弱いなら弱いままで。
実力に定評がある作家さんの安全牌の作品は既に読んでいるわけで、ほとんど名前も聞いたことがないような作品ばかりを直感だけで選んで買って行ったのですが、さてさて、あたりは何作ありますやら。
面白そうな漫画を選ぶ嗅覚に関してはそれなりに自負があるのですが、それでも当然、全部自分の好みに合うとはいかないはずで、こういう行為は冒険ではあります。
しかしまあ、安牌の作品ばかり読んでいると、必然的に新しい発見がなくなってゆくわけで、どこかでセレンディピティに期待して、未踏の沃野へ旅立たないといけないのだろうと思いますね。
そういうわけで、そんな30冊のなかに含まれていた1冊が、天野しゅにんた『私の世界を構成する塵のような何か。』百合漫画です。
しゅにんたって名前すごくね?とか、どうでもいいことも考えてしまいますが、うん、これは良いですね。
一本の漫画として、そんなに傑出した表現力があるとは思わないのだけれど、この感性? 着眼点? キャラクター? それらは面白い。大絶賛の大傑作!というほどではないけれど、ちょっと興味深いです。
この物語のなかには、七人の女性たちが登場します。ある大学で偶然にグループを組んでレポートを出すことになった7人なのですが、それぞれが相当に異なる方向性の個性を持っていて、しかもぐちゃぐちゃに絡み合います。
初めはだれがだれやらもよくわからないのですが、それがわかってくると面白くなってくる。主人公は恋愛ごとに興味がない女の子で、お約束でべつのある女の子と恋に落ちます。
で、ふたりはめでたく結ばれるのですが、しかし、この先、ひと筋縄では行かない雰囲気をただよわせています。
作中、ゾクゾクする、というほどではないんだけれど、ちょっとクールなひと言とか飛び出してくるので、なかなか印象は悪くない(とか書くと偉そうですが)。続刊も読んでみたいと思わせるものがあります。
「百合」というジャンルは、たとえば「ボーイズ・ラブ」に比べて、甘ったるい世界を描き出してゆく印象があったのですが、この作品を読んでいるとそんなこともないかな、という気がしてきました。
いや、この作品も相当に甘い恋愛ものではあるんだけれど、ベーシックにあるものがきわめて辛辣な気がする。その辛辣さを突き詰めたほうが面白い気はするんだけれど、百合とはいえ、あくまで恋愛漫画なのでたぶんそういう展開にはならないでしょう。
でも、考えてみれば女の子の世界をシビアに突き詰めていけば、そりゃ男の子同士よりも辛辣な一面も出て来るのが当然だよな、ということは新たな発見でした。だって、女子のほうがリアルに生きている生き物だものね。
で、そのボーイズ・ラブ漫画で、やっぱり甘ったるい内容なのが、雨隠ギド『悪人を泣かせる方法』。あまーーーい。この人は
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