笹子トンネルの点検 子会社に割高発注
中日本高速道路
フアミリー企業の「専門外」に検査院懸念
9人が死亡する事故が起きた中央自動車道・笹子トンネルの点検をしていたファミリー企業に対して、親会社の「中日本高速道路」が同社に頼む必要性に乏しい業務を割高で発注し、会計検査院に指摘を受けていたことが3日、本紙が入手した内部資料と関係者の証言などでわかりました。中日本は点検や保全などの安全コストを減らす一方で、旧道路公団OBが天下る「ファミリー企業」には甘い体質が続いていることを示しています。
問題のファミリー企業は、「中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京」(本社、東京都新宿区)です。エンジ社は、中日本の高速道やトンネルなどの保守点検業務を担当。社長が旧道路公団関東第二支社副社長、中日本高速執行役員をつとめた天下り。副社長と2人の取締役も旧公団OBです。
本紙が入手した中日本の内部資料によると、会計検査院は2012年1月中旬に中日本東京支社や厚木工事事務所のほか、エンジ社などを立ち入り検査しました。内部資料では、調査官と中日本側のやりとりが記録されていました。
不審点追及
検査では、エンジ社にとって“専門外”の施工管理や土木建設支援業務を中日本が発注した点が問題になりました。
検査院の調査官は「エンジは施工管理業務をする会社ではないはずだ」と、発注した理由を追及。調査官はさらに、その業務がエンジから別会社に外注されている点など、不審な点をあげ、追及を重ねていました。
内部資料では、エンジに発注した「品質管理業務」の額に、調査官が「ちょっと高いですね」と驚く場面も記録。
中日本は、この業務を従事者1人あたり2000万円と計算して発注していました。
この業務とよく似た国土交通省の「工事監督支援業務」の契約実績を本紙が調べたところ、国交省が設定する予定価格は1800万円弱が一般的。落札価格は、1400万円弱まで下がることが多く、中日本の割高発注が際だちます。
エンジに対しても調査官は「この業務をエンジが請け負う意義が不明」「品質管理業務の技術経費が高い。早期に見直しする必要がある」と指摘していました。
両社の関係についても、調査官は「民営化前のファミリー会社問題と同じ状況にならないように」とけん制。ファミリー会社問題とは、旧道路公団がOBの天下り企業へ業務を独占的に割高で発注する癒着体質を指します。
なれ合う中
中日本関係者は「中日本とのなれ合いの中で、エンジが笹子トンネルで、どんな点検をし、中日本にどんな報告をしていたのか、疑問だ」といいます。
政府の出資を受ける中日本高速道路は、毎年、会計検査院の検査対象です。本紙の取材に中日本は「毎年、検査院の受検をしているのは事実だが、時期など詳細は明らかにできない」としています。