母の見立てと思しきフリフリ袖ブラウスを着た少年期から変わらぬ、知的で怜悧な目元。貴族ならではの気品、研究者特有の変態性、ほとばしるナルシシズム、人を人とも思わぬ居丈高な態度。不機嫌な鬼畜ドS男子に虫ケラを見るような目で蔑まれたいドM女にとってはたまらない魅力をもつ、『ファイブスター物語』における最重要人物の一人にして正真正銘のマッドサイエンティストである。
弱いなら弱いままで。
いやー、よくわかっていらっしゃる。この項目、だれが書いているんだろ。ドクター・バランシェといえば、『ファイブスター物語』史上最高最大の天才科学者。今後、たとえ超帝國の超絶科学者たちが登場して来ようと、かれの偉業が霞むことはないでしょう。
何しろ人類の常識を超えた研究の末、ラキシスという正真正銘の神さまを生み出してしまったのだから恐ろしい。作中に出てくる最高クラスの騎士たちのパートナーはほとんどがかれが作ったファティマです。
モラルを無視した研究を続ける狂気の天才というと、最近では『プラネテス』のウェルナー・ロックスミスあたりが思い浮かぶところ。ただ、ロックスミスの場合、その野心は数百人もの人命を犠牲にしようと人類全体の公益にはかなっていたわけだけれど、バランシェのほうはへたすると人類を滅亡させかねない類の研究であったわけで、マッドサイエンティストとしての格はバランシェのほうが上かと。
もちろんじっさいにはこんな研究者はいない(と思う)けれど、「科学」という、それ自体巨大な影響力を持ちながら、一般人にはわけがわからなかったりするものに対する憧れと恐怖心がこういうキャラクターに体現されているのでしょう。フランケンシュタイン博士の系譜ですね。
ダグラス・カイエンなどは自分の父親ともいえるこの人物に対し非常に屈折した感情を抱いていたようです。こういう、一般道徳とか社会倫理の常識からは絶対に出てこないキャラクターたちが平然と主役張っているあたりが『ファイブスター物語』の魅力であります。
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