映画バクマン。 小畑健イラストワークス (愛蔵版コミックス)

 すっかり肌寒くなって来ましたね。

 ぼくは全身脱毛症の影響で鼻毛まで抜けてしまったせいか、くしゃみが止まりません。

 鼻毛なんてなんの役にも立たないと思っていたけれど、実は役に立っていたんだなー。失って初めてわかる大切さ。ああ無常。

 さて、そんななか、ぼくは映画『バクマン。』を観て来ました。

 うん、これはいい、いいですね!

 原作は『少年ジャンプ』連載の漫画家漫画。

 映画は原作のエピソードを巧みに取捨選択して2時間の上映時間にまとめ上げています。絶妙。

 原作は全20巻以上あるわけで、普通に考えたら一本の作品に収まりきるはずもないのですが、そこは映画らしく巧みにショートカットをくり返して魅せてくれます。

 物語は平凡な高校生のサイコー(佐藤健)とシュージン(神木隆之介)が『少年ジャンプ』の頂点を目指し駆け上がっていく様子を描いています。

 絵しか描けないサイコーと、発想力はあるが絵が描けないシュージン。

 ふたりは互いの欠点を補い合って一本の漫画を描き上げ『ジャンプ』に持ち込みます。

 そして手塚賞から本誌掲載へ、さらにはアンケートランキング首位を目指すふたりの戦いは、天才漫画家の新妻エイジ(染谷将太)など幾人もの同業漫画家たちとのバトルの態を成していきます。

 はたしてふたりは戦国乱世の『少年ジャンプ』で生き残ることができるのか――?

 物語はスピーディかつサスペンスフルに進んでいきます。

 この展開のショートカットがあってこその映画だなあ、とつくづく思いますね。

 ただ愚直にストーリーを追いかけていくだけでは面白い映画は仕上がらないのです。

 この作品、全体的には相当にエピソードが刈り込まれ、駆け足の展開が続くのですが、テンポを落とすところでは劇的に落としています。

 その緩急が印象的な展開を作り出している。「ため」が利いているのです。

 この「ため」がないとただ単に展開情報が流れていっているだけの画面になってしまうんだよなあ。映画のむずかしいところ。

 テンポのコントロールは映画の基本にして奥義ですね。

 映画って原作を忠実に再現していればいいってものじゃないんだな、とあらためて思わされました。

 うん、いい作品でした。今年の青春映画の収穫といっていいかと。