鈴木みそ『限界集落温泉』全4巻、いっきに読み終えました。いやー、おもしろかった。ちなみにAmazonで電子書籍版を購入したので、4冊で1300円。個人的には十分もとが取れる価格でした。

 やっぱり第1巻が100円だと買ってみる気にもなるし、それがおもしろければ続刊も合わせて買っちゃいますよね。初巻を安くするのは作家にとっては冒険なのでしょうが……。

 さて、このタイトルからはわからないでしょうが、この漫画は「オタクによる地方興し」のお話です。ある寂れた温泉にひとりの敏腕な企画屋とネットアイドルが流されてきて、というところから始まる温泉宿再興の物語は、荒唐無稽でありながらどこかリアルで、「いまの時代、ひょっとしたらこういうこともありえるかも」と思わせる出来となっています。

 この作品が電子書籍で刊行されたことによって作者の懐には相当額のお金が入った模様で、やはり電子書籍はうまくやれば可能性があるんだなあ、とあらためて思わされます。

 読者が安く変えて、作者には多額の印税が入る。それが電子書籍ドリームの最高の形であるわけですが、この作品はそれをある程度達成してしまっているように思えます。

 レスター伯も書いているように(http://earlofleicester.hatenablog.com/entry/2013/02/22/235525)、作中には「エンターテインメントでお金を得るのはもう無理」という言葉が出てくるにもかかわらず、作者が作品をネットを通じて金銭的利益に繋げてしまっているという事実がちょっと愉快ですね。

 そう、この作品全体において「エンターテインメントのマネタイズ」がひとつのテーマになっています。主人公が手を変え品を変えオタクたちからお金を絞り上げようとする企画屋であることもあり、「エンターテインメントがお金にならなくなった時代において、いかにしてオタクの楽園を築きあげるか?」という問題が一貫して作中には存在しています。