主張
「教育支出」最下位
世界でも異常な現状の打開を
経済協力開発機構(OECD)の調査で、国内総生産(GDP)に対して国や地方自治体による教育機関への公的支出の占める割合が、日本は6年連続で比較可能な32カ国中最下位となりました。教育への公的支出が少ないことによって、日本では世界でも異常な高学費や劣悪な教育・研究条件を生んでいます。子どもと若者の希望を閉ざし、日本の将来にもかかわる深刻な事態をこれ以上、放置することは許されません。
私費負担は2倍以上
OECDが24日に公表した調査結果によると日本は、2012年の小学校から大学までの教育機関への公的支出がGDP比で3・5%にとどまり、OECD加盟国平均の4・7%より1・2ポイントも少なくなっています。公的支出が少ないため、大学など高等教育の私費負担はOECD平均の2倍以上にのぼっています。
OECD加盟国では半数の国で大学の学費が無償で、ほとんどの国が返済しなくていい給付制の奨学金制度を設けています。高い学費でありながら給付制奨学金がないのは日本だけです。そのため、学生の過半数が「借金」である貸与制の奨学金を借りざるを得えなくなっています。貸与制奨学金の多くは有利子で、卒業と同時に平均的なケースで300万円、多い場合には1000万円もの借金を負わされることになります。多くの学生がアルバイトに頼らざるを得ず、違法・無法な働き方を強いる「ブラックバイト」から抜け出せない学生も少なくありません。
高校の授業料無償制度も昨年から廃止されてしまいました。不況により収入が減る中で、家庭の負担は限界に達しています。憲法が保障する教育の機会均等への責任を政府が放棄するものです。
日本の持つ経済力に比べて教育条件の劣悪さは明らかです。
欧米では小中学校が1クラス20~30人になって久しいという時代に、日本では35人学級さえいまだに完全実施していません。教員は多忙のうえ長時間労働をしいられ、子どもたちと向き合う時間を奪われています。国立大学の運営費交付金もこの12年間で12%も削減され、研究環境の劣化に拍車をかけています。
重大なのは安倍晋三政権が教育予算をいっそう削ろうとしていることです。財務省の審議会では、国立大学の学費を15年連続で40万円引き上げることにつながるような案まで示されました。小中学校の教職員も9年間で3万7000人削減しようとしています。
これには中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)や国立大学協会、学長など大学関係者、校長やPTAなど学校関係者からも反対や危惧の声が上がっています。教育への公的支出の比率をさらに低下させ、教育研究条件の悪化を深刻にし、学生や子どもをはじめとする国民を一段と追い詰める逆行は絶対にやめるべきです。
国民の共同の力で
教育への公的支出をOECD平均並みにすれば国と地方で約6兆円の増額になります。計画的に引き上げることで、私費負担を大幅に減らし、ゆきとどいた教育を実現できます。
日本の将来のため、国民の共同の運動で世界的にも異常な現状を打開し、教育予算を国際水準並みにするよう力をつくしましょう。