「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
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 今回は、2019年10月29日(火)配信その1をお届けします。

 次回は、2019年11月26日(火)20:00の配信です。

 お楽しみに!

2019/10/29配信のハイライト(その1)

  • 「テクノロジーに長けていた」キリスト教と「非信者は人にあらず」の一神教
  • Googleの量子コンピューターはなにが新しいのか?
  • Microsoftが落札した国防総省の事業案件の規模
  • 仮想通貨Libraのゆくえ
  • 中学生が書いたプログラム言語とオライリーのサブスク移行について
  • 「中国依存」と人類単位でのリスクヘッジ
  • 人種のIQと「孤高の天才は凡人軍団に敵わない」

「テクノロジーに長けていた」キリスト教と「非信者は人にあらず」の一神教

山路:今日はタイトルにもあった通り量子コンピュータの話ちょっと触れたりとか、あとは中学生が開発した、ブローン(Blawn)って読むんですかね?この独自プログラミング言語、あとそのタイトルには出さかなったんですけども、文科相の「身の丈」発言というのがありまして。

小飼:ああ、はいはい。

山路:けっこう、炎上しとる様子ですよね。その辺り。この受験の問題に関しては限定のほうで話をしたいと思っているんですが、ちょっと前半ITの話が多目になるかなという気がするんですけども、軽いところから言うと、個人的に最近ウケたのがローマ法王庁の。

小飼:アハハ

山路:どういうことなんですか、このネタ。ローマ法王庁が十字を切ると、バイブルの一節が読める、そんなような感じの機能を持った。

小飼:脆弱性があったというのが。

山路:あれって何なんですかね、何となく利権のニオイがしなくもないんですけれど。

小飼:免罪符アプリとかまだ売ってないのが不思議なくらいだよね。

山路:アハハ、よく考えてみたらローマ法王庁っていうか、あの辺のカソリックまわりのやつって、そういうこと商売にずっと昔からしてきた人たちですもんね。

小飼:昔からけっこう新しい技術にもじつは長けてた。

山路:新しい技術というのは、たとえば?

小飼:新しい科学技術とかっていうのも、だからわからないものは、弾圧も出来ないんですよ。こういう言い方もなんだけど。

山路:ああ、だからけっこうそういうその時代の最先端のとこはいちおう調べて。

小飼:そういうことです。ガリレオをもっとも正しく理解していたのはたぶんもうローマ法王庁です。

山路:なんというか知能の無駄遣い的なところはありますけどね、そういう話聞くと。農業技術とかもけっこう修道院が最先端なやつをやってたという話も。

小飼:実際ベルギービールってどこが作ってるんですか?そういうことですよ。

山路:なんか不思議ですよね、そういう風に神を重んじる人たちっていうのが、1番テクノロジーに理解を示しているっていうのが。

小飼:実際にそういう理解があったからこそ、生き残っているというところはあると思います。

山路:ああ、コメントで神学って結局何なのかよくわからない。って、私もわからないですね。キリスト的神学って。

小飼:うんまぁそれを言ったらね、イスラムのファトワはもっとわかんないんだけども。
 でも少なくともキリスト教までは非信者じゃなくても、キリスト教を知っている非クリスチャンという存在はあり得ることになっている。
 だから信者ではないけれども、聖書のことをよく知っているという。

山路:いちおう教会的にはそれなりに認めているというか。

小飼:そうそう。だからじつはそこの部分というのが、イスラムとの1番の違いで。
 だから知ってるけれども、要は外からの批判というのが構造的に出来ない筈なんだよね、イスラムというのは。だからイスラム学者というのは、必ずイスラム、そう宗派もイスラムなんですよ。中田先生みたいに。

山路:これ言うと問題になるかもしないけど、つまり入っちゃわないと、信者じゃないと発言できないという。

小飼:そうなの、これは前にも言ってるんだけれども、信教の自由とは相容れないよね、どう考えてもっていう。

山路:それって改革が起こしにくいですよね、とても。

小飼:そう、だからクルアーン(コーラン)で言ってることと、たとえば科学的なObservationというのが食い違った場合にはクルアーンを取らなければいけなんですよね。
 クルアーンに書いてあることというのも、けっこうでかい隙間があるので、だから人間がいろいろワイワイガヤガヤ言う余地があるわけですよ。
 これこそが、クルアーンが言わんとしていることだ。っていうのは判定するのはあれですね。

山路:この、宗教指導者の何だっけ。

小飼:そういうことです、ファトワを出す人たちですね。

「コーラン原理主義は相容れない」(コメント)

小飼:相容れないんですよ。だからキリスト教でもけっこう苦しいんですよね。信教の自由というのは。

山路:苦しい?

小飼:いや、だから導入するというのは。まともに信教の自由というのをインストールしようとしたら、少なくとも政治、そうクリスチャンに勝つ政治家というのはその時点でもうかなりあり得なくて、イスラムで勝つ民主的に選ばれた政治家というのはもっとあり得ないんじゃないかと。
 これはもう僕の個人的な意見だけではなくって、リチャード・ドーキンスがわざわざ1冊本を書いてそう言ってますね。

山路:ああ宗教ディスりまくったやつでしたっけ。

小飼:そうです。『God Delusion』です。

山路:これが今イスラムのちょっと苦境にも繋がっているんじゃないかなという気は、苦境というかあっちのほうの揉めてることにも繋がってるんじゃないかという気がしなくもないですけどね。

「一神教は理解しづらい」(コメント)

山路:まぁ確かに日本人は気楽でいいですよね、その点。

小飼:ああでも理解できないということを知っておくだけでも違うんですよ。だから1つ知っておかなければいけないのは、一神教徒からすると「神を信じていないというのは、それだけで人に非ず」なんですよ。
 この認識っていうのは、絶対に持っておかなければいけない。

山路:いや本当、海外に行った時なんかに。

小飼:だからそう、猫とかと同じカテゴリーになんですよ。かわいいし、だからイジメたりするものではないけれども、人権があるかというと、そもそもあいつら人じゃないしなんですよ。

山路:ほんと海外で宗教に関する話する時って、めちゃめちゃ用心しないといけない。

小飼:そうなんですよ。だからイコール beingではないんですよ。対等な存在ではないんですよ。

山路:いやいや怖い怖い、皆さんも気をつけて下さい。

小飼:俗っぽいところではけっこう何となくクリスチャン、何となくイスラムという人もいることはいます。

山路:うーん、イスラムの世界でその何となくイスラムっていうのは、けっこう許容されているというか、そんなにひどい目に遭わないんですかね?国にもよるっていうことなんですかね?結局。

小飼:ただしcritical conditionになった時にどうなるのかっていうの時には、まぁ要は日本だと、こういう時に名前が出てこないな。

山路:え?宗教の?イスラム関係で?

小飼:この間、この間っていうほどの……。

「『聖☆おにいさん』はイスラムは入れれない」(コメント)

山路:ああ、コメントで、あれもけっこうじつはギリギリのマンガですよね。

小飼:けっこう、記述ヤバいと思うんだけども、けっこうあれが攻撃されてないというの奇跡だと思う。
 だって『悪魔の詩』を翻訳した人は殺されてるんですよ。この国で殺されてるんですよ。筑波で殺されてるんですよ。だから日本といえども安全とは言い難いですね。

山路:そういう小説家な、戯曲になるのかなあれは。私も読んでないんですけども、そこでマホメットとかをちょっと揶揄する表現があってということですよね。死刑、どこまでも追い詰めて殺せみたいなものを出されちゃったんですよね。そういう命令を確か。

小飼:ああやっと出てきた。最近、固有名詞がさっと出てこなくて、遠藤周作。

山路:ああ、はいはい『沈黙』とかの。

小飼:はい。『沈黙』まさに、本当にそういうレベルになった時に、踏み絵を踏めるかっていうかね。

「大英博物館に『聖☆おにいさん』が展示された奇跡」(コメント)

山路:凄いな。そんなことあったんだ。

Googleの量子コンピューターはなにが新しいのか?

山路:じゃあちょっとITのほうの話で、最近世間を驚かせたというのか、凄い普通の新聞の一面にも載ってた、Googleの量子コンピューターの話が。

小飼:ああ、あれはですね、予め先に言っておくと、「なるほどわからん」です。

山路:アハハ。私も本当にぜんぜんわからないですね。

小飼:なるほどわからんの1番の理由というのは、Quantum Supremacyというのが、Buzzwordになっている。

山路:量子超越性っていったりするやつですか。

小飼:そう量子超越性というのは、要は量子コンピューターを使えば、今のConventionalなコンピューターを在来型っていうのかこういう時に、そう在来型のコンピューターよりも、ずっと素早く計算できる。要は実値でQuantum Computingというのが役に立つ事例が出始めますよというのが、Quantum Supremacy。

山路:今まででもそのたとえば、素因数分解なんかを解けますよとか言われてたじゃないですか。それっていうのは、完全に従来型のコンピューターよりも、量子コンピューターのほうが優越するっていう証明まではされてなかったということなんですか。速く出来そうだっていう。

小飼:いや速く出来るというのは証明されたんです。でもその速くするために具体的に、どのくらいの大きさの素因数分解をするんですか?っていった時にそこにbit coherencyという言葉が出てきて、要は何で量子コンピューティングが速い理由というのは、それが一種の並列計算だからなんです。

山路:なんか状態0と1のはっきり分かれてるんじゃなくて、重ね合わせたみたいな状態がいくつもあってという。

小飼:そう、それを何ビット分重ね合わせられるかっていうのが、まぁ要は実用になるかどうかというのが1つの指標だったんですけども。だいたい53ビットくらいだろうという当たりをつけて。それを実現できたと。でも実際にたとえば今使われているRSA暗号というのは、2048ビットが主流なんですけども、ついこの間まで1024だったんですけども、そろそろ量子コンピューティング抜きですよ、並列コンピューティングでも1024ビット、ヤバいんじゃねということで2048ビットに。
 でも基本的にショアのアルゴリズムだと、必要な量子coherencyというのは2048ビットの筈なんですよね。
 だから別の問題ですね。53ビットで十分。でも53ビットっていうのでも、もう尋常じゃない。

山路:凄い業績なんですか?これは、今回の。

小飼:いや、だから、「本当かよー」で、それは言いすぎだよっていうふうにIBMから物言いがついてますよね。

小飼:今回のニュースでむしろ1番笑ったのが、仮想通貨の暴落ですね。

山路:コメントにも「ビットコイン暴落」って出てますよね。あれ?それにつられてFacebookも暴落した、ちょっと下がったんでしたっけ?

小飼:リブラの関係かな。Facebookはむしろ、この後出てくるんだっけ?リブラの話。

山路:そうですね。

「シミュレートしたのが量子コンピューター自身だからな」(コメント)

山路:あ、今回のQuantum Supremacyを証明するのに使われた題材がということですね。これってビットコインが暴落したっていうのは、あんまり何というのかな、ちょっとパニック売りというか、あんまり関係ないですよね。
 これ素朴な疑問なんですけど、量子コンピューターって普通のエンジニアとか研究者じゃない、普通の人にとって使われる時のイメージってどういう感じになるんですかね?身の回りにパソコンみたいな感じで量子コンピューターが。

小飼:一種のASICというのか一種のコプロセッサになるというのは確実ですよね。というのもどんな問題でも普通の在来型、ノーマル型のコンピューターよりも、上手く解けるわけではないので。それに向いた問題をいっぱい解かせたいと。

山路:昔のパソコンだったらそれが何か浮動小数点演算用のやつが載って、最近だったらGPUが載って。

小飼:だけども根源的な違いというのは、そういうGPUにしろASICにしろ、根本的な原理というのはノイマン型なんですよね。但しそれを同時に稼働させるというだけで。だからそこの部分というのが、量子コンピューティングとはやはり決定的に違います。決定的に違う部分というのは決定的に違うんですけれども、ノイマン型だけが演算手段ではないんですよね。だから数ある演算手段の1つなんですけれども、演算手段そのものを記述できて、要は万能演算装置を実装出来るというので。ノイマン型コンピューターは要はセルフホストが出来るわけです。

山路:ふーん、前ちょっとコンピューターの話題を取り上げた時に、アナログのコンピュータもありえるということが。

小飼:そう、粘菌プロセッサもそうです。アナログコンピューティングのほうが優れている部分というのはいっぱいあるんですよね。実際にたとえば、高速道路の配置計画とかっていうのは、石鹸膜でシミュレートしてましたよね。

山路:え?え?何をですか?何を石鹸膜で?

小飼:たとえば、どういう風に高速道路を敷くと1番短い距離、要は1番安い予算で出来るのかっていうのを。

山路:石鹸膜で?

小飼:どうやるかっていうと、まず各都市にあたる部分というのを、爪楊枝みたいなのを板に立てておくわけですね。地図に。それでもう1枚地図で蓋をします。石鹸膜にぴちゃんとつけます。あげます。パチンと弾くと石鹸膜が残ったところというのが、オプティマルな。

山路:へえ、しかしそういう手法の計算、そういう計算手法というのは何か自己記述は出来ないということになっちゃう。

小飼:そういうことです。万能性に欠けるわけです。

山路:そうか、だからアラン・チューリングのユニバーサル・チューリングマシンが凄かったという。

小飼:凄かったというのはそういうところなんですよ。

山路:ああ計算が出来ればいいということでもない。

小飼:はい、どんくさくても、計算が出来るものであれば、必ず書き落とせると。

山路:風力であろうが水力であろうが。

小飼:そうなんです。

山路:石使おうがなにしようが。

小飼:そうなんですよ。今のところは1番簡単な手段というのは、シリコンで電子回路を作ってというものですけれども。

山路:量子コンピューターはそれとは違う。

小飼:違うんですよ。

山路:これは自己記述みたいなことでいうと、量子コンピュータはユニバーサル・チューリングマシン的なものを目指している?

小飼:はい、だからUniversal Quantum Computerというのはまだない筈です、僕の知る限りでは。

山路:なんか今回その量子コンピューター自体がシミュレートしたというのがあるから、何かそいうことなのかなと思ったんだけども。

小飼:何だけれども、普通の在来型コンピューターでは解くのがあまりに辛い問題が、スルッと解けそうだよという問題が見つかり始めたから話題になっている。

山路:ああ、じゃまだ本当に自分達の生活がどうにかなるというレベルで影響を与えるというところまではぜんぜんいってないわけですよね。

小飼:うん、本当に1番重要なのは、普通のコンピューターがそのまま何百万倍、何億倍、何兆倍速くなった、わけではないっていうことですね。
 根本的な原理からして違うという。だから根本的な原理からして違うので、普通のコンピューターに慣れた人が取るであろうアプローチというのは、かなり間違っている可能性が大きい。だから量子コンピューターに詳しい人たちが、普通のコンピューターに詳しいかというとそういうことはないので。

山路:量子コンピューターの入門書みたいなのをパラパラっと見たんですけど、量子コンピューターのプログラムって今の段階で見ると、言ってみたら配線とか回路を組むみたいな。

小飼:ちょっとトウが立ってるところはあるんですけども、ブルーバックスでずばり『量子コンピューター』というのがあるので、はい。だから最初の1冊としてはあれ薦めておきます。

山路:なるほどなるほど。

小飼:ちゃんとショアのアルゴリズムも載ってます。

「南方熊楠みたいな人が上手い使い方をみつけるかも」(コメント)

山路:確かに。なんか南方熊楠、確かに量子コンピューター使いこなしそうな気もしますね。

「Googleが何で量子コンピューター研究するの?」(コメント)

小飼:それはお金が余っているからでもありますし、もしかしたら自分達の商売を脅かす存在になるかもしれないですし、だから研究しない理由というのがむしろないですね。だから敵に回るのであれば早いうちに、摘み取っておきたいですよね。そう、金は唸るほどあるわけですから。

山路:その辺のところはGAFAはやっぱり凄いところありますね。

小飼:YouTubeはかつてはGoogleではなかったわけですよね。だからYouTubeを買うような会社が、量子コンピューターを買わないわけがない。むしろBoston Dynamics手放しちゃったほうが僕としてはショックです。

山路:変な犬とか、オッサンみたいな感じのロボットを開発しているところですね。

小飼:そうそう、Alphabetの一部分として何で残さなかったのだろうなというのが。

山路:金、余裕ありそうなのにって思いましたけどね。

小飼:むしろそっちのほうが不思議ではある。

「Googleは最近検索アルゴリズムを変えたらしいですね」(コメント)

山路:BERTってやつでしたっけ。

小飼:すみません、量子超越性を吟味できるほど俺、量子コンピューターに詳しくないんだよな。ただ何で量子超越性という言葉が出たのか、Quantum Supremacyという言葉が出たのかというのはわかる。かつては量子の重ね合わせで、どれくらい重ね合わせなければいけないかといった時に、やっぱり1024とか2048のオーダーだろうと思われてきたけども、それよりもずっと少ない、64ビットよりも少ないくらいのオーダーでも役に立つというのが見つかりだした。だからそれを実現できる量子コンピューターが出来るのであれば、本当に使い物になるかもしれないよという論文が出たからです。

山路:ふーん、じゃあけっこうこれお金とか量子コンピューターのところに、ガンガンと人材とか人とかが、人材とかお金が集まってくるかもしれないわけですよ。

小飼:でももう少し役に立つところを見せてくれんとな。

山路:日本でも自民党の量子コンピューターを押す議員連盟が出来たらしいですが(笑)。

小飼:まぁでも通常型の、うん、通常型、在来型どっちでもいいんですけども、コンピューターを量子コンピューターが置き換える前に、あのバカどもを普通のコンピューターと置き換える方が先なんじゃないですか。