レコーディング太りという言葉がある。最近はもう使う者もほとんどいないが、すげえ簡単に言うとハッピーターンとカントリーマアムによって肥満することだが、最近は「おもたせ」カルチャーもひと段落、誰もがお勧めの菓子屋だパン屋だ弁当屋だと言って、不味い物が根絶した、この星でも有数のディストピア、トーキョーシティーで、旨い物だけを貪り、世界最高のフォアグラの様になっている状況、やはりレコーディングスタジオには、コーヒーとコケインだけしか無いという、70年代のニューヨークに戻しましょうよコッチ市長。でないと私は、次回明らかになるが「薄毛で小太りで刺青が入っている地方のダメなヤクザ」という、何かちょっと憧れないでもない姿で「ブルータス」誌に載ることになるのである。
もう情報が出ているからガンガン書くが、「素敵なダイナマイトスキャンダル」で荒木経惟先生をモデルにした「あらきさん」を演ずるにあたり、最も留意したのは体型である。役作りに体型の変化が含まれる事が名優の条件(デニーロ・メソッド。デニーロだから、「メソルド」とした方が良いかもしれない)と聞いたので、「80年代の荒木先生のような体型」にすべく、ガツンガツンにダイエットしたり、逆に腹をポッコリ出したりしない様、かつ、背中にはうっすら肉がついているという、非常に難しい体型作りに腐心した結果、大成功したのには我ながら驚いたが、現在、初代市川愛乃助氏のソロアルバム作りに腐心している私は、市川氏が典型的な「おもたせ&おもてなし」派の、しかも「肥り易い食い物だけが好き」という属性に飲み込まれ、前述の映画の倍ぐらいにまで肥満している。
市川氏の、あとちょっと身長が高ければショーモデル行けるでしょうという程のスタイルの良さは、アメリカ留学経験者にありがちな、だらしない肥満のセッティングの直中におり、氏は日常的に、マラソン、ホットヨガ、八双飛び、荒事、宙吊り、などの激しい(マゾヒスティックとも言って良い)肉体鍛錬によってキープされているのだが、私は現在、ダイエットの時間が割ける状態になく、薄毛で小太りでチビで刺青が入っているダメな地方のヤクザから、レコーディング前の自分に戻すべく、今日から先ず糖質を抜く。それはまるで棘を抜く様に。何の為に?再び役作りである。撮影は3月だ。