主張

社会保障改悪法案

「自助努力」を迫る時代錯誤

 安倍晋三内閣が、消費税大増税と一体ですすめる社会保障改悪の日程や段取りを盛り込んだ「社会保障制度改革プログラム法案」を臨時国会に提出し、「重要法案の一つ」として成立させる構えを強めています。医療・介護・保育・年金などあらゆる分野で国民に負担増と給付削減を求める制度づくりの期限をあらかじめ定める法案は、きわめて異例です。日本の社会保障制度のあり方を大本から覆す内容をもつ法案を、多数の力で強行することは許されません。

改悪日程が目白押し

 プログラム法案は、消費税率を2014年4月に8%、15年10月に10%へ段階的に引き上げるのと同時並行に行う社会保障改悪の中期的な計画を定めたものです。

 消費税率が8%になる来年4月から70~74歳の医療費窓口負担を2割に引き上げることを手始めに負担増・給付減が目白押しです。

 介護保険では、「要支援」の人を保険給付対象から除外したり、特別養護老人ホームの入所資格を「要介護3」以上に限定したりする改悪法案を来年1月の通常国会に提出し、再来年4月に実施するスケジュールを描いています。

 消費税大増税で国民に負担増を強いたうえ、医療や介護を必要としている人たちに容赦なく犠牲を強いるのは本末転倒です。「消費税増税は社会保障充実のため」という理由は成り立ちません。

 大規模な介護破壊計画には広範な人たちから撤回を求める声が噴出し、医療・保育・年金の改悪にも国民が怒りの声をあげています。大義も道理もない社会保障改悪はただちに撤回・中止すべきです。

 プログラム法案が異常なのは、政府の社会保障への責務を「自助・自立の環境整備」としてとくに打ち出したことです。法案の大きな柱に「個人の自助努力を喚起させる仕組み」の導入を掲げ、医療では「個人の健康管理、疾病予防」「主体的な健康の維持増進への取組を奨励」などをうたい、介護では「介護予防等の自助努力」を促す仕組みの検討を唱えています。徹底した「自己責任論」です。「公助」「共助」の言葉さえ消えました。

 社会保障の理念の大転換です。政府が、社会保障で国民に「自己責任」を迫るのは責任放棄以外のなにものでもありません。病気や、老いによる衰えは、個人の努力だけで解決できません。だからこそ、だれもが安心して医療や介護などを受けることができるよう国が責任をもつ公的な社会保障制度が整えられてきた歴史があるのです。プログラム法案の時代錯誤ぶりはあまりに明白です。

 社会保障の「自助努力」推進は、財界の強い要求です。経団連は最近発表した社会保障についての提案で、あからさまに「自助努力の積極的な奨励」を要求し私的年金の拡大などを求めました。大手保険会社トップは「(国民が)自己責任・自助努力を求められれば、補完する民間保険の役割は高まる」と露骨です。大企業のもうけのために公的社会保障を縮減・解体するのは許されません。

国民の力で改悪阻止

 憲法25条は、社会保障・社会福祉の向上・増進に努めることを国に義務づけています。この理念に真っ向から反するプログラム法案を廃案に追い込み、社会保障の再生・拡充を実現する国民の共同したたたかいが重要です。