ファイブスター物語 リブート (7) THE MAJESTIC STAND1 (100%コミックス)

 12月3日現在、このブログの検索ワードでトップなのは「ファイブスター物語 再開」である。多くの読者が7年間にわたって沈黙を守りつづけている永野護『ファイブスター物語』の再開を待ち望んでいる。

 その『ファイブスター物語』の花といえば、これはなんといってもファティマと呼ばれる少女たちだ。少女。その形容はほんとうは彼女たちにはふさわしくない。可憐な少女の姿をしたファティマたちの正体は、超々高性能人形コンピューターにして戦闘兵器だからである。

 どこまでもあえかに美しいその容姿は、彼女たちの正体を隠す偽装であるに過ぎない。いや、あるいはその姿こそがファティマの本質であるのかもしれないが、ダムゲートコントロールと呼ばれる精神操作を課され、ひとを殺すことを宿命づけられた彼女たちに本来の自分たちを貫く権利は与えられていないのだ。

 ファティマ。いったい彼女たちは何者なのだろう。ぼくたちはたとえば『ペルソナ3』のアイギスを知っている。ひとならぬロボット美少女の彼女はどこかファティマに一脈通じるものを持っているかもしれない。

 あるいは、改造され洗脳されてひとを殺すことを命じられる『Gunslinger girl』の少女兵士たちにしても、ファティマと似通ったところがないとはいえない。しかし、ファティマはこういったオタク文脈の美少女キャラクターたちとはどこか決定的に違っている。

 妖精とか人形といういい方もされる彼女たちは、その実、ただ単に「可愛い」で済ませられるキャラクターでは絶対にないからだ。むしろ、永野護のキャラクター全体に、いま流行している「可愛い」キャラクターたちとは違うところが何かある、といってもいい。

 それをひと言ではいえない。永野キャラはほかの漫画家やイラストレーター、デザイナーが生み出すキャラクターとはわずかに、しかし絶対的に違っているのだ。それはなんだろう? あえて言葉にするなら「グロテスクなまでの美しさ」とでもいえばいいのか。

 ファティマの特徴は、その痩身である。顔が小さく、ほっそりと痩せたスタイルは、たしかに昨今のキャラクターデザインの主流ではあるが、ファティマにおいてはそれがあまりにも過剰だ。だから、ファティマからはどうしようもなく病的な印象を受ける。

 ひと目見てわかってしまうのだ。人間の体型はこうではない、決して人間がこんなスタイルではありえない、ということが。もしファティマのようなスタイルの人間がいるとしたら、拒食症で死亡寸前の少女くらいのものであろう。いや、骨格そのものが普通の人間とは異なっているから、そういう子ですらファティマのようには見えないに違いない。