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・前田日明を信じ、前田日明に失望したU世代の愛憎■小説家・樋口毅宏
――いまは映像制作のお仕事をされている尾崎さんですが、かつてパンクラスで苦楽を共にした船木(誠勝)選手や鈴木(みのる)選手とは連絡は取ってるんですか?
――べつの仲が悪くなったわけじゃないんですよね?(笑)。
――凄い時代でしたよね。
尾崎 あの頃を振り返れば、鈴木は放っておいても安心できたんです。よけいなことを言わなくても任せておけばいいというか。船木のことは信用してないわけじゃないんですけど、なんて言えばいいか……。
――船木さんは研究に没頭する学者タイプですよね。そういう人間に向き合うとすると全勢力を傾けないといけなくて。
尾崎 だから大変なのかもしれませんね。でも、彼と一緒にいなかったら経験できなかったことばかりで。それは鈴木にも言えることなんですけど、パンクラス以前の(新生)UWFの頃から付き合いがありましたから。
――そもそも尾崎さんはパンクラスを始める前に何をやられていたんですか?
尾崎 もともとボクは大学生のときにアルバイトで『月刊プロレス』編集部に入ったんです。
――『週刊プロレス』の前身ですね。
尾崎 ええ。どうして『月刊プロレス』に入ったかといえば、ボクは映像制作志望だったということもあって、テレビ朝日でアルバイトADをやってたんですよ。それで『おはようテレビ朝日』の現場にいたんですが、そのときサブ司会をやっていた古舘(伊知郎)さんと親しくなって。でも、テレビ朝日のアルバイトADというのは1年契約。その契約が終わったときに古舘さんを通して紹介してもらったのが『月刊プロレス』なんです。
――というと、古舘さんとはかなり親密だったんですか。
尾崎 メチャクチャ仲は良かったです。古舘さんに「手伝ってくれ」と言われて、テレビ朝日のアナウンス部で『東スポ』のプロレス記事をスクラップにまとめてたこともありましたし。
――当時の『月刊プロレス』編集長は杉山(頴男)さんですよね?
尾崎 そうですね。次長で変な奴がいましたけど(笑)。
――ハハハハハハ! 「変な奴」というとターザン山本さんですかね。
――その関係はのちのちまで続くわけですか(笑)。
尾崎 『月刊プロレス』時代はアルバイトとはいっても、試合レポートを書いたりして、ほぼ記者としてやってましたよ。『デラックスプロレス』の編集もやっていたし、『プロレスアルバム』でハルク・ホーガンやタイガーマスクの特集もサブでやってたし。船木や鈴木がプロレスラーとして影も形もない頃からこの業界には関わってるんですよね。それでそのときに一番仲が良かったのは高田延彦。
――あ、そうだったんですか。
尾崎 高田延彦とはそこから個人的な付き合いが始まって。結局『月刊プロレス』には2年くらい在籍してたのかな。古舘さんとの約束でやめることになったんですよ。
――古舘さんの約束というと?
尾崎 古舘さんとは「俺がテレビ朝日から独立するときはおまえも一緒に来い」という約束をしてて。それで古舘プロジェクトが立ち上がったときにボクも参加して。古舘さんのマネージャーとして働くことになるんです。
――古舘さんは売れっ子でしたから相当忙しかったんじゃないですか。
尾崎 休みが1日もないくらいメチャクチャ忙しかったですよ。古舘さんがベッドに入ってから自分の家に帰って、古舘さんが起きる前に迎えに行って。
――その頃も古舘さんは『ワールドプロレスリング』の実況をやられていたんですか?
尾崎 やってましたね。地方会場で実況の仕事があるときは、会場に入る前に市役所や観光案内所に寄ってそこの土地柄を調べて、そのメモを古舘さんに渡すんです。
――そのメモが実況の前口上なんかに使われたりするんですね。
尾崎 そうそう(笑)。だから新日本の会場にはけっこう出入りしてましたよ。あれは蔵前国技館だったかなあ。「ブルーザー・ブロディが出る、出ない」で大騒ぎになって。控室にボクと古舘さんがふたりでいたら、山本小鉄さんが「大変だ。ブロディが試合をやらないかもしれない!」って慌ててやってきたことはおぼえてますね。
――ホテルの部屋に立てこもったブロディを小鉄さんが「試合に出ないから俺はここで切腹する!」と逆に脅して出場させた事件ですね。
尾崎 ボクも小鉄さんには凄くお世話になってるし、船木の引退興行のときに花束贈呈で来場してくださったのは、そういったつながりもあったんですよね。だからボクはパンクラスで急にプロモーターになったけど、もともとこの業界にはいろいろとつながりはあったんですよ。
――そこから船木さんたちはどうやって知り合うんですか?
尾崎 ボクが古舘さんの事務所をやめて、ある芸能プロダクションのマネージャーをやってるときに、高田のテーマ曲を作ることになったんです。『クロスファイヤー』っていうタイトル。
――そんなことまでやってたんですか(笑)。
尾崎 作曲はボクの義理の兄貴。パンクラスのテーマ曲も作った男なんですけど。
――あの名曲『Hybrid Conscious』を!
尾崎 あれはボクが兄貴を騙して作ってもらったんですよ。旗揚げ前でお金がなかったのに(笑)。『クロスファイヤー』のB面は高田ちゃんが歌が上手いから歌ってもらったんですけど。
――高田さんの歌い口調って完全にハウンドドッグなんですよね(笑)。
尾崎 『クロスファイヤー』のときもそんな感じでしたよ(笑)。そのときに彼の紹介で新生UWFの神(伸二)社長に会ったんです。そういった縁からボクがUWFのレーザーディスクを作ることになったりして。レーザーディスクの中でボクが選手と語り合ったりもしてるんですよ。
――では、Uの選手とは顔見知りだし、因縁の前田(日明)さんとも当時は仲が良かったんですか?(笑)。
尾崎 ……当時はね(苦笑)。
――ハハハハハハハハ!
尾崎 映像関係はレーザーディスクだけじゃなくて、UWFはTBSで2回だけ放映したでしょ。あれもボクが神さんに話を持ってたんですよ。UWFの地上波は後にも先もあの2回だけ。番組テロップにボクの名前が入ってます(笑)。
――新生UWFは前田さんと神社長らフロント陣の揉め事をきっかけに解散しますが、あのときいったい何が起きていたですか?
――渦中に!
尾崎 話せる範囲で言うと、渋谷・道玄坂で雀荘をやってる人がいて、その方はのちにリングスのフロントに入るんですけど。UWFの解散宣言が出る前にその雀荘に選手をみんな集めて「一緒にまとまってやっていこう」という話し合いがあったんです。その場にはボクもいたんですけど、なぜかいたかというと、各選手と仲の良かった数少ない男だったし、UWFをWOWOWで放映するって話を持っていったのは僕絡みだった。
――新生UWF幻のWOWOW中継は尾崎さん仕事だったんですね。
尾崎 あのときはみんながバラバラになりそうだったけど、「WOWOWから5億出るから!」という話でなんとか引き止めて。
――5億!
尾崎 5億ですよ、5億。選手全員が(第三次UWFを)やるんだったら。あの話し合いには藤原(喜明)さんと中野(龍夫)選手はいなかったのかな。そういえば、その話し合いの前に前田氏に呼ばれるんですよ。「尾崎さん、フロントとして入ってくれ」っていうことで。
――はー! いまとなってはなんだか面白い(笑)。
尾崎 そのときは断ったんですけどね。そんな気はまったくなかったから「選手の相談には乗るけど、あくまでボクは映像や出版関係の仕事がやりたいだけだから」と。
――そこまで尾崎さんがUWFに関わっていて選手と仲が良かったとなると、のちに前田さんがいろいろと疑心暗鬼になるのはわかりますね。
尾崎 UWFや前田氏にはずいぶんと力を貸したつもりだったんですけどね(苦笑)。
――しかし、そんな雀荘会談があったのに、前田邸の選手ミーティングで「解散宣言」が飛び出したのは驚いたんじゃないですか?
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