mortgage Backed Securities)とかCDO(Collateralized Debt Obligation)とか、そういう住宅ローン関連の複雑な金融商品をほぼ最初に始めたようなデスクで、マイケル・ルイスはセールスで働いていたんです。
     そして、彼が会社を辞める時に暴露本を書いて、それが世界的なベストセラーになりました。いま思うと、サブプライム危機などの芽が最初に出てきたころで、結構、重要な本なのですが、読んでてちょっと驚いたのが、そのときのデスクの儲けた金額だとか、めちゃくちゃ儲けたっていうトレーダーの年収とかが、いまと比べるとすごい少ないんですよ。
     その本では、5人ぐらいのデスクで、年間100億円儲けたとか、こんな20代のトレーダーが5000万円もボーナスもらったとか、めちゃくちゃすごいだろ、みたいな感じで書いてある。でも最近は、もう全然桁が違っちゃってて、たとえばリーマンショックのときに、一番儲けたヘッジファンド・マネジャーのジョン・ポールソンという人がいるんですけど、その人は住宅ローンを束ねて作ったMBSやCDOを、CDSというデリバティブを使って空売りして大儲けしたんです。
     そのヘッジファンドは、アナリストが10人程度しか働いていない小さなヘッジファンドなんですけど、その人がわずか数か月のあいだに2兆円くらい儲けたんですよね。で、自分の報酬として4千億円もらって、お客さんに残りの1兆6千億円くらいは行ったと思うんですけど。
     あと、ソシエテ・ジェネラルというフランスの銀行で粗相があったというか、ジェローム・カービエルというIT出身のトレーダーだったんですけど、IT出身だから銀行のシステムをいろいろごまかす方法をよく知っていて、彼は黙って隠しアカウントでものすごい金額の先物をトレードしていて、一人で8千億円くらいやられたんですよ(笑)。
     だから、20年前は、世界のトップの投資銀行の5人くらいで100億円儲けたり、一人が報酬5千万円ですごいとか言ってた。
     もちろんバブルがはじける前の2007年当時でも、5人のデスクで1年に100億円も儲けて、ひとりで5000万円も貰ったらすごいんですけど、まあ、ふつうにすごいというか、上の下とか上の中ぐらいの感じでゴロゴロいる感じで、わざわざ本にするほどのすごさではなく、トップクラスの上の上のところを見ると、もうゼロの数が2桁上がっちゃったわけですよ。マネーゲームのね。
     どうしてこんなにマネーゲームの規模がインフレートしていったのか、その原因は複雑で一言では表せないですけれど、一番大きいのはやっぱりアメリカをはじめ世界の金融政策だと思うんですよね。あまりにも世界中が金融緩和に頼りすぎるというか。景気が悪くなると金利をすぐに下げよう、お金をたくさん刷ろう、と。こうして市場に行き場のないマネーがじゃぶじゃぶに供給されていくわけで、そうすると金で別の種類の金を買う、というようなマネーゲームにしか使えませんよね。

    ※次号「暴走したマネーゲーム」(その2)へ続く


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