28日の衆院本会議で審議入りした労働者派遣法の改悪案。「生涯ハケン、正社員ゼロ」を押し付ける危険性と、“労働者の保護や正社員化につながる”という安倍首相のごまかしが浮き彫りとなりました。

生涯ハケン――期間制限、事実上なくす

 「派遣労働者のいっそうの雇用の安定、保護等をはかり、多様な働き方の実現をめざすものであり、『正社員ゼロ法案』あるいは『生涯ハケン法案』では決してない」

 高まる反対世論を前に、首相はこう言いつくろいました。

 雇用は、労働者を雇った企業が仕事を指示する直接雇用が大原則です。そのため派遣先から仕事を指示される派遣労働は「臨時的・一時的業務」に限るとして、業務や期間を限定し例外的な場合に限り認めているものです。

 首相は、「常用代替を防ぐ」として、派遣の受け入れ可能期間を3年とし、期間を延長する場合は労働組合などからの意見聴取を行い、「反対意見が表明された場合は、対応方針を説明する義務を課す」と胸を張りました。

 しかし、労組が反対しても会社が従う義務はなく、防止措置にならない仕組みです。

 しかも、労組がある企業は2割未満。「過半数代表者」が選挙で選出されているのは1割もなく、4割近くが会社の指名などです。

 派遣労働者についても3年ごとに別の課に移せば、同じ労働者をずっと使い続けることができます。日本共産党の高橋ちづ子議員は「まさに『生涯派遣』そのものだ」と批判しました。

キャリアアップ――正社員化ならず

 首相は「正社員を希望する派遣労働者には、正社員への道が開かれるようにするものだ」と強調しました。

 しかし、改悪案は、派遣先の「直接雇用義務」を定めた現行法の規定を縮小し、後退させています。首相は、「期間制限に違反すれば、派遣労働者に労働契約の申し込みをしたものとみなすことにしている」と答えましたが、期間制限を際限なく延長できるようになれば違反にもならず、直接雇用にはつながりません。

 現行法に盛り込まれていた「3年働けば派遣先に雇用される」という正社員化の道を閉ざしたのが実態です。

 首相は、「派遣労働者の正社員化を含むキャリアアップを支援する」と強調しました。

 しかし、首相があげたのは、正社員募集情報の提供など「配慮・努力規定」でした。高橋氏は「実効性は期待できない」と批判しました。

「均等待遇」は先送り――女性活躍に逆行

 派遣労働者は、年収300万円未満が84%にのぼるなど低賃金に置かれています。派遣先の労働者と同じ仕事をしていれば同じ待遇が保障される「均等待遇」を確立することが急務です。ヨーロッパでは当たり前の原則となっています。

 しかし法案は「均衡待遇」にとどまり、派遣先の労働者と派遣労働者の格差を容認しています。首相は「乗り越えるべき課題がある」などといって先送りする考えを表明しました。派遣先はますます低賃金の労働者を使用することになり、派遣労働がまん延することになります。

 高橋氏は「女性活躍というのなら、均等待遇、派遣先の団体交渉応諾義務など、派遣労働者の保護を強化する規定を法定化することだ」と求めました。