「今後も、辺野古に新基地は造らせないという公約の実現に向け、全力で取り組む」。11日夕、県庁内での記者会見で、翁長知事はこう強調しました。知事は会見のたび、必ずこのフレーズを繰り返しています。
公約の重み―。昨年の県知事選ほど、それが問われた選挙はありませんでした。2013年12月。仲井真弘多知事(当時)や自民党県連が相次いで「普天間基地の県外移設」との公約を撤回し、辺野古への新基地建設推進に転じました。
仲井真氏らが公約を撤回し、県民の8割が反対する新基地建設推進へ転向したことこそ、県民が怒り、従来の保守・革新を超えた「オール沖縄」で翁長氏を知事に押し上げた原動力でした。
ゆさぶり
自民党県連幹事長を務め、「保守のエース」といわれてきた翁長氏。官邸は「いずれ公約を撤回する」と期待し、ゆさぶりをかけてきました。
しかし、知事は安倍晋三首相らとの会談で、「沖縄の基地はすべて、強制収用された土地の上に成り立っている。みずから奪っておいて、代わりに別の場所を差し出せという。こんな理不尽なことはない」と、沖縄の基地問題の原点を訴え、官邸を圧倒します。10月13日には、県知事選での公約どおり、辺野古埋め立て承認の取り消しに踏み切りました。
「違法」に
1996年12月の日米合意以来、初めて辺野古新基地が「違法」とされた瞬間でした。ヘリ基地反対協議会の安次富浩共同代表は感慨を口にします。「18年間、たたかってきてよかった」
政府はただちに権力を総動員して反撃に出ます。知事の埋め立て承認取り消しを執行停止し、今週にも、承認取り消しは「違法」だとして、県を提訴するかまえです。
しかし、県民とともに歩む知事の決意は揺るぎません。7日、辺野古の座り込みに参加した妻・樹子さんの言葉が印象的です。「(夫は)何が何でも辺野古に基地は造らせない。万策尽きたら夫婦で一緒に座り込むことを約束しています」
沖縄 迫る法廷・選挙闘争
辺野古新基地をめぐるたたかいは、現場での工事阻止に加え、法廷闘争、さらに選挙戦へ舞台が広がります。政府は10月29日、辺野古の「本体工事」着工を宣言しました。しかし、現時点で行っているのは、辺野古崎陸上部先端の「仮設ヤード」設置に向けた整備にすぎません。
双方提訴
現地で抗議船の船長をしている北上田毅さんはこう指摘します。「埋め立て工事を行う際に、県や名護市の、数多くの許認可が必要になる。翁長知事が公約を守り続ける限り、工事を食い止めることは可能です」
国は17日にも、埋め立て承認取り消しの取り消しを行う「代執行」に向けて県を提訴すると報じられています。そうなれば、12月1日までに審理が始まります。同時に、県も知事の承認取り消しの執行停止は不当だとして、国を提訴する可能性があります。
裁判を通じて、沖縄の基地問題への国民の関心が高まり、政府を追いつめる世論を高める契機になりえます。
大きな力
「法廷闘争とともに重要なのは各種選挙だ」。知事は6日、沖縄社大党の会合でこう訴えました。来年には宜野湾市長選(1月24日投開票)、沖縄県議選(6月)、参院選(7月)が控えています。
これらはいずれも、新基地を許さない「オール沖縄」勢力と、新基地推進勢力とのたたかいになります。
知事は別の会合で、こう力説しています。「これらの選挙に勝てば、辺野古の工事を止める大きな力になる」