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戦争法案が衆院で審議入りしてから26日で1カ月。この間の日本共産党などの論戦で、米国のあらゆる戦争に自衛隊が参戦・軍事支援する法案の危険な中身と、憲法9条破壊の違憲性が鮮明になり、憲法学者や元内閣法制局長官も相次いで「違憲」と表明するなど、国民の批判と疑念の声は日増しに高まって国会を包囲しています。26日には衆院安保法制特別委員会で安倍晋三首相出席の質疑が行われます。
「見えない」
戦争法案成立を狙い、95日間という戦後最長の国会会期延長を強行した政府・与党。しかし、「衆院の採決もまだ見えない。憲法違反、(政府の法案の)説明不足という国民の批判は増えている。ハンドリングをひとつ間違えば大変なことになる」(自民党議員)と追い込まれています。
国会論戦のなかで安倍首相は、「自衛隊が『戦闘地域』まで行けば攻撃される可能性がある」「攻撃されたら武器を使用する」ことまでは認めながら、「自己保存のための武器の使用は武力の行使にあたらない」「他国の武力行使と一体でない後方支援は武力の行使にあたらない」という理屈で戦争法案を「合憲」としてきました。
この理屈は、日本共産党の志位和夫委員長の追及で総崩れとなっています。志位氏は5月27日の衆院安保法制特別委員会で、「『武器の使用』という概念そのものが国際法上存在しない」という外務省の文書も示し、「武器の使用」は「武力の行使」ではないという理屈が国際的に通用しないことを明らかにしました。
さらに17日の党首討論で、政府が「後方支援」と呼ぶ活動は国際的には武力行使と一体不可分の「兵たん」だと追及。安倍首相は「国際法上の概念はない」と認め、ここでも政府の理屈が世界では通用しないことがはっきりしたのです。
安倍政権が、憲法解釈を変更し集団的自衛権行使を容認した唯一の「理由」としてあげてきたのが、「日本を取り巻く安全保障環境が根本的に変容した」というものでした。この問題でも「他国に対する武力攻撃によって、政府の法案がいうような『存立危機事態』に陥った国が世界で一つでもあるか」(宮本徹衆院議員、19日の同特別委)との追及に、岸田文雄外相は「実例をあげるのは困難だ」と一つも具体例を示せません。立法事実そのものがなくなり、解釈変更した理由が成り立たなくなっています。
圧倒的多数
「戦争法案は違憲」の流れは大きくなっています。衆院憲法審査会での参考人質疑で自民党推薦の憲法学者も含めて全員が「違憲」と明言。200人を超える憲法学者が戦争法案は「違憲」との声明をあげ、報道機関のアンケートでも圧倒的多数が違憲性を指摘しています。22日の衆院安保法制特別委の参考人質疑では、宮崎礼壹、阪田雅裕両元内閣法制局長官が「違憲」「政府の憲法解釈から逸脱」と表明し、法案の撤回を求めています。 (中祖寅一)
異例の事態
衆院特別委員会の総審議時間は、参考人質疑を含めて25日時点で49時間47分(野党欠席時の空転時間を含めると54時間13分)。与党の採決目安からみても、ようやく衆院の折り返し地点に達したにすぎません。
審議が遅れる直接の原因は、衆院憲法審査会(4日)での憲法学者3氏による「違憲」宣告や、不明瞭な閣僚答弁をめぐる混乱です。しかし根本的な原因は、憲法9条に全面的に違反する法案をまとめて11本も会期末に出すという政権の異常な政治手法にあります。
この1カ月の審議では、日本共産党など野党の追及で政府の論理破綻が次々に露呈する一方、かつて政府内で憲法解釈を担っていた元内閣法制局長官の2氏からも「違憲」の指摘が出される(22日)異例の事態が続いています。
首相も焦り
遠のく国民世論に首相自らも焦りを隠しません。審議2日目には「(法案で)『できる』と答弁すると、それを『やるんだ』と(新聞の)紙面に躍る」といらだちを隠さず、野党議員には「早く質問しろよ」とやじを飛ばすありさま。後日の委員会で謝罪に追い込まれました。
担当閣僚として矢面に立つ中谷元・防衛相からは、「憲法をいかに法案に適応させるか…」という、「憲政史上最悪」の答弁まで飛び出し(5日)、これも撤回に追い込まれました。
審議中断(25日時点で計54回)の多さも、政府答弁の行き詰まりを物語っています。例えば、「後方支援で行ける範囲が広がるか」という単純な質問に対しても、政府は中断2回を挟み、質問8回目にしてようやく「広がる」ことを認める(15日)といった往生際の悪さです。 (池田晋)
「見えない」
戦争法案成立を狙い、95日間という戦後最長の国会会期延長を強行した政府・与党。しかし、「衆院の採決もまだ見えない。憲法違反、(政府の法案の)説明不足という国民の批判は増えている。ハンドリングをひとつ間違えば大変なことになる」(自民党議員)と追い込まれています。
国会論戦のなかで安倍首相は、「自衛隊が『戦闘地域』まで行けば攻撃される可能性がある」「攻撃されたら武器を使用する」ことまでは認めながら、「自己保存のための武器の使用は武力の行使にあたらない」「他国の武力行使と一体でない後方支援は武力の行使にあたらない」という理屈で戦争法案を「合憲」としてきました。
この理屈は、日本共産党の志位和夫委員長の追及で総崩れとなっています。志位氏は5月27日の衆院安保法制特別委員会で、「『武器の使用』という概念そのものが国際法上存在しない」という外務省の文書も示し、「武器の使用」は「武力の行使」ではないという理屈が国際的に通用しないことを明らかにしました。
さらに17日の党首討論で、政府が「後方支援」と呼ぶ活動は国際的には武力行使と一体不可分の「兵たん」だと追及。安倍首相は「国際法上の概念はない」と認め、ここでも政府の理屈が世界では通用しないことがはっきりしたのです。
安倍政権が、憲法解釈を変更し集団的自衛権行使を容認した唯一の「理由」としてあげてきたのが、「日本を取り巻く安全保障環境が根本的に変容した」というものでした。この問題でも「他国に対する武力攻撃によって、政府の法案がいうような『存立危機事態』に陥った国が世界で一つでもあるか」(宮本徹衆院議員、19日の同特別委)との追及に、岸田文雄外相は「実例をあげるのは困難だ」と一つも具体例を示せません。立法事実そのものがなくなり、解釈変更した理由が成り立たなくなっています。
圧倒的多数
「戦争法案は違憲」の流れは大きくなっています。衆院憲法審査会での参考人質疑で自民党推薦の憲法学者も含めて全員が「違憲」と明言。200人を超える憲法学者が戦争法案は「違憲」との声明をあげ、報道機関のアンケートでも圧倒的多数が違憲性を指摘しています。22日の衆院安保法制特別委の参考人質疑では、宮崎礼壹、阪田雅裕両元内閣法制局長官が「違憲」「政府の憲法解釈から逸脱」と表明し、法案の撤回を求めています。 (中祖寅一)
誤算続く政府・与党/当初の強行シナリオ霧散
通常国会会期末の24日までに80時間の審議を確保しての衆院通過―。戦争法案の強行成立に向けて安倍政権が描いていた当初のもくろみは、誤算続きの国会運営と反対世論の急拡大を受け、1カ月で崩れ去りました。戦後最長となる会期延長幅は、安倍晋三首相が対米公約した「この夏までの成就」どころか、このまま採決できず廃案に追い込まれかねない政府・与党の強い危機感の表れです。異例の事態
衆院特別委員会の総審議時間は、参考人質疑を含めて25日時点で49時間47分(野党欠席時の空転時間を含めると54時間13分)。与党の採決目安からみても、ようやく衆院の折り返し地点に達したにすぎません。
審議が遅れる直接の原因は、衆院憲法審査会(4日)での憲法学者3氏による「違憲」宣告や、不明瞭な閣僚答弁をめぐる混乱です。しかし根本的な原因は、憲法9条に全面的に違反する法案をまとめて11本も会期末に出すという政権の異常な政治手法にあります。
この1カ月の審議では、日本共産党など野党の追及で政府の論理破綻が次々に露呈する一方、かつて政府内で憲法解釈を担っていた元内閣法制局長官の2氏からも「違憲」の指摘が出される(22日)異例の事態が続いています。
首相も焦り
遠のく国民世論に首相自らも焦りを隠しません。審議2日目には「(法案で)『できる』と答弁すると、それを『やるんだ』と(新聞の)紙面に躍る」といらだちを隠さず、野党議員には「早く質問しろよ」とやじを飛ばすありさま。後日の委員会で謝罪に追い込まれました。
担当閣僚として矢面に立つ中谷元・防衛相からは、「憲法をいかに法案に適応させるか…」という、「憲政史上最悪」の答弁まで飛び出し(5日)、これも撤回に追い込まれました。
審議中断(25日時点で計54回)の多さも、政府答弁の行き詰まりを物語っています。例えば、「後方支援で行ける範囲が広がるか」という単純な質問に対しても、政府は中断2回を挟み、質問8回目にしてようやく「広がる」ことを認める(15日)といった往生際の悪さです。 (池田晋)