主張

「防衛大綱」凍結

軍事費増へなりふり構わず

 安倍晋三政権が軍拡に拍車をかけようとしています。民主党政権下で2010年12月に策定された「防衛計画の大綱」(大綱)と「中期防衛力整備計画」(中期防)を凍結し、2013年度は1年限りの方針をつくって軍事費増にふみだすとともに、「大綱」そのものを見直し、改定するとしています。

 過去の侵略戦争や日本軍「慰安婦」を謝罪した「村山談話」や「河野談話」の見直しを言い出すなど誤りの反省も行わず、なりふり構わず軍事費増にふみだせば、アジアをはじめ世界から孤立を招くのは明らかです。

まさに強権発動

 防衛省は早速、週明けに決定する12年度補正予算案に新たに2124億円の軍事費を計上し、13年度予算案では今年度より1200億円程度増やして、約4兆8000億円の軍事費を要求する構えです。深刻な財政危機の中で、政府は軍事費も10年連続で前年度より削減をしてきましたが、安倍政権は事実上の15カ月予算を編成して、軍事費の大幅増に転換しようという魂胆です。「大綱」や「中期防」の凍結はそのための異常きわまるやり方です。

 「大綱」とそれを具体化した「中期防」は、危険な日米軍事同盟の強化と軍備増強のための計画書ですが、民主党政権が策定したさいには軍事費を削って国民生活に回せという国民の声を無視しきれず、人件費「抑制」や自衛官の「2千人削減」などをもりこんでいます。「中期防」は、11~15年度の5年間で軍事費の総額を23兆円余りと定めています。安倍首相はそれが気に入らないからと凍結し、都合のいい計画書に改定するというのです。文字通り異例な、強権発動そのものです。

 今年度補正予算案や来年度予算案に盛り込むという内容は重大です。F15戦闘機の戦闘力を強化するための改修をはじめ自衛隊員の増員や東シナ海での空自の空中警戒管制機(AWACS)、早期警戒機(E2C)、護衛艦などの運用強化をめざしています。墜落の危険がある新型輸送機オスプレイの導入のための調査費800万円も計上します。尖閣諸島周辺などでの偵察・監視活動を強めるといいますが、力まかせの対応は平和的に解決すべき領土問題の解決をいっそう困難にするだけです。

 安倍首相がなりふり構わずに軍事費増にふみだすのは、軍事力で対応するという「軍事対抗主義」を推し進めるとともに、自衛隊が米軍と一体になって軍事活動を強化し、アジア太平洋地域を重視したアメリカの新たな軍事戦略に貢献するためです。日本が海外で戦争できるような軍事能力をもつのは、戦争を放棄した憲法に違反します。新たな「大綱」や「中期防」の策定が日本をいよいよ危険な方向に引き込むのは明らかです。

平和と生活守る声強め

 安倍首相は軍事費を増額し軍拡を進める一方で、憲法解釈を変えて集団的自衛権の行使を認めることを狙っています。日本が攻撃されなくても、アメリカと一緒にたたかうということです。憲法9条をふみにじる危険な企てです。

 「村山談話」や「河野談話」の見直しを言い出し、軍拡と軍事同盟強化の路線をひた走る安倍政権に国際的な批判は必至です。安倍政権の策動に立ち向かい、平和と生活を守ることが重要です。