弱いなら弱いままで。
過去に何度か書いているが、吉田秋生『海街Diary』が素晴らしい。もう、読み返すたびに凄みを思い知らされる。どこがどう偉いのか、うまく言葉にできないのだが、あたりまえの日常のなかにひそむ哀しみと正面から向かい合うことの凄み、といえばいいかもしれない。
物語そのものは典型的な「日常もの」で、何ひとつ大きな事件は起こらない。美系キャラクターもほとんど出てこないし、少女漫画としてはきわめて地味な作品といえる。吉田が『BANANA FISH』、『YASHA』、『イヴの眠り』と書き連ねてきたシリーズの非日常的な空気、ドラマティックな展開とは対照的である。
しかし、それなら退屈かというと、そんなことはまったくない。吉田は繊細な気遣いでもって、鎌倉の街の空気を描き出していく。何気ない展開のひとつひとつの裏にあるものは濃密な「死」の匂いだ。
そもそも物語の端緒が、主人公たち四人姉妹の父親の死から始
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