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最近、わりと生活が昼夜逆転気味になって来ているんですけれど、夜中に読むのがふさわしい作品ということで、城平京&木村有里『ヴァンパイア十字界』を読み返してみました。
いままで何度となく読んで来た作品ですが、いまあらためて読み返してみても、歴史的大傑作という評価は揺らぎません。
親しい人には「とにかく読め!」といって押しつけたいレベルのマスターピース。
いま単行本を新刊で入手する方法がないらしいことが残念ですが、Kindleでは買えるので、そちらで入手してもいいかも。
古本で買うとまとめて数百円という値段でもありますしね。
いや、しかし、これはほんとうに素晴らしい漫画です。
同じ城平さん原作の『スパイラル 推理の絆』や『絶園のテンペスト』と比べても、ぼくは一段階高い評価を与えたい。
まあ、アニメ化した『スパイラル』などと比べると知名度では遥かに劣っているのですが、内容の素晴らしさは凄まじいものがある。
もっとも、絵柄を含めた作中の描写が原作の深みを表現しきれていないところがあって、完璧とはいいがたい作品でもあるのですが、シナリオの素晴らしさは絶品です。
過去十年間で読んだ作品のなかでも最高といっていい。
第1巻の1ページ目から最終巻のラストページに至るまで、すべてが緻密に組み立てられていて圧巻です。
この漫画の最大の凄みは、現代では失われた「王」というものを正面から描こうとしている点にあります。
本書で描かれる「至高の王」とはヴァンパイアたちの帝王ローズレッド・ストラウスその人。
物語開始の時点ですでに国を失い、亡国の王となっているこの人物がいかなる意思で生きているのか、その謎がこの物語のすべてを貫いています。
詳しくは語れませんが、このストラウスの動機という謎を巡って、物語は二転三転します。
普通はまあ、二転三転といってもそう物語の根幹がころころ変わるはずがないのだけれど、この作品は違います。
それはもう、ストーリーーの骨格の根底のところから完璧に逆転する。
その昔、1000年前、その運命の日にいったい何が起こっていたのか、登場人物各人に異なる認識があり、なおかつそのほとんどが一面的でしかないという展開の妙にはほんとうに驚かされます。
至高の王ローズレッド・ストラウス――すべての真実が明かされるとき、かれがいかに重いものを背負っていたのか、読者は戦慄とともに思い知るはずです。
まさに孤高の英雄。凡庸な支配者とは格が違います。
余談ですが、こういう「王」の姿を見せられると、「夜神月ってダメな奴だったんだなあ」と思いますね(笑)。統治者としての器量が違いすぎる。
しかし、まさにそうであるからこそ、
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