買い支える日本政府 債務不履行なら大被害
米国の債務不履行(デフォルト)問題が世界の注目を集めました。米国では、16日夜、来年1月15日までの暫定予算と、2月7日までの間は現行債務上限を超える借り入れを可能とする法案が可決、成立、当面の危機は回避しました。期限となっていた17日のわずか1日前という土壇場での決着でした。しかし問題は先送りされただけ。このごたごたを通じ、基軸通貨ドルを発行している米国の威信低下が強く印象付けられる結果となりました。
(ワシントン=洞口昇幸、経済部=山田俊英)
各国から強い懸念
今回のデフォルト危機には、各国から強い懸念が広がっていました。
今月10、11の両日にワシントンで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の共同声明は、米国に「緊急の行動」を求めました。
「米国への信頼や信用が失われると、基軸通貨としての米ドルの役割が損なわれる恐れがある」。米の有力経済紙ウォール・ストリート・ジャーナル16日付は専門家のこうした見解を掲載しました。
ロイター通信は16日、「“脱アメリカ化された世界”の利益」と題するコラムで、世界経済の“主役交代”を印象付けました。米国は多くの未解決の問題があり、「米国型とは違った活力ある中核的存在」として中国や中南米諸国、インドなどを紹介。「やがて世界的な責任の一端を引き受ける」これらの国々・地域が、「より安定した将来を与える」との見方を示しています。
土壇場まで決着が長引いた最大の理由は、共和党内の強硬的保守派「ティーパーティー(茶会)」によるオバマ政権への対決の構図があります。
民主・共和溝深く
下院多数派の野党共和党は、政府機関の閉鎖解除と債務上限引き上げを駆け引き材料に、オバマ政権がすすめる医療保険改革法を大幅に見直すための交渉を要求。オバマ大統領は拒否し、対立が続きました。
民主、共和両党間の溝は、今回の危機回避で埋まったわけではありません。
16日夜の法案可決後、茶会系の上院議員は「(今後も)医療保険改革法を止めるために何でもする」と米テレビ局に答えています。
同党は、無保険者解消のために財政支出を伴う同法を敵視し、実施の延長・阻止を目指してきました。今回も茶会が影響力を発揮、共和党は強硬姿勢を取りました。
米調査機関ピュー・リサーチ・センターの16日発表の調査では、茶会を「好ましくない」とする答えが2010年の25%から49%に伸びました。
しかし、共和党支持層の53%、無党派層の30%が「好ましい」と回答しています。
この数字が14年の中間選挙、16年の次期大統領選挙を前に、茶会が共和党内で影響力を持つ理由だと米紙は分析しています。
第3政党求める声
今回、「第3の有力政党」を求める声も6割と過去10年で最高(米ギャラップ社調査、11日発表)となり、米国民の二大政党への不信・不満が高まっています。
来年2月7日の新たな債務上限の期限を前に、今年12月中旬までに超党派で財政赤字削減策もまとめなければなりません。
「次のたたかいはほんの数カ月後だ」と、米CNNテレビは報じています。
海外勢の中で米国債を買い支えているのは圧倒的に日本と中国です。米財務省の直近の統計(7月時点)によると、日本が保有する米国債は1兆1354億ドル(約111兆円)。米国外で保有される米国債の20%を占めています。2000年の約3000億ドルから4倍近くに急増しました。2008年以降、世界最大の米国債保有国になった中国(1兆2773億ドル、構成比23%)に次ぎ、日本は世界第2の米国債保有国です。
米国債のデフォルトは先送りされたものの、危機が去ったわけではありません。米国債への信用が揺らげば、日本経済にも多大な影響が及びます。
日本政府や金融機関が保有する米国債も価格が下がります。米国債を持つ銀行は保有資産に損失が出るため、貸し渋り、貸しはがしに走ります。投機筋が米国債を売り、資金の逃避先として日本国債を買うことで、円高ドル安が進む可能性があります。みずほ総合研究所の試算によると、5%の円高が生じるといいます。円高は日本の景気を冷え込ませ、賃下げや雇用情勢の悪化につながりかねません。