赤工(アカク)くんと最初に仕事をしたのは、1枚目のソロアルバム「デギュスタシオン・ア・ジャズ」の時で、現在は裏原サウスと呼ばれるエリアにある「スタジオsyn」が麻生十番の有名な温泉近くにあった頃だ。僕は作ろうとするものが余りにオルタナティヴなので、いわゆる説明能力が低く(というか、事前説明は諦めていて、しない)、やらされてる方(演奏も、録音も、ミックスや編集も)が、「何をやらされているかわからない」ことが、活動全体にずっと蔓延していて、やっと還暦になって軽減してきた感じだ。
なんだってそうだが、1枚目に全てがある。今年発売22年目になる(当時、ギリで長沼とも仕事はしていなかった頃だ)「デギュスタシオン・ア・ジャズ」のエグさは、一種の永遠性があると思う。いつ聴いてもすごくエグい。何せ、多くの楽曲で、メンバーは顔も合わせていないのは言うまでもなく、合奏者の演奏を聴いていないのである。楽譜もコード進行表も、ほとんど書かれていない。そして何より、打ち合わせがなかった。ゼログラヴィティ音楽、クールジャズとして、構造的極限を使用している。
この間も書いたが、僕はMIDIと全く合わず、実質、直接手を触れたことは一度もない。ところが、プロトゥールすが出来て、音声トラックを直接(まるでアナログテープのように)編集できることを知ってから、プロトゥールスなしでは作品が作れなくなった。
レコーディング経験で言えば、だが、未だにこの時の楽しさと高揚感を超える現場はない。僕は、初めて僕の現場に着任する赤工くんが、何を作らされているか全くわからないままどんどん音声の波形を切ったり貼ったりさせられ、だんだんと作品が出来上がってくる過程を見ていることさえ、全く意識になかった。フライトしていたのである。
有名な「コルコヴァード」が収録されている。僕は「デギュスタシオン・ア・ジャズ」の収録曲はみんな好きだが、これが一番好きなぐらい好きだ。
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菊地さんを知ったのが、UAの日比谷野音のNHKBSの放送なのですが、その年にデギュスタシオン〜が発売されていた記憶があります。
→調べると2004年4月でした!
ちょうど20周年じゃないですか!
笑!まるで「時代を超えて報道写真に写り込んでいるSF映画の登場人物」じゃないですか!!!
最近Sunoにヒップホップを作らせてるんですが、「やべー」としか言いようがないです笑
>>1
ホントですね笑。全く気が付かなかった笑。サブスク解禁したジャズ系のアルバムに解説でも書こうかなと思っています。もう、今の若いリスナーは、どうやってあれが作られているのか知らないと思いますし。
>>2
いや本当に笑、気持ち悪いのよ笑。まあ、還暦で浦島太郎の玉手箱が開いた感じなんで笑、4〜50代の20年間は、今や記録の中ですが笑。
SUNOはヤバいよ笑。耐えられないやつは耐えられないと思う。僕はむしろ推進派だけど笑。
菊地さん、こんばんは。
初めて菊地さんをテレビで見たのが、NHKのトップランナーでした(間違えていたらごめんなさい)。デギュスタシオン・ア・ジャズの紹介をされていて、興味を持ちました。
先日、携帯で聴きながら夜の歌舞伎町を歩きましたが、実にはまっていました。少しも古くならないアルバムですね。
>>5
痛風さんこんにちは。
トップランナーだったかどうかは忘れてしまっているんですが笑、あのアルバムは発売当時、地上波、紙、web、FM、AM、BS、CS、音楽大学、一般大学と、あらゆるメディアで解説した記憶があるんですが(「情熱大陸」の時に出たので)、一切伝わっていないという断固たる確信がありましたね笑。
「古びない」根拠が「謎が多く、構造的な理解がなされていない(まま、魅力はあるから)」という事だけではないとは思いますが、少なくともあのアルバムは、機材の新しさ(機材は古いですあれは)、よりも、機材の使い方のアイデア皇族がいない事により、要するに類例がないので、古びないとは思いますね。
「南米のエリザベステーラー」は、そこそこ消費されていると思い(それでも、フジロックで初めて曲聴いた、「昨日生まれた」組の方々も多数いらっしゃるので)、聴き直したら、やっぱ初演は演奏が古いな〜(そこが良いのだけれども)と思い、今回、最新メンバーで再演しました。
デギュスタシオン・ア・ジャズ、菊地さんの作品の中でも大好きなアルバムです。
上手く言語化出来ないのですが、菊地さんが手掛けた作品の中には、温度や食感、味の変化や相互作用が計算された美味しい料理を食べた時の体験を強く彷彿させる作品があって、私にとって特別に思い入れのあるものになっています。(去年の矢野沙織さんのアルバムを聞いた時も、美味しい料理を食べた時のような新鮮で幸せな気分になりました)
クインテットのアルバムがとても楽しみです。
>>7
ありがとうございます!「デギュスタシオン」というのは、<味見>という意味で、一口サイズの料理が60出てくる。ということから着想されました。この料理を出していた「エル・ブリ」という伝説のレストラン(2011年閉店)は、シェフが最新テクノロジーを駆使して(料理店で、世界で最初に、テクニカルラボを併設させました)、とんでもない発想の料理を作り続けました。シェフは僕と同い年です。
クインテットとラディカルな意志のスタイルズのアルバムは、高い確率で来年いっぱいに出ますのでお楽しみに!!