実質的な漫画家デビュー作だったので意欲まんまん。何が描きたいとか、何を表現したいとか、そゆー リクツは一切考えなかった気がする・・・若かったなぁ。自分のイメージした通りのネームが描けたこと、またイメージした以上のものが出来てしまったこと、この作品で実現できた2つのことが、今日まで僕を支える自信の根幹となった。
弱いなら弱いままで。
特異なキャラクターたちとしびれるような台詞、展開、描写に魅力があり、いま連載しているスポーツ漫画のなかでも安定したおもしろさを誇る作品だといえる。じっさいに20巻以上にわたって人気を維持して連載が続いていることがその品質の証拠だろう。
しかし、ぼくはこの作品を読んでいると、どうしてもある作品と比べてしまって楽しみ切れない。作者には悪いとは思うのだが、同じジャンルの作品なので、ついつい無意味とは知りながら比較してしまうのである。
おわかりの方にはおわかりかと思う。その作品とは、曽田正人の伝説の名作『シャカリキ!』だ。これぞ自転車漫画の金字塔、ぼくの個人評価では、すべての少年漫画のなかでも五本、いや三本の指には入ろうかという、恐るべき神がかり的な傑作である。
『弱虫ペダル』を読んでいるとどうしても『シャカリキ!』と比べてしまうよね、とまわりの友人に話すと、ぼくはたいてい呆れられる。気もちはわかるが、『シャカリキ!』と比べても仕方ないではないか、というのがかれらの意見だ。
『弱虫ペダル』のほうがおもしろいというのではない、『シャカリキ!』は別格、ほかの作品と比べるほうがまちがえている、と評価なのである。
既に『シャカリキ!』を読んでおられる方はおそらくこの評価に納得してくださると思う。が、未読の方は『弱虫ペダル』も十分おもしろいじゃないか、『シャカリキ』とはそれほどの作品なのか、と疑問をもたれるかもしれない。
それほどの作品なのである。スポーツ漫画として、まず、空前絶後の傑作といっていい。空前にして、絶後。えらく誇大な評価が出たものだ、と思われる方もいらっしゃるだろう。たしかに絶後であるかどうかはわからない。あるいはいつか、『シャカリキ!』に匹敵する漫画がどこかで描かれる日が来るかもしれない。
しかし、空前のほうは疑いえない。『シャカリキ!』の前には『シャカリキ!』のような漫画は存在しなかった。なぜそう断言できるのか。読めばわかる、としかいいようがない。
未読の方に絶対の自信をもって薦められる漫画をひとつ挙げろといわれたら、ぼくは『シャカリキ!』を選ぶ。もし読んでまるでおもしろくなかったとしたら、ぼくとあなたの価値観は違うのだ。その場合、このようなブログなど読む必要はない。
『シャカリキ!』はじっさい、熱い漫画だ。読むものの心の導火線に火をつけるようなところがある。その絶対的熱量は同時期に連載していた『SLAM DUNK』に匹敵し、あるいは上回るだろう。
しかし、『シャカリキ』に『SLAM DUNK』のような洗練された爽やかさはない。どこまでも汗くさく、男くさく、泥くさい。それが『シャカリキ』なのである。作者の曽田正人は自身のウェブサイトで書いている。
「イメージした以上のものが出来てしまった」。並の作家、並の作品なら、これは大言壮語というべきかもしれない。しかし、『シャカリキ!』の底知れない魅力を知っているぼくは、ただ「そうだろうなあ」とうなずくばかりだ。そうでなければあんな作品は生まれないよな、と。
くり返すが、『弱虫ペダル』は決して悪い漫画ではない。それどころか、このままみごと完結を遂げれば傑作に手がとどくかもしれないというハイレベルな作品である。しかし、申し訳ないが、『シャカリキ!』と比較すると、その熱量の桁が違う。おもしろいかおもしろくないか、という以前に、情熱のエネルギーが根本的に違っているとしかいいようがない。
曽田正人は『シャカリキ!』を完結に導いたあと、雑誌を変えて『め組の大吾』、『昴』、『capeta』といった傑作群を生み出していくことになるわけだが、いまでも最高傑作は『シャカリキ!』であると考えるひとは少なくない。
それほどこの作品は圧倒的な名作なのだ。曽田がいま連載している『capeta』もきわめておもしろい作品だが、『シャカリキ!』の昔を知っている者からすると、「ああ、曽田さんも大人になってしまったんだなあ」と思わせられるところがないではない。『capeta』が悪いのではなく、『シャカリキ!』が異常すぎるのである。
『シャカリキ!』はぼくにとってどこまでも特別な作品だ。この作品と出会えてほんとうに良かった。この作品と出会わせてくれた運命よ、ありがとう。冗談ではなく、ぼくは本気でそう思う。
先ほどからぼくはこの作品について抽象的な賛辞を並べるばかりで、具体的な内容をまったく書いていない。それは少しでもネタバレを避けたいという思いの表れだと思ってほしい。未読の方は古本屋でもAmazonでも漫画喫茶でもなんでも利用して、ぜひ、読んでほしいと思うのである。
いつかより具体的な内容にふれてこの作品を語る日が来るかもしれないが、とりあえずいまは「『シャカリキ!』、最高だよ。ほかの作品を後回しにしても読んだほうがいいよ」とだけいっておく。素晴らしい物語は、ときに人生をも変える。『シャカリキ!』にもそれだけの力がある、とぼくは信じるのである。
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コメント
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「元祖“壊れた天才”」!
まさにその表現通りの主人公でした! だから魅力がハンパなかったのか***
いまだに読み返します。シャカリキアニメ化しないかなぁ
シャカリキ全巻もってました。今のcapetaも面白いけどシャカリキは本当に熱くなり最後は哀愁さえ残りました。弱虫も楽しませて貰ってます。僕は比べる必要ないと思います。なぜなら弱虫の作者はシャカリキの影響うけてそうだからwロードレースを題材にした漫画を描くのにシャカリキを見てないわけないと思います。
弱虫ペダル15巻ぐらいまでは好きだったんだけどな~ 田所・鳴子とアブのスプリント対決
名前忘れたけど蜘蛛と忍者のクライマー決戦 新開と御堂筋の2日目スプリント対決 御堂筋と両主将の2日目最終 は特に秀逸でした。あと坂道と御堂筋の勝負?も。
弱泉!?そんな奴は知らん。
この辺はシャカリキとも戦えると思うんだが、全体を比べるとシャカリキと比べるのはちょっとかわいそうかな。
シャカリキは話の構成がとてつもなく上手かったし、変に長引かせる事は全くなかった。
弱虫ペダルの作者も終われるんなら ちょうど良い所で切り上げたいとか思ってたんだろうけど、出版事情が昔と違うしアニメ化して人気出ちゃったし、終わるに終われないでしょう。
だからと言って インハイ二回目はしつこいが。
シャカリキを初めて見て以降自転車漫画は見てません(どうしても比較してしまうので)
個人的にはシャカリキと昴をこの人の作品としては押したい
め組の大吾でシャカリキの時から足りなくなったものが昴にはあるように感じる
シャカリキ連載中に阪神淡路大震災があって、自分は卒業単位が全く取れていない大学4回生。情熱とか夢とかずいぶんもらい、2年後の卒業、就職につながりました。僕にとっては魂に火をつけてくれた名作。どうしても比べてしまうし、あの圧倒的な熱さが弱虫ペダルにも欲しいと思うけれど、きっと時代の環境も、いい作品につながってくるのではないでしょうか。
「シャカリキ!」何度読んでも心が揺さぶられ、泣かされる。自分は40過ぎたおっさんだが、この作品で泣かされる。今も読み返して熱くなっていた。ネットでこの気持ちわかる人いるかなと思い、ここへたどり着いた。自分が読んできた作品の中でも3本の指に入る。絶対お勧め。それがゆえに「弱虫ペダル」を敬遠してきたが、、一度読んでみるか。。
弱虫ペダル面白いです 60点以上つけられるくらい
でもシャカリキ!は100点越えてるんだよなあ
何故、わざわざチャンピオンで自転車レースマンガを描いたのか
仰るとおりでございます。
今年になって『弱虫ペダル』のアニメを観た。
真っ先に 『シャカリキ』と比べてしまい 弱虫ペダルの話に入り込めなくなってしまった。
思わず 弱虫ペダルイライラする、シャカリキが良いで検索していた…。
そして自分だけじゃないんだな、と。安心した。
スポーツ漫画の一級品には、そのスポーツに対する真っ直ぐな気持ちに感動する所がある。
弱虫ペダルにもそれは含まれているが 途中他校に登場してくるヒール役に、嫌悪感が全身に感じてそのアニメ自体に嫌悪してしまった。
同じテーマのシャカリキには、登場人物のキャラどれにつけてもリスペクトできて、またどストレートな 想いがバシバシ伝わってきて 感動している。
少し前にどハマりした、ハイキュー。
登場人物みんなが リスペクト出来るキャラクター…!
スポーツ漫画には、ヒール役にも 絶対的な惹かれるもの入れないとダメなんだと思う。
主人公の魅力さも、『弱虫ペダル』もイマイチ。
そこに 作品の魅力度の差があるんだと思った。