主張

米国とキューバ

国交正常化交渉を歓迎する

 オバマ米大統領とキューバのラウル・カストロ国家評議会議長が17日、1961年以来途絶えていた国交の正常化に向けて来年早々にも交渉を開始すると同時に発表しました。この歴史的変化の背景には、キューバの体制転換をもくろむ歴代米政権による国際法を無視した封鎖政策に対する批判の高まりと米国自身の孤立、ゆきづまりがあります。外交関係の再確立は、両国の対話と相互理解を深めるうえで歓迎すべきものであり、中南米で前進している平和の地域共同の取り組みに寄与することが期待されます。

「50年以上の失敗」

 米国は59年のキューバ革命によって米国いいなりのバティスタ独裁政権が打倒された後、61年に国交断絶を通告して武力侵攻(ピッグス湾事件)まで引き起こし、翌62年からは対キューバ全面禁輸に踏み切りました。96年以降は、キューバと交易する第三国の企業への制裁を可能にする国際法無視の封鎖強化策も実施しています。

 国連総会は今年10月、米国による対キューバ経済封鎖の解除を求める決議案を賛成188、反対2、棄権3の圧倒的賛成多数で採択しました。23年連続の採択です。

 米国の敵視政策による米州機構(OAS)からのキューバの資格停止処分(62年)は、保守政権を含む中南米諸国の強い要求を受け、すでに撤回に追い込まれています。来年4月に開かれる米州首脳会議には、議長国パナマなどの尽力で、キューバも参加する見通しです。

 今日の世界では、対等、平等、内政不干渉、異なる社会制度の国々の平和共存は国際社会の大原則です。米国はこの原則に立って、国交正常化にとどまらず、キューバを国際社会の一員として認め経済封鎖の解除を求める国際社会の声に真摯(しんし)に耳を傾けるべきです。

 オバマ大統領は声明で、「キューバの崩壊は米国の利益にとってもキューバ国民にも役立たない」とのべるとともに、イラク侵略などが引き起こした混乱の反省を示唆しつつ、混乱のない方が「諸国は永続的な進化を享受しやすい」と強調しています。

 同時にオバマ大統領は50年以上にわたる対キューバ政策を「失敗した時代おくれの政策」と認めつつも、「関与を通じてわれわれの価値観を促進する」意図をあらためて明確にしています。それは、キューバの「民主化」という「善意」は正しかったとする言明にあらわれています。人権と自由の拡大は各国が取り組むべき課題ですが、米国は、キューバの未来はキューバ国民が決めるという原則を正面から認めるべきです。ラウル・カストロ議長も、主権の平等と民族自決権の原則に立って対話する用意があることをあらためて強調しています。同議長はまた、国交正常化は「もっとも重要な問題が解決したことを意味しない」として、当然にも経済封鎖の解除を求めました。

世界の平和と社会進歩へ

 国際社会は両国の合意を歓迎し、今後の交渉の成り行きを注視しています。両国間の問題はもとはといえば米国が一方的に引き起こしたものですが、主権の相互尊重や内政不干渉などの原則にもとづく対話によって対立点を克服し、世界と地域の平和と社会進歩のいっそうの前進に結実させることが望まれます。