進む米軍と自衛隊の一体化
国民に隠れ「戦争する国」の準備
山下氏は、憲法違反の戦争法の強行と並行して、日本が米国とともに「海外で戦争する」ための準備が自衛隊の装備・訓練・米軍配置の面で急速に進められている実態を告発し、同法と集団的自衛権行使を容認した「閣議決定」の撤回を強く求めました。山下氏は、安倍政権が来年度予算案で、当初予算としては初めて5兆円を超える大軍拡予算を組み、オスプレイ4機、米軍機にも対応する新型空中給油機などを導入することについて「海外と日米共同作戦での運用を目的としたものにほかならない」と強調。海上自衛隊のヘリ空母「ひゅうが」が米・カリフォルニア州での大規模な日米統合演習(昨年8月~9月)に参加し、武器や物資を前線に輸送する訓練の実施の事実を突きつけました。
さらに、戦争法を実行する日米統合司令部「同盟調整メカニズム(ACM)」の実行組織が米軍横田基地(東京都・多摩地域)へ設置されたことなど、戦争法の実行に向けて突き進む実態を次々と示した山下氏。「国民に隠れて日本を『海外で戦争する』国にするための準備は直ちに中止すべきだ」と迫ったのに対し、首相はいずれの実態についても「わが国の防衛に必要不可欠なもの」「指摘はまったく当たらない」などと根拠を示さず、否定に躍起になりました。
政府の姿勢こそ「普天間固定化」の元凶
辺野古新基地は巨大出撃拠点に
沖縄県名護市辺野古での米軍新基地について、安倍首相は「埋め立て面積は普天間(基地)の3分の1、機能も減少し、騒音対策が必要な住宅はゼロになる」などと喧(けん)伝(でん)しています。山下氏は「事実に反する主張をいつまで続けるつもりか」と批判。無条件での普天間基地の返還を求めました。山下氏は、辺野古米軍新基地が普天間基地面積の5倍におよぶ「米海兵隊の巨大な出撃拠点となる」と告発。滑走路が2本に増加され、強襲揚陸艦が接岸できる軍港機能を有するなど建設計画の全貌を示し、辺野古周辺住民にオスプレイの騒音被害が拡大するとただしました。
山下氏は「普天間基地は、沖縄戦のさなか、米軍が住民を収容所に入れている間に勝手に土地を接収してつくられたもの。無法に奪った土地は、無条件で返還するのが当たり前だ」と、翁長雄志県知事らが訴える新基地問題の「原点」を突きつけました。さらに、「『オール沖縄』の声に背を向け、辺野古新基地を『唯一の解決策』などと言って県内たらい回しに固執する政府の姿勢こそ、普天間の固定化をもたらしている元凶だ」と迫ったのに対し、首相はここでも「指摘は全く当たりません」の一点張りで、新基地建設をごり押しする姿勢を示しました。
現実を直視し貧困対策を
子ども・若者・介護…実態告発
「きちんと現実を直視し、国民が貧困に陥らず、貧困から抜け出せる対策を強めるべきだ」―。山下氏は、大企業・富裕層だけが潤った「アベノミクス」の破綻は明瞭だとして、子どもや学生、働く若者、介護世帯などあらゆる国民に広がっている貧困と格差への対策強化を迫りました。山下氏はまず、14年の国民生活基礎調査で「生活が苦しい」と答えた人は6割など、アベノミクスの“恩恵”が国民生活にまわっていないと指摘。消費税が10%に増税されれば、8%の据え置き分を含めても1世帯あたり年間6万2千円もの負担増になると述べ、「暮らしにも経済にも大打撃となる」とただしました。
首相は、同調査は「(8%への)消費税率の引き上げなどが影響している」と消費税増税が生活を直撃したことを認めつつ、10%への増税は「確実に実施する」と居直りました。
山下氏は、「日本は世界でかなり裕福」(18日の参院予算委)と答弁した首相に、現実を直視すべきだと追及。「十分な食事をとれない」などという貧困家庭の子どもたちを支える「子ども食堂」を紹介し、政治の役割を問いただしました。
首相は「相対的貧困率は長期的な傾向として、ゆるやかに上昇している」ことは認めたものの、「引き続き格差や貧困の状況に目配りする」と述べるだけでした。
具体的対策示す
さらに山下氏は、貧困の深刻な実態と、具体的な対策を次々示しました。
○大学の現役進学率は、全世帯の子どもが73%なのに、経済的理由で諦めざるをえず生活保護世帯は32%だと強調し、国立大学の運営費交付金削減に伴う学費値上げを中止し、値下げや給付制奨学金の創設で「貧困の次世代への連鎖を断ち切るべきだ」と求めました。
○若者の2人に1人が低賃金で不安定な非正規雇用のため、30代前半の男性の既婚率は正規雇用(62%)の半分もない25%だと指摘し、改悪労働者派遣法を廃止し、「正規雇用が基本のルールを確立し、少子化問題を根本的に打開すべきだ」と提起しました。
○介護報酬の大削減で事業所の倒産が急増し、「介護難民」「介護離職」で低・無収入になって親と「共倒れ」の危険に直面している事態を示し、「『介護離職ゼロ』が本気なら削減を撤回し、ただちに引き上げるべきだ」と力を込めました。
税制改正を要求
首相は、給付制奨学金は「財源の確保」を口実に「検討が必要だ」と答弁。“生涯ハケン化”を進める改悪労働者派遣法は「希望者に正社員への道を開くもの」だと正当化し、介護報酬の削減は「めりはりのある改定だ」と居直りました。
「いずれも、自然現象でも自己責任でもない。政治が生み出した問題で、解決する責任がある」と厳しく批判した山下氏。貧困と格差を広げる消費税増税の中止とともに、「アベノミクス」で大もうけした大企業・富裕層に応分負担を求める税制改正を求めました。
東日本大震災 阪神・淡路大震災
住宅と生業再建 教訓生かせ
今年は東日本大震災から5年、阪神・淡路大震災から21年。山下氏は、阪神大震災の教訓に基づく被災者の住宅保障や、原発の再稼働中止を求めました。山下氏は、阪神大震災の被災者が避難所、仮設住宅、復興公営住宅へ移転を繰り返すなかで地域コミュニティーを壊され、そこからも追い出されようとしていると指摘。「住宅再建とコミュニティーの確保、生業(なりわい)の再建なしに、生活と地域の再建はできない。この重要な教訓を東日本の復興に生かすべきだ」と述べました。
東日本の被災地でも事業再建の人手確保には住宅の保障が必要だと述べ、(1)被災者生活再建支援金の500万円への引き上げ(2)仮設住宅から移るための家賃補助―などが「復興を現実に進めることになる」と迫りました。
これに対し首相は、同支援金の引き上げは「他制度とのバランスや財政負担を勘案して慎重に検討する」と述べるにとどまりました。
再稼働は中止を
山下氏は原発問題に関しても、福島原発事故での東電による損害賠償の一方的打ち切りは「断じて許されない」と批判するとともに、原発再稼働の中止を強く求めました。
首相は「原子力規制委員会が認めた原発でない限り、再稼働はされない」などと答えました。