虚構推理(3) (講談社コミックス月刊マガジン)

 城平京&片瀬茶柴『虚構推理』の最新刊を読みました。

 「恋愛×伝奇×推理」という謳い文句の通り、ちょっと類例がないであろうジャンルの一作です。

 主人公はあたりまえの「人間」の枠から半歩飛び出てしまったふたり、妖怪たちからすら怖れられる不老不死の化け物となった青年と、妖怪たちに相談役として知恵を貸している少女。

 ひとにしてひとに非ざる存在ともいうべきかれらは、妖怪たちを震え上がらせる「想像力の怪物」鋼人七瀬に立ち向かいます。

 想像力の怪物とは、伝説や噂話が無数の人にほんとうだと信じられることによって実在するまでに至ってしまった存在。

 妖怪に似て妖怪をはるかにしのぐ力を持つ本物のモンスターです。

 人々の想像力によって成り立っているため、首を切り落とされてもなお死ぬことがないこの怪物をどうやって倒せばいいのか? 青年と少女、そして青年の元恋人は策を練ります。

 こう書くといかにも王道の伝奇もののようですが、タイトルからわかる通り、この作品は実はミステリでもあります。

 まあ、最近は超常現象とミステリを掛け合わせた作品も少なくなくなりましたが、それにしてもこの作品の独創性は飛び抜けている。

 さまざまな妖怪変化が出て来る舞台背景もさることながら、なんといっても「虚構推理」というアイディアが素晴らしい。

 原作小説が第12回本格ミステリ大賞受賞を受賞していることも納得できます。

 虚構推理とは何か? その内容はこの第3巻においてようやく語られます。

 ひとの想像力から生まれ、噂話が信じられる限り不死身の「想像力の怪物」鋼人七瀬を倒すため、少女が考えた策略、それが「いま流れている噂よりも合理的ででしかもより魅力的な話を流すこと」。

 その新しい話が広く信じられるようになれば、必然的に鋼人七瀬は力を失い、消え去ってしまうことだろう、というのです。

 もちろん、それは事実である必要はない。まったくの嘘八百であってかまわない。

 というか、実はこの作品の場合、真実はあっさりあきらかになってしまうのです。

 なんと推理を繰り広げるまでもなく超常的な能力を使ってあっさり「ほんとうに起きたこと」は解き明かされてしまう。

 しかし、それでは話が面白くない、ひとの噂として広がらない、というわけで人々を納得させるだけの合理性と、古い噂にとって代わるだけの魅力を兼ね備えた新説を作り出さなければならないというだけのこと。

 この難題を成し遂げるため、三人は巧みに論理を組み上げようと試みる。真実などひとかけらもない、架空のロジック、まさに「虚構の推理」を。

 はたして三人が組み上げる推理は鋼人七瀬をみごと打ち破ることができるのか――? 

 まあ、そこは