39年ものあいだ連れ添った最愛の妻からこう言われては、さすがに返す言葉もなかった。
現在、AEWで実況コメンテーターを務めるベテランアナウンサーのトニー・シヴァーニは、AEWと契約する前、WWEと新参団体AEWのどちらを選ぶかで心が揺らいでいた。
あのとき奥さんの一言がなかったら、もしかすると今頃はWWEのテレビ番組で、シヴァーニの声を耳にしていたかもしれない。
1957年生まれで、現在63歳のトニー・シヴァーニは、80年代からプロレスアナウンサーとして活躍。NWAクロケットプロやWCWのテレビ番組にはシヴァーニの声が欠かせなかった。90年代の月曜テレビ戦争では、WCW「マンデー・ナイトロ」の実況やインタビュアーとして(WCWの声)”と呼ばれ、ライバルWWEとの熾烈な視聴率競争の最前線に立っていた。
しかし、2001年3月26日に、WCWがWWEにより買い取られると、シヴァーニはWWEへは行かず、プロレスの表舞台から姿を消す。シヴァーニが43歳のときだった。
WCW消滅後、2003年にTNA(現IMPACT!)に一度だけ出演したのみで、その後、2017年にMLW(メジャー・リーグ・レスリング)に実況コメンテーターとして出るまでは、プロレスからは遠ざかる。
余談になるが、シヴァーニの名前(Schiavone)がスキアヴォーネと日本語表記されることが、ネット上ではあるが、スキアヴォーネはイタリア語読みである。イタリアの女子テニスプレイヤーで、フランチェスカ・スキアボーネという同姓の選手がいるので、そのようになったのだろう。
プロレスから離れたシヴァーニは、ジョージアのマイナー野球リーグやカレッジスポーツなどを放送するラジオ局でスポーツキャスターを務めるなどして、新たな道を歩み、妻と5人の子供たちと生活していく。しかし、2015年も終わりを迎えようとしていたある日のことだった。長年勤めていたアトランタのラジオ局から解雇通告を受ける。シヴァーニは58歳になっていた。
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