Something Orangeの「ライトノベルじゃないライトノベル32作」という記事で紹介されていた本がどれも面白そうなものばかりだったのですが、全部チェックし終わる前に記事が見れなくなってしまいました。
あの記事をブロマガのほうで再掲してもらえるとありがたいです。
それでは、再録しましょう。約2年前の内容であることをご承知のうえでお読みください。
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世間では何だかライトノベル32選なるものが流行っているらしいですね。32選ってどう考えても多すぎるだろう、と思わなくもありませんが、既にその数幾千冊にもふくれあがったライトノベルのなかの32作ですから、まあ、意味があるといえなくもないかもしれません。
で、この手の企画が大好きなぼくとしてはいそいそと羅列しようかと思ったのですが、既に後塵を拝した身としてはいまさらに作品を並べ上げることもためらわれます。そもそも最近のライトノベル、全然読んでいないしね。
というわけで、ライトノベル32作を並べるのはあきらめて、「ライトノベルじゃないライトノベル」を並べることにしました。つまり、ライトノベルと一般小説の境界線にあって、何かの拍子に定義論が盛り上がるとき、「これはライトノベルだ」「いや、違う」と話題になるような作品だけをまとめてみたわけです。
本当のことをいうと『たったひとつの冴えたやりかた』とか『ドラゴンランス戦記』、『エルリック・サーガ』といった日本でラノベ的に売られている海外小説まで含めたいところだったのですが、さすがにやめました。サラ・ウォーターズの『荊の城』は百合だからラノベだよね、とか大人気ないことをいうのもやめました。
作品選考条件は狭い意味でのライトノベルの定義(ライトノベルレーベルから出ている文庫)に属さないこと、それにもかかわらず何らかの意味でラノベ的であること、つまりラノベに影響を与えたか、ラノベに影響を受けた作品であること、です。
ではでは、行きますよ。
・西尾維新『化物語』
『戯言シリーズ』でも『きみとぼくの壊れた世界』でも良かったのですが、まあ、順当なところで『化物語』。ラノベ読みなら皆読んでいるので説明は不要かと。
・奈須きのこ『空の境界』
ご存知奈須きのこ。『月姫』や『Fate』の並行世界で「直死の魔眼」を持つ少女を主人公にくり広げられる物語です。恐ろしく読みづらいものの、強烈な個性に満ちています。
・今野緒雪『マリア様がみてる』
百合ブームの端緒となった傑作。何十冊も出ていますが、最初の十冊くらいは読んでおく価値があると思う。久美沙織『丘の家のミッキー』とは近くて遠い関係にあるといえるかと。
・久美沙織『MOTHER』
同名ゲームのノベライズ。でも、ただのノベライズとは違います。ジュヴナイル的に読みやすく、しかも内容は凝りに凝っているので、ラノベ読みというより小説読み一般にオススメ。
・小野不由美『十二国記』
いわずとしれた傑作。続刊が止まってもうすぐ十年になりますが、主上、何とかしてください。まあ、色々事情があるんでしょう。とにかくめちゃくちゃ面白いのでオススメ。
・冲方丁『マルドゥック・スクランブル』
いわずとしれ(略)。これもけっこうな歴史的名作だなあ。ハードボイルドでサイバーパンクな世界を舞台に、少女とネズミのサバイバルを描き切った壮絶無比な物語。冲方さんはそのうち直木賞取るかも。
・上遠野耕平『ナイトウォッチ』
この世界のすべては、ただの幻想かもしれない。サイエンス・フィクションとしては使い古されたアイディアを、圧倒的にスタイリッシュなスタイルで描ききった三部作。『恥知らずのパープルヘイズ』でもおけ。
・米澤穂信『春季限定いちごタルト事件』
古典部シリーズでも可。古典部シリーズのほうが主人公たちに好感がもてるかもしれない。全四部作で完結するはずなので、『冬季』を早く出してください米澤先生。