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「70年新談話」企てる首相に内外から反発/「植民地支配と侵略」“削除”狙う
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「70年新談話」企てる首相に内外から反発/「植民地支配と侵略」“削除”狙う

2015-02-12 10:58


     安倍晋三首相が企てる「戦後70年新談話」。戦後50年の1995年に、旧自社さ政権のもとで出された「村山談話」の核心である「植民地支配と侵略」「痛切な反省」などの文言を「新談話」に盛り込むことに否定的な安倍首相の態度に対し、内外で反発が強まっています。(中祖寅一)

     安倍首相は「新談話」について、年初から「村山談話」や日本軍「慰安婦」問題での「河野談話」(1993年)について「全体として引き継ぐ」といいつつ、「植民地支配と侵略」など両談話の核心部分を盛り込むかについては、決して触れようとしませんでした。

     1月25日のNHKインタビューでは、新談話で「『植民地支配と侵略』などのキーワードを同じように使うことではないのか」と番組キャスターから問われ、首相は「そういうことではございません」と明言したのです。

    米国が懸念

     この首相の姿勢について、米政権と接触のある政界関係者は、「米国は安倍政権の『70年談話』に対して相当の危機感がある。特に『植民地支配と侵略』をはずすことに強い懸念を示していた」といいます。これを裏付けるように、ブリンケン米国務副長官は10日、韓国訪問の中で歴史問題での慎重な対応を日本に求めました。

     米議会調査局がまとめた報告書「日米関係 議会にとっての課題」(1月13日付)も、この間の安倍首相の「村山談話」見直し示唆、「河野談話」検証発言をあげて、「帝国日本による侵略とアジア人の犠牲という議論を拒否するような、日本の歴史に対する修正主義の見解を抱いていることを示唆している」と懸念を示しています。

     また米国の歴史家19人が、日本政府が国内のみならず米国の歴史教科書にまで日本軍「慰安婦」に関する記述の削除を求めるなど「検閲」のような態度を取っていることに対し抗議声明を準備しています。

    与党内でも

     与党内でも矛盾が広がっています。菅義偉官房長官が「70年新談話」について、有識者会合の意見を聞くものの、与党に対しては「理解を得ていく」とだけのべ(1月29日)、与党との事前協議に触れなかったことに公明党が反発。与党協議を求める声が相次いでいます。

     これに対し、萩生田(はぎうだ)光一・自民党総裁特別補佐がBS番組で「与党も野党も、事前検閲のような話が出ているが、行き過ぎだ」(9日)と発言。翌10日に公明党の山口那津男代表が記者会見で、「常識的に政府・与党でコンセンサスが当然つくられるだろう」とのべ、与党内のあつれきが表面化しています。自民党の谷垣禎一(さだかず)幹事長も、萩生田発言について事前検閲というが「用語法として適切かどうか議論があるかもしれない」(10日)と述べました。

     元自民党宮城県連青年部長で同県の白石市長を務めた川井貞一(ていいち)さんは、いま「九条を守る首長の会」会長として、安倍首相による改憲の動きに警鐘を鳴らし、歴史修正に対しても厳しく批判します。

     「敗戦でめちゃくちゃになったところから日本は平和国家としての歩みを誓った。二度と戦争をしないというのが保守の哲学の根本だ。安倍首相と今の自民党はその反省を投げ出す。大変けしからん」

    国政の根本 「専権」は乱暴

     「首相が専権事項としてやったらいい」

     安倍晋三首相が企てる「戦後70年新談話」について、自民党の萩生田光一総裁特別補佐はこう放言します。

     独断で首相が談話の内容を決めるという動きに対し、公明党は山口那津男代表はじめ、井上義久幹事長、漆原良夫中央幹事会長らが次々と批判を表明するという異例の反応です。

     中国が安倍首相発言を「侵略の歴史を否定するのか」とけん制していることが背景にあるとされます。

     自民党の二階俊博総務会長も3日の記者会見で「各党と調整を図るのが当然だ」と述べています。

     4日には自民党の谷垣禎一幹事長と公明党の井上義久幹事長の会談が急きょ開かれました。「70年新談話」で「与党のコンセンサス(合意)」を求める井上氏に対し、谷垣氏は「首相官邸と相談する」と述べました。

     憲法研究者の小沢隆一さんはこう述べます。

     「歴史認識をめぐる首相談話は、国を代表して日本が行ったアジアへの侵略戦争についての認識と反省を明らかにするもので、外交関係の根本になるものです。こうした国政の根本にかかわる重要問題について決める場合に、憲法が定める議院内閣制の下で国会に対して『連帯して責任を負う』内閣として、国会の意見をよく聞くことは当然のことです」

     さらに小沢氏は、戦後の国際秩序が日本やドイツの侵略を断罪したことから出発した経過に触れ、「戦争に対し日本政府がどのような態度を取るかは、国際・国内政治の両面にわたる日本の足場の根本にかかわる重要問題です」と語ります。

     安倍首相の意を受けて側近が国政の根本問題で「首相の専権」を振りかざすのはあまりに乱暴で独断的です。

     「九条を守る首長の会」の川井貞一さん(宮城県元白石市長)は言います。

     「戦前の日本は遅れて帝国主義に突っ込み、軍事力にモノを言わせようとして結局破滅し、帝国主義ではダメだという教訓を得たはずだ。そのことへの真剣なおわびをするべきだ」

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