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<ビュロ菊だより>No.68「最高な音楽ドキュメント2本必見+」
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<ビュロ菊だより>No.68「最高な音楽ドキュメント2本必見+」

2015-05-13 09:00
      いやあとにかく、「セッション」についてはですな、読み易い汎用を書きますんで、それで勘弁してつかあさい。もう、とっくにお忘れかと思いますが、「ユングのサウンドトラック2」を出すわけ。そもそもその準備稿をブログにでも上げとくか。というのが始まりですからな。あdCprG3年ぶりの新譜「フランツカフカの南アメリカ」絶賛発売中です。
     

     と、申しますのも、もうとっくに消えているのにヤフーニュースっつうのは一体どこまで偉いんだ(笑)と思はざるをえない訳で、ネチズンの皆様に於かれましては、「セッション」についての、ネテイト(NETATE→NETSTATEの合成語)で起こっている事のタレコミはお願いですからもう止めて下さい。「中原昌也氏も貶してましたね!!」は、既に50件ぐらい同じご報告を受けておりますので、もう結構です(笑)。
     

     とはいえ、単なるネットの荒れ場を、2次元では起こらない「火事」という物理現象に見立てて「炎上」と呼ぶのは、「火事と喧嘩は江戸の華」という伝承を鑑みるに(まあ、ここでの「喧嘩」は、英語のバトルではなく、江戸時代の消火活動が、現代の様な放水や放薬による鎮火ではなく、火の進路の町家を打ち壊して延焼を防ぐ「破壊消防」であって、鳶職が纏を振って、火の進路と打ち壊すべき町家を示し、そこに他の鳶が群がって、破壊活動に出る、その「上や下やの大暴れ」を、そもそも指しているので、拡大解釈ですけどね)ネットながらなかなか粋な計らいだなと感心しますが。
     

     しかし、んなもん、今の日本では数少ない正気の賢人である中原昌也氏ならずとも、ちゃんと物が分かるリアリストが見れば、あんな映画、ヤバくも壮絶でも、<一瞬たりとも気の抜けないどんでん返し(どこの事?ぜんぜんわかんなかった。ダラダラ恨み合って、その場のノリで仕返ししてるだけだよアレは)>でも何でもない、挫折と恨みと恐怖ばっかりのいまどきのガキに丁度いい安モンだっちゅうことは明らかな訳で、例えばこういうのは面白いというか有り難いというか、最近「日本国憲法」をフリーDLで発表して話題になっているShing02氏から、「セッション」のパロディ動画のURLを送って頂きまして(因に、氏とは、具体的にはさほどの面識はありません)  
     

     氏曰く、アメリカでは「コメディ扱いに落ち着いた」との事で、それならばそれが一番良いです(ワタシの最初の批判をご参照のほど。あの映画の「嫌な新しさ」は、「やり過ぎ」が「笑い」に進まない点である。と規定しています。笑われるなら大ハッピーですよね。ほとんど面白くはありませんが)。
     

     とまあ、他にも、とにかく全員「名前は出さないでくれ」というので出しませんが(ワタシと一緒にされたくないのだと思いますけど・笑)、外人、日本人、海外在住日本人の差なく、今回、知己ある人だけではなく、ヤフーニュースのお陰で、いままでまったく知己の無かったジャズミュージシャンの方々までから、多くのメールが届きまして(笑)、改めてすげえなネットって、と感服していますが、ジャズミュージシャンはほぼ一律「ストレイトに(すげえ)怒ってしまっている」訳なんです。
     

     無理よやっぱ。辛うじて公式コメント出してる綾戸さんが「吐きそうな映画や」、ヒロ川島さんが「人によっては、これは違うなと思うに違いない」って、あんな短文コメントにエクスキューズ付けないと書けないんだから。
     

    ちょっと前に書きましたが、ワタシが一番フラットなのよこれでも。「西部劇の善し悪しが分かってしまうインディアン」ですよ。まあ、とにかく書きますね。これは「セッション」論に留まらない「楽しい娯楽が侮蔑表現をしてしまうとき」に関する論考になります。
     

     ただ、今回、薄々そうじゃないかなあと思っていたのが、骨身に沁みてはっきり分ったのは、ネチズン諸氏が「全部読まないで判子を捺してしまう」事に余りに無防備なことです。
     

     こんなもん余計なお世話もゲスの極み乙女ですが、それって<詐欺に遭い易い>という意味に他ならないと思うんです。「ちょっとおっちょこちょい」「せっかち」ぐらいは関東人の癖ですし、可愛い物ですが、重要な判断、責任が生ずる(まあ、ネットなんて、責任生じないからね・笑・無責任感と使命感のコンバイン定着装置ですよ。要するにクラックだ)発言に関して、読まずにサイン、読まずに判子は止めた方が良いですよね。
     

     このワタシだって、隅から隅まで読んだんだから!SONYとの契約書は!!(笑)だって、まず戦争おっぱじまる時に止められないですよ。「ぱっと見で持っちゃった先入観」なんかよりずっとタチ悪いですよ「斜め読みで判断」は。
     

     単に「情報が入り切れてない」だけじゃなくて「長くて読み切れない自分

    に苛立っている(バカにされた様な気がして)」という、感情的なバイアスがかかるのはマズいのよ。悪い奴は、それを利用するからね。
     

     と、まあそれはそれとして、ですな、既にお馴染みの名保安官「Mr.<オイラ、この小さい映画を守りたかったんだよ!>マッチャマン」氏の大活躍によって、ワタシの全文が読まれないままに 


     
    「菊地成孔のようなジャズミュージシャンが批判するというのは、気持ちは分るが、それは映画の評価とは別次元であろう」
     

     的な、いかなネチズンの野次馬ワイドとはいえ、片腹が痛過ぎて、大好きな笑いも止まろうという、バンジージャンプの谷底ほど低次元な落としどころに落ち着きかけているらしい、という、今世紀最大の悲報も受けており、まあ、誤解やバカを根絶する。という事など原理的に不可能であって(この夢が肥大して止まらなく成ったのがファシズムですよね)、「もういいじゃん、言うだけの事は言ったよ。それよりライブの準備しなよ」とか言われるんですが(笑)、「西部劇の善し悪しが分ってしまうインディアン」というタイトルが気に入ってしまってですね(笑)、要するに単に書きたく成ってるんですね(笑)。
     

     ですんで、まとめ(?で、いいのかしら)をなさっている方は、そこまでカヴァーして頂けると有り難いです(「もう既に<まとめ>自体が長過ぎて、誰も全部読んでないよ。だから、、、、ぷぷぷ、、、まとまってないの!!!けけけけけけ!!」と、長身の悪友に言われましたが、これはガチで、テクニカルタームが分らず、つまり、自分が意味を完全に理解出来ているとは思えませんが、奴の嬉しそうな笑顔から察するに、ワタシにとって良くない事である事は間違いありません)。

       

         *    *    *    *    *

       

     
    とまあ、劇映画である「セッション」とは質が異なりますので、同じ文面に並べてご紹介するのは、ある意味「セッション」に対してさえも無礼ではあるのですが、もしワタシに、まちゃまちゃ坊の言う通り、「影響力」や「宣伝効果」がある、とするならばですが(さほど無い。と思いますけどね・笑)、音楽、特に有色人種の音楽を愛する方(「セッション」は白人価値観――主人公2人が実際に白人だから。というだけでなく、大学教科だし、意味合いの問題ですーーーで、即ちジャズの態だけどもロックみたいなモンなのよ。だからロックドラマーが褒めるわけ)には必見です。ワタシの首を賭けてルコマンデ致しますので、必ず観て下さい。音楽の力に打たれて、笑い、泣いて、絶対に感動します。保証します。
     

     ワタシの「ボツになった<セッションプレスリリース>」にあった通り、「音楽映画」の発達は、ここ数年、すごく目覚ましいんですね(その部分だけ読み返して頂けると有り難いです)、そんな流れの中、我が日本からもこうした、掛け値無しに素晴らしい音楽ドキュメンタリーが制作された事は、普通に文化的に誇るべき事だと思います。
     

    <ジャパンクールしか輸出品が無い>のではないぞ(ジャパンクールが悪い訳じゃないけど)。という、当然打たれるべきカウンターパンチで、しかも素晴らしく美しく、ユーモラスで愛が溢れかえっています。
     

     1本は、何とオムス(と、bimくん)主演で、ジャパニーズ・アンダーグラウンド・ヒップホップのヘッズは黙っててもみんな行くと思うんで、むしろヒップホップなんか、、、、という方にお勧めします。  
     

    THE COCKPIT(ザ・コックピット)」

     

     公式サイト見れば、内容から情報から全部見れますので、個人的なレコメンドのポイントを書きますが、監督の三宅さんは、ドキュメンタリストとしても(この作品はフランスのドキュメンタリー映画祭「シネマ・ドゥ・リール」の新人コンペに参加しています)、ヒップホップラヴァーとしても、人間としても、とても暖かく、かつ動体視力にすぐれ、「写すべき対象を、どういう角度で、どれだけ写せば良いか」という基本的な才能がズバ抜けています。
     

     お馴染みオムスがビートメイクして、THE OTOGIBANASHI’S

     
     BIMくんと2MCで1曲完成させる。その、着手(アパートの一室に入って来るところ)から、完成させるまで、を、一部始終追ってるんですが、まあもう、創造する悦び、生きる悦び、楽しむ悦び、あらゆる「良いヴァイブス」に溢れかえっていて、とはいえ単なるハッピーフィールではなく、2人の天才性が(因に、一瞬、我らが翔くんことHi-specも登場します)、唸るほど見事に写し取られておりまして、「才能がある奴がものを作って行く過程」を見る快感と興奮が1秒も途切れません。
      

     この「明るくて、楽しそうで、物凄い才能」「そいつらが、友達としてつるんでいる」というのが、現代日本の経絡に鍼灸の鍼を刺します。脳も心も身体もあったまる。実のところ、意外と数は一杯ある「ヒップホップのドキュメント」の中でも、屈指の作品だと思いますね。
      

     試写に行ったんですけど、「フランスの記録映画祭に出品された」なんつって、ヒップホップのヒの字も無い、おフランスの、蓮實虫ちゃんみたいな、おっっさんがいっぱい来てたんですけど、いつもは気難しがってる連中も思わず微笑みとともに大拍手。でした。 

      

    さてもう一本は
      

    「Cu-bop」
      

     で、こっちはちょっと、あとから説明する事情により、ウエブ上とっちらかってるんで(笑)、ワタシがリードしますね。
      

     まずコレ見て下さい。予告編(1)です
      

     ハイ。音楽が好きな方なら、写っている全員がもうぜんぜん、1人残らずネクストレヴェルである事に慄然とすると思いますが、コレはこういう映です。


       と、これでまあ充分わかるんですけど、いろんなリテラシー無いと分りずらいでしょうし、なにせ長文だ(笑)。


       あと、監督の、高橋さんって言う方が、この方カメラマンでもあり、キューバ音楽のレーベルやってたりするんですけど、才能と情熱がある人にありがちな話しなんだけど、あまりにも不器用で、狂った様に商才が無い訳(笑)。


       なんで、もの凄いもの作ってるんだけど、伝わりずらいわけ(笑)。特に日本人に(笑)。説明能力のホスピタリティーが、びっくりするほど低いのよね(笑)。


       なんで、ワタシなりに、素人さん向けに短くまとめますね。


       キューバという国は、そもそも今、ちょっと話題ですよね?アメリカと国交戻すんだ。仲人さんとして、どういう訳だが、いきなしバチカンが出て来た。っていうね。


       キューバとアメリカの関係は、さすがにわかりますよね?カストロとゲバラとね、彼等が社会主義革命起こしたんですよね。


       地図で見たら分りますけど、キューバってもう、アメリカ東海岸の、目と鼻の先よね。


       つまり、沖縄がある日革命起こして、社会主義国になり、ソヴェートや北朝鮮と同盟を結んだ。という感覚ですよ。そりゃあ被害妄想のアメリカならずとも怖がるよ。そこで、いもずる式にドミノセオリー、キューバ危機、ケネディ暗殺。ですよね。


       んで、革命前までは、大変なリゾート島だったキューバは、アメリカに八方塞がれてガラパゴス化する訳。その象徴が、有名な「走ってる車が50年代のヴィンテージカーばっか」「50年代のダンスホールやキャバレーの廃墟がいっぱい」ですよね。


       そんなキューバの、古いダンスホール、ダンスミュージックを、メチャクチャにスタイリッシュに写し取ったのが、かの「ブエナビスタソシアルクラブ」ですよ。ライ・クーダーとベンダース、キャメラがロビーミューラーね。   これはもう映画史に残る名作なんですが、やっぱ強い映画には功罪ありまして、この映画以降、キューバ音楽っていうのは、ジャメイカにおけるレゲエみたいに、アレだけだと思われちゃっていた訳ね。外野さんに。


       ところが、キューバ音楽って言うのは、何せニューヨークのジャズが一番ヤバかった50年代に大きく交流してるし、社会主義だから音楽教育が凄いし、国主催のコンペで優勝したりすると、家立っちゃったりするし、そもそも伝統的に音楽家の需要が多い国だったんで、一家でコンガ奏者とか、一家でシェケレ奏者とかいる訳です。


       こうした「アフロ~キューバ」的な伝統と、「革命前後の、アメリカのジャズとの関わり」という状況のミクスチュアによって、キューバは「音楽のスキル大国/超絶技巧の国」という側面もある訳なんですよ。


       ただ、選択肢が2つになっちゃう、亡命してニューヨーカーになるか、キューバに留まるか。


       ヨスヴァニー、オラシオ、リッチーなんかは亡命キューバ人よね、ワタシの友達ですよ。そして、そいつらをアイルランド系のインテリがまとめて、合衆国内で、全く新しい混血音楽を作ろうとしたのね、それがアメリカンクラーベで、首謀者がキップ・ハンラハンよね。ワタシの年長の悪友ですよ。さっきもメール来たばっかりよ。「ファウンド集めたいから、日本で宣伝してくれ」って(笑)。ふざけんなよ(笑)。


       んでまあ、キップとワタシを繋いだのが高見一樹氏(今やdCprGの作曲家。そのうち、ワタシのバンドの全部の作曲をすると思います・笑)なんですが、まあそこはおいとくとして、この作品は、   「亡命キューバ人の天才ピアニスト(若者。因に、ですが「暗く成るまで待って」のオリジナルを歌ってるシオマラの倅ですコイツ)」  と「キューバ留まり組の天才サックス奏者」   という、日本なんか言うまでもなく、世界的にほぼ無名な、超越的な2人の天才を、キューバ国内で共演させようとするの。


       日本人が。 


     
     こう書くと、その共演コンサートが映画のトピックにでも聞こえそうですが&実際にまあ、そういっちゃそうなんだけど、「もう、そんな事、どうでもいい」ほどに、出て来る人が全員凄すぎる訳。


       双方のバンドのメンバー言うまでもなく、キューバでパーティーやってる素人さんのパーカッションアンサンブル(まあ、アフリカで言うドゥンドゥンバみたいなものですが)の演奏とか、もう、気が狂うほどやバいわけ。


       ただのテクニックじゃないんですよ。ダメなジャズとか、ダメなクラシックみたいな。「早くて偉いだろう」的なんじゃないの。全身が音楽とひとつに成ってる人たち。楽器と繋がると、肉体も精神も、音楽そのものと同化してしまう、とんでもないリズムとハーモニーとメロディを血肉化させきっている、恐るべき人々な訳。


       因にこれ監督のブログですけど   ちょっと、分りずらいでしょう(笑)。「予告編(2)」が入ってて、特に説明ないから、(1)見た人に飛ばされちゃうでしょコレ(笑)。


       でも、本当に、これは素晴らしい映画で、マーケットを中南米マニアに限定する必要まったくないの。K-POPダンス習ってるお姉ちゃんとか、部屋でビート作ってる子とかね、総ての音楽ファンが見るべきだと思います。   で、まあ、こういう事になってますね(笑)。


       なんかワタシが、ものすげー怖い人みたいに成ってますけど(笑)。そんなの物書きになってから12年ぐらいのうち、ミュージックマガジンとセッションだけですよ(笑)勘弁して下さいホントに(笑)。


       あと、もう、全文載せた方が良いと思う(笑・日本公開用にとっといてあるんだろうけど)。


       まあ、それは兎も角、ワタシいま、ほぼ毎日見てますこれのDVD。皆さんも、日本公開に合わせて、両作とも是非ご覧になって下さい。「バードマン」「はじまりのうた」も合わせて、これら4本見て「なんだこの音楽。つまんねー。くっだらねー」と、心から思った方がいたらメールください。料金をワタシが代替わりした後、貴様を射殺します(笑・水鉄砲ですけどね)。


       音楽家、特に我々も含めた有色人種のそれというのは、ともすれば、気を許すとすぐにふさぎ込んだり死にたく成ったり、殺したく成ったりする、人間という弱い存在を、「ああ、生きてて良かった」「生きるというのは、こんなにも凄い事なのだ」と再確認させるエロ仕事なんですよ。興奮させて、いろんな液体を分泌させて、身体を揺すらせる、大変なエロ仕事なわけです。


       はっきりとした人種差別で申し訳ないんだけど、白人共は、そういう風じゃない遺伝子ももってますよ。「聴いた奴を破滅願望に誘ってやれ」「聴いた奴をニヒリストにしてやれ」そんなファックな音楽もある訳。まあ、敵がいるというのは豊かな事ですし、悪の存在が無ければ善は姿も見えない。ただ、そんなホワイトトラッシュは、今年公開されるこの4本でノックアウトですよ。一発当てて失神させるんじゃない。最終ラウンドまで追いつめた末のテクニカルノックアウトです。         


              <さて、有料世界にお住まいの皆様>  
     
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