菊地成孔「料理店の寝椅子」4_4 Mariaさん
■母性とマゾヒスム
菊地 Mariaさんが女性とお付き合いされたのは、前回にお話しされた彼女だけですか。
Maria だいたいその一人だけですねー。
菊地 男性の場合はどういうタイプが多いですか?
Maria 自分でもびっくりするくらい、A型の、一人っ子か末っ子ばっかなんですよお。そのせいか、私が母親役になっちゃうんですよねえ。A型って几帳面じゃないですかあ。それに合わせて私も気を遣っちゃって、その状態がどんどん当たり前になってきて、気づいたら負担に感じてる自分がいるっていう。大変なんだけど、どこまで自分が相手に投資できるかで恋愛を決めてましたね。
菊地 けっこうジャパニーズな恋愛観ですね。尽くす系じゃないですか。
Maria マインドコントロールみたいですけどね。ちょっとでも相手の意に添わないと「そうじゃないでしょ」って言われそうな気がしちゃって、コップを置くことさえ不安になってくるんですよ。
菊地 母親役が嵩じて娘役になっちゃう的な、労働力2倍の恋愛のように思えますけど。まあ、普通か、労働力2倍は。
Maria 24歳くらいかな、だいぶ自分の人格もできてきて、男の人に左右されるのはよくないって思いはじめました。自分本来の姿っていうか、ラップしてる私のことも尊敬したり愛してくれなきゃ本当の愛じゃないなって。だから今は、ちゃんとギブ・アンド・テイクになってないと尽くせないですね。
菊地 Mariaさんは恋愛関係以外に染み出して行く母性がありますよね。OMSBとパリに行ったとき、どこか行きたい場所はないかと尋ねたら、レコード屋って言うんですよ。パリまで行ってレコード屋なのかって驚いたんですけど、名所とか何も知らないからって。そんでサン=ジェルマン=デ=プレ教会に行ったんだけど、当然、そこにはマリア像があるわけです。OMSBは教会が初めてだったらしく、マリア像を何枚も撮りはじめましてね。「これをMariaに送るんだ」って。
Maria かわいい(笑)。