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『ファイブスター物語』初の公式ファンブック『トレーサー』の第1巻が発売されました。7年間に及んだ映画『ゴティックメード 花の詩女』の制作がようやく終わり、連載再開の時が近づいていることを感じさせます。
いやあ、しかし、アニメを作るからって何年間も連載をほっぽり出すとは、ありえない作家ですね。それで読者もちゃんと待っているんだから凄いというか。日本一訓練されたファンなんじゃないかしら。1、2年待たされたくらいで騒ぎ出す『HUNTER×HUNTER』のファンはまだまだだと思いますね。
この『トレーサー』ではいくつか新デザインが公開され、また新情報が発表されています。跳びあがるような驚愕の情報はないものの、あいかわらず「わっかんねー!」の嵐。そもそも既に知っているはずの登場人物たちがことごとく新しい名前で出てくるあたり、ちょっとそれどうなんだと思わずにはいられません。
たとえばカレンの本名は「アマテラス・メル・フォーチュン・エイダス・フィフス」だとか、カイエンは「剣聖カイエン・カステポー」でダグラス・カイエンは通称だとか、あとから考えたに違いないとしか思えない設定がバンバン出てくるあたり、やはり普通の作品じゃありません。ひとりの人物が複数の名前を持っていることについていけないようでは読者の資格がないんですね。どういう漫画だよ、まったく。
で、この本、いろいろな業界のファンのインタビューを集めてあるのですが、そのなかにTYPE-MOONの奈須きのこと武内崇がいます。かれらはF.S.S.からの影響を率直に語ります。
武内 僕らの世代でF.S.S.に影響を受けていないクリエイターはいないんじゃないかって思いますけどね。奈須 むしろF.S.S.に影響を受けた人間しか生き残れてない。中学生のころF.S.S.の1、2巻を読んで、それで何のインスピレーションも受けない人は生き残れませんよ。すごい暴論を言ってしまいましたけど(笑)。
だよねー。死徒二十七祖とか、ああいう本編に直接関係しない設定を練りあげてしまうあたりは完全にF.S.S.の影響ですよね。デザインと設定と物語が相互に影響しあいながらひとつの「世界」を創りだしていくあたりにF.S.S.の凄みがあるわけで、奈須きのこ作品にはそこらへんの影響が露骨かな、と。
ただ、F.S.S.はあちこちからいろいろな文脈を持ってきている作品だから、ひとつの文脈では語り切れないところがあって、そのために「異端」の作品と化している事実はある。「人気コミックベスト100」とか、そういう企画では名前が挙がらないもの。みんな読んでいるのに。
まあ、とにかく奈須きのこがいうように、天寿を全うして物語を描き続けてくれたらぼくは満足です。早く連載が再開するといいな!
『ゴティックメード』にも一応期待しているけれど、ダメだったらダメでそれはいいんじゃない?とも思っている。「できるとわかっていること」を粛々と遂行するだけの人生には挑戦もなければ冒険もない。「できないかもしれないこと」だからこそチャレンジする価値がある。そうじゃないですか?
天才が天才たる所以は挑戦者たるところにある。いまある自分の最高作を捨て去り! 新たな峰を登ってゆく姿にこそ、単なる才能以上の真の独創性はある。ぼくはそう信じているのです。
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