主張

与党税制改定大綱

消費税増税の負担打ち消せぬ

 2016年度以降の税制について検討してきた自民・公明の与党が、17年4月からの消費税率の10%への引き上げのさい8%に据え置く対象に加工食品を含める方針で合意、これにもとづいて16年度税制改定大綱を決定することになりました。いわゆる「軽減税率」の導入は税率を据え置くだけで、負担の軽減どころか増税の負担を打ち消すものになりません。事業者の負担は確実に増えます。16年度の税制改定では主に大企業のための法人税の前倒し減税が決まっており、安倍晋三政権の国民犠牲政治を浮き彫りにしています。

増税を無理に押しとおす

 消費税の10%への引き上げのさい8%に据え置く対象を加工食品にまで広げることになったのは、自民党が主張した生鮮食品だけでは国民の実感が乏しいという公明党の主張に同意したためです。安倍首相らには沖縄などの地方選挙や参院選挙で公明党の協力を取り付ける思惑があるといわれます。

 「軽減税率」の導入はもともと、消費税率を5%から8%(昨年4月から)、8%から10%(当初は今年10月から予定、17年4月に延期)へと連続的に増税すると決めたさい、与党が持ち出したものです。消費税の増税が国民の暮らしも経済も破壊するため不人気なのをごまかすためで、消費税増税を無理やり押しとおす姑息(こそく)な手段です。

 「軽減税率」導入といっても対象となる品目の税率を据え置くだけなので、現在より負担が軽くなるわけではありません。複数税率導入は事業者にとっては事務手続きが煩雑になり負担が増えます。拡大する加工食品をどこで線引きするのか、財源はどう確保するのかなど、調整は難航しました。

 対象を加工食品にまで広げた結果、消費税の増税による増収見込みが1兆円近く減るといいますが、消費税率を2%引き上げるだけでも税収は5兆4000億円も増えるといわれており、国民の負担は大幅に増えます。5%から8%への引き上げ分を含めれば負担増は10兆円をはるかに超します。

 原則としてあらゆる商品やサービスに課税される消費税増税による負担増は、同じだけ国民の消費を冷やし、経済を悪化させます。昨年の消費税増税のあと日本経済は大きく落ち込み、8日発表された今年7~9月期の国内総生産(GDP)の改定値でも個人消費は速報段階より落ち込んでいます。消費税増税の負担増は、多少のごまかしで解消しません。

 公明党は加工食品への対象拡大を低所得者対策のようにいいますが、経済学者などでつくる民間税制調査会(民間税調)の試算では、食料品の税率を軽くしても、低所得者ほど負担割合が高い消費税の逆進性は変わりません。低所得者対策をいうなら「軽減税率」導入などとごまかさず、増税そのものを中止すべきです。

増税も大企業減税もやめ

 自公の税制改定大綱は、消費税増税とともに廃止される自動車取得税に代わる新しい自動車税の導入も決めました。一方法人実効税率については16年度に29・97%まで引き下げ、赤字法人などへの課税を強化するとしています。

 国民や中小企業を犠牲にする消費税増税も大企業減税もやめ、社会保障に必要な財源は消費税に頼らず確保する、税制・財政の抜本的な見直しが不可欠です。