「なぜ人を殺してはいけないのか?」という問いは、社会的なレベルとより本質的なレベルで答えが異なる。

 社会的なレベルでは「社会がそう決めたから」だし、本質のレベルでは「べつに殺してはいけないとは決まっていない」。社会のルールと世界の本質を分けて考えることはこの手の思考実験の基本かな。

 「なぜ人を殺してはいけないのか?」といっても、現に殺した人はいるし、それで特に捕まることもなく最後まで幸せに生き抜いた人だって枚挙にいとまがないよね。世界はべつに殺人を禁じてはいない。あたりまえだ。

 でも、社会は社会そのものの維持のため殺人や窃盗などの自由を禁じる。それだけのことではある。

 ただ、人間が設定した社会的なルールと世界の本質(ぼくは「グランド・ルール」と呼んだりする)を混同するとわけがわからなくなる。

 人間が設定したルールはあくまでそのルールに同意する人間に対してしか効果がないので、絶対