米軍関係経費の顕著な増額の背景には、沖縄県名護市辺野古への米軍新基地建設など、米軍再編経費の大幅な増額があります。
関係経費の内訳をみると、再編経費全体が前年度比552億円増の1461億円で、辺野古の米軍新基地建設にかかわる費用が271億円、前年度57億円から約5倍の増額です。
このなかには、新基地建設に反対する市民を抑えつけるための警戒船の契約金額や、キャンプ・シュワブの工事車両入り口を警備する民間警備会社の契約金額も含まれています。防衛省沖縄防衛局は本紙の取材に対し、15年度の契約は2件、43億円であることを明らかにしました。
ゲート前や海上で抗議活動をしている住民ら数百人を抑えつけるため、1日あたり約1180万円を費やしていることになります。
新基地建設をめぐって政府はさらに、辺野古埋め立て承認の代執行を求めて沖縄県を提訴した裁判で福岡高裁那覇支部に提出した訴状で「辺野古沿岸域の埋立工事等のために、平成26年(2014年)度末までに当初契約金額約900億円の契約を締結、既にそのうちの約473億円を支払っている」と説明。埋め立て承認が取り消されれば「上記473億円は全くの無駄金となり、国民がその負担を背負うことになる」と述べています。基地建設に反対する市民を暴力で抑えるだけでなく、埋め立て工事が中止されれば国民の負担となるかのように述べて、反対運動の萎縮を狙っています。
金額 膨れ上がる一方
過去最高額となった在日米軍関係経費とは、在日米軍に対する日本政府の支出の総称です。現在の在日米軍関係経費の内訳は、(1)在日米軍駐留経費(思いやり予算、基地周辺対策費、基地交付金、土地の賃料等)(2)在日米軍再編経費(辺野古新基地等)(3)SACO(沖縄に関する特別行動委員会)関係経費―から構成されています(図)。この大部分は、日米安全保障条約上、日本の支払い義務がありません。
支出する省庁も多岐にわたっています。大部分は軍事費(防衛省予算)からですが、基地交付金は総務省、「提供普通財産借上」(土地の賃料)は財務省が支出しています。
財務省の財政制度等審議会の分科会(10月26日)では、来年度からの「思いやり予算」は減額・一部廃止を検討する方針を出しましたが、在日米軍関係経費は今後さらに増額される危険があります。沖縄県名護市辺野古での米軍新基地建設など、在日米軍基地や米領グアムの海兵隊基地建設を推進しているためです。
当初、在日米軍関係経費は基地周辺対策経費、基地交付金、土地の賃料のみでした。しかし、1978年度から、アメリカ政府の要求をのんで金丸信元防衛庁長官(当時)が始めた「思いやり予算」が加わり、97年度からのSACO関係経費、06年度からの在日米軍再編経費と、日本が支払い義務を負わない経費が次々と継ぎ足され、金額が膨れあがっています。
(吉本博美)