主張

「大阪市廃止」否決

維新の野望阻んだ市民の共同

 橋下徹大阪市長と「大阪維新の会」がすすめてきた、大阪市を廃止し五つの「特別区」に分割する「大阪都構想」の賛否を問う大阪市の住民投票で「反対」が「賛成」を約1万票上回り、大阪市廃止案は否決されました。文字通り投票箱のふたが閉まるまでの大激戦・大接戦を制したのは「大阪市をつぶしてはならない」の一点で大きく広がった「オール大阪」の共同の力です。橋下市長と「維新の会」の野望にストップをかけ、大阪の未来を守りぬいた歴史的なたたかいは重いものがあります。

不利益ばかりの「都構想」

 橋下市長が掲げた「大阪都構想」は「府と市の二重行政のムダをなくす」などをうたい文句に、2017年4月に大阪市を廃止しバラバラにして、財源も権限も縮小する五つの特別区を設置するというものです。しかし、「都構想」の実態は「二重行政のムダ」がなくなるどころか、膨大な行政コストがかかり、住民サービスが低下し、医療や介護、子育て施策が大幅後退するなど市民に不利益をもたらすものばかりです。

 橋下市長が市主催の説明会39回すべてに出席したり、分厚いパンフレットを170万部発行したりするなど多額の税金を使い、「バラ色の未来」をふりまく宣伝に躍起になりましたが、日本共産党と「大阪市をよくする会」などによる事実にもとづく徹底した論戦によって、追い込まれ、「すぐに暮らしはよくならない」などの弁明を重ねる事態となりました。「都構想」の道理のなさは明らかです。

 維新はみずからの野望を押し通すため、「政党助成金」から巨費を支出し、テレビCMや連日の新聞折り込みなど、金と人を動員し、なりふりかまわぬ異常な「金権住民投票」を展開しました。この維新の物量にものをいわせた宣伝・組織戦を打ち破ったのが、「大阪市をなくすな」という一点にもとづく、幅広い市民、団体、政党の共同の画期的な広がりです。

 日本共産党、自民党、民主党の「合同街頭演説」が実現したのをはじめ、大阪市地域振興会や大阪市商店会総連盟などが参加する市民集会には公明党元府議も参加し、維新以外のすべての党がそろいました。府の医師会、歯科医師会、薬剤師会も「反対」を表明しました。それぞれの地域で4党と市民の手をたずさえた、草の根のたたかいも粘り強く展開されました。

 歴史と文化のある大阪市が壊されようとしているときに、「大阪市をなんとしても守りたい」という市民の願いにこたえ、党派や立場の違いを超えた共同がかつてなく広がったことは、未来につながる貴重な成果となるものです。

日本と大阪の未来のため

 住民投票結果を受け、橋下市長は12月の市長選に出馬せず、「政界引退」を表明しました。日本維新の会の江田憲司代表も辞任の意向を示すなど国政レベルでも波紋を広げています。

 橋下市長や維新の会が、安倍晋三首相や菅義偉官房長官らの「官邸頼み」の姿勢を強め、官邸側も「改憲」をすすめるため橋下市長らとの連携をめざしていたといわれるだけに、市民の審判は「改憲タッグ」への痛打でもあります。

 国民・住民が主人公のたたかいをさらに広げ、日本と大阪の明日を開き、くらしと地方自治を守り発展させることが重要です。