医療保険改悪法案が24日の衆院厚生労働委員会で可決されました。採決をめぐる動きと法案の問題点は―。

法案質疑はわずか3日

ff741d3497612fd98807f43f590ea05f9982bc78 質疑されたのは17、22、24の3日間だけ。参考人質疑を入れても22時間です。審議入りの際、本会議で各党代表質問まで行った法案をわずかな質疑で採決を強行することは、国会の役割をないがしろにするものです。

 今回の法案は、国民健康保険(国保)発足以来の「大改革」をはじめ、現役世代から高齢者にまでおよぶ負担増、保険の利かない医療を拡大する「患者申し出療養」など多岐にわたっています。

 参考人からも「保険料がさらに高くなる」などの意見が相次ぎ、「丁寧な議論を」「国会論戦を軽んじている」と指摘されました。

国保の運営を都道府県化―保険料アップ徴収強化に

 今回の改悪で、国保の財政運営を、市町村から都道府県に移します。保険料率は引き続き市町村が決めますが、市町村が納める「納付金」は都道府県が決め、「標準保険料率」も都道府県が示すことになります。

 厚労省の唐沢剛保険局長は、標準保険料率は「繰入金を勘案しない」と答弁。保険料軽減のため行われている一般会計からの繰り入れをやめさせる姿勢を示しました。日本共産党の堀内照文議員は「保険料引き上げの圧力、徴収強化につながる」と批判しました。

 自治体の要求に押されて3400億円の公費が投入されます。しかし、今の繰入総額にも及ばず、政府は引き換えに繰り入れ中止をねらっています。

 さらに、都道府県主導で医療費削減の仕組みがつくられます。

 都道府県は、「地域医療ビジョン」で病床削減計画を立て、「医療費適正化計画」で医療費削減目標を立て、それぞれ進めます。これに国保の運営が加わり、医療費抑制を推進していく仕組みです。唐沢局長は「都道府県に総合的に取り組んでいただく」と認めました。

 日本共産党の高橋千鶴子議員は「リンクさせて医療費を抑制していく重大な中身だ」と強調しました。

手当たり次第負担増を招く

 後期高齢者医療の保険料の特例軽減を政令によって廃止します。特例軽減は、後期医療反対の世論に押されてつくられたもので、加入者の半分を超える865万人が対象。廃止で2倍から10倍もの負担増になります。

 一般病床や療養病床の65歳未満の負担を1食260円から460円に引き上げます。一カ月入院すると1万8千円の値上げです。入院食事は治療の一環であり、“患者追い出し”を招きます。

 紹介状なしで大病院を受診する際、5000円~1万円の定額負担の導入、国保組合への補助金削減、協会けんぽへの国庫負担率下限も引き下げます。

 消費税を上げながら負担増を強いることについて「負担と給付の均衡」(塩崎恭久厚労相)と言い訳しましたが、手当たり次第に“老いも若きも負担増”が実態です。

保険外診療を増やす

 新設する「患者申し出療養制度」で、患者の申し出を起点に保険がきかない自己負担の医療を拡大します。

 国による安全・有効性審査は、現行6カ月から6週間に短縮。書類の持ち回り審査でも認めます。前例があれば、臨床研究中核病院(15カ所)が2週間で審査。前例といっても承認さえあれば実施例は問われず、国は届け出を求めるだけです。

 堀内議員が、審査期間を短縮するのなら審査体制を拡充するのかとただしても、厚労省は「これから検討」と繰り返すだけ。医療事故や薬害に対する補償も民間保険の活用だけで患者の自己責任にされ、必要な医療の保険適用が進まない危険性が明らかとなりました。

 堀内氏は「国民皆保険を根本から崩すものだ」と批判しました。