主張

子どもの貧困対策

生活の土台破壊をやめてこそ

 安倍晋三内閣が「子どもの貧困対策法」の具体化の一環として、ひとり親家庭の支援策などをまとめました。しかし、ひとり親家庭の生活を支える児童扶養手当の改善・拡充については「検討」にとどまるなど深刻な広がりをみせる子どもの貧困の実態に見合った規模と内容ではありません。子どもを持つ多くの貧困世帯を苦しめている生活保護制度改悪をあらためる方向も示していません。子どもがどんな環境に生まれても生活や学習が保障され、未来に希望をもてる社会にするため、政府の姿勢を転換させることが必要です。

「食べさせる物がない」

 「子どもに食べさせるものがない」。給食がなくなる夏休みの間、貧困家庭の支援をしている各地の市民団体のもとに助けを求める痛切な声が相次いだといいます。

 親の失業や離婚などによって家庭の経済状況が悪化し、貧困状態に置かれる子どもたちの問題は依然として深刻です。「貧困線」を下回る所得しかない世帯で暮らす18歳未満の子どもの割合を示す「子どもの貧困率」は、2012年に過去最悪を更新して16・3%にのぼりました。6人に1人の子どもが食べ物に困り、健康も侵され、学習すら保障されないなどの状態は、一刻も放置できません。

 13年に市民団体の運動を背景に「子どもの貧困対策法」が超党派で制定されました。同法は、貧困率削減の数値目標を明記しない不十分さなどはあるものの、政府の責任で子どもたちに経済、学習などの支援策をつくることを求めるなど、子どもの貧困対策の充実に向けた一歩となるものです。

 ところが安倍政権の対応はきわめて鈍く、昨年8月閣議決定した「対策大綱」では、関係者が求めていた児童扶養手当の対象拡大や、返済しなくてもいい「給付制奨学金」の導入は見送られました。

 先月28日、1年ぶりに開催された「子どもの貧困対策会議」(会長・安倍首相)でも、ひとり親家庭の「自立応援」などをうたった対策をまとめましたが、就労支援の相談体制の強化など従来の政策の延長などがほとんどで、ひとり親家庭の切実な願いに正面から応えるものとはいえません。

 日本のひとり親家庭の貧困率は54・6%と経済協力開発機構(OECD)加盟34カ国で最悪です。母子世帯の親たちの就業率は80%を超えますが、ほとんどはパートなど非正規です。子どもを抱えたひとり親が、普通に働けて、安心して子育てと生活ができる収入を得て、安定して暮らせる労働・保育環境を整えることが必要です。児童扶養手当の充実は緊急課題として位置づけるべきです。国会で成立を狙う労働者派遣法改悪は、低賃金・不安定雇用を拡大するもので、強行は絶対に許されません。

生活保護改悪の中止を

 安倍政権がすすめる生活保護費削減ほど、貧困家庭を苦境に追い込んでいるものはありません。生活扶助基準引き下げは、保護世帯の経済困難を引き起こすだけでなく、就学援助を受けられる対象世帯を減少させています。アパート代など住宅扶助費削減は母子世帯に安い家賃への転居を無理に迫るなど深刻な事例も生んでいます。

 子どもの貧困対策に逆行する社会保障改悪を中止させ、暮らしを支える制度の拡充に転じさせることが急がれます。