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【1記事から購入できるバックナンバー】
・瀧澤謙太「朝倉海くんには打撃で倒せるイメージしかない」
この記事は那須川天心vs武尊を語ったDropkickニコ生配信を編集したものです(語り:ジャン斉藤)
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・瀧澤謙太「朝倉海くんには打撃で倒せるイメージしかない」
ヒマで持てない格闘技ファンの皆さん、クリスマスイブ聖なる夜の配信にお集まりいただきありがとうございます。……といっても、クリスマス・イブがロマンチックなのは10代20代前半くらいですよ。安心してください。落ち込まないでください。どちらかというと家庭持ちの方がクリスマスは大変ですよね。パーティーに頑張ったり、子供のためにサンタクロースに扮装したり。
ちょっと前にPPVの価格問題で学生割引とか中・高校生が手軽に見えるような値段を……みたいな話が出ましたけど、家庭持ちのサラリーマンがPPV代をどうやって捻出するかも大きな問題で。そんなことをツイートすると、お叱りの声が飛んでくるから言いませんでしたけど。どんな立場でも問題は抱えているというじつに普遍的なお話です。
そんなことはさておき、ヒマで持てない我々格闘技ファンにビッグなクリスマスプレゼントが発表されました。那須川天心vs武尊、ついに決まりました。2022年6月、中立のリング。
31名のDropkickメルマガの会員はこの発表にわりかし冷静というか、これまでの記事や配信を読んだり聞いたりしていれば「まあ大晦日はないよね」っていう共通認識はあったと思うんですよね。決まったら決まったで驚くし、じつは会見が行なわれていて、あとから映像配信というサプライズではありました。生配信というかたちだと事前告知をしなくちゃいけないし、K-1とRISEがそれぞれ同時に配信するとなると天心vs武尊絡みであることは確定だからサプライズ感が薄れる。RIZINの配信になると中立性がなくなるので、こういう形式に落ち着いたのかなと。
しかし、よく会見の情報が漏れなかったですね。年末に向けて格闘家・関係者の「匂わせ」が注目されましたけど、確定演出は天心選手と武尊選手の直前のやつだけ。あとの「匂わせ」はなんていうんですかね、海上から先端しか見えない氷山の全体像を語ってしまうというか、沖縄料理だけで日本料理のなんたるかを語るというか……。
榊原さんが「交渉ごとの裏側を明かされると、決まるものも決まらない」っていうのは、シバターvs皇治のことじゃなくて天心vs武尊にも言えることだったんだと思います。「もうやらない」とか「消滅」という情報が発信されることで交渉に支障をきたす。榊原さんのやっていたことは、ちょっとでも振動が起きたら爆発する時限爆弾を処理するかのようなデリケートな作業。ハート・ロッカーですよ。ハート・ロッカーの意味はアメリカ軍のスラングで「棺桶」。口をつぐむ場所、まさにノーコメント。
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ボクが「もしかしたら実現しないのかな」と不安になったは今年9月にテレビ朝日系列『アメトーーク』でキックボクシング芸人をやったときですね。天心vs武尊の煽りでもあったこの番組が実現の壁になったとか、そういう話じゃないんですけど。
今回の会見で天心選手は「この試合が実現することに喜ばない人もいる」という趣旨の発言をしてるんですよね。 そしてテーマはピース、平和だと。 武尊選手も「誰も傷つかない試合は難しいんだけど、この業界にとってプラスにしたい」と意気込んでいる。 両雄は異口同音、業界の中のいがみ合いになんとなく言及しているわけです。
それはつまり天心vs武尊がビジネス的に巨大になりすぎて「俺にもちょっと噛ませてくれ」っていう関係者がワンサカいたってことなんでしょうね。 たとえば「俺はそんな話は聞いてない」って割って入る人がいたのかもしれない。「俺のメンツはどうしてくれるんだ」って怒る人がいたのかもしれない。「俺が動いたから実現した」と胸を張る人がたくさん出てくるかもしれない。天心vs武尊はワシが育てた! 関わる人たちが広範囲すぎる。
天心vs武尊って榊原さん仕切りだから当然フジテレビ主導の案件なのに、テレビ朝日の『アメトーーク』がまだ決まってもない天心vs武尊を煽ることが混乱の現れそのもので。それぐらいコントロールがきかない巨大な試合になってしまってことにゾッとしてしまったんです。榊原さんはよくまとめたなと思います。並のプロモーターだったら、とっくに諦めてました。キック引退を延期させるってウルトラCすぎますよ。
ここ最近の榊原さんはすっかり「ノーコメントおじさん」が代名詞になってましたが、天心vs武尊に関しては基本的にノーコメントだったんですよ。いろいろと喋っていたのは一時期だけで。
8月、9月頃かな。「このままでは実現しない」「実現は50%」と意味深なコメントを繰り返してましたよね。これらの発言はどういう意味なのか。あくまでボクの見立てですよ。プロジェクトが大きくなりすぎちゃったことで、隅々まで現状の理解が届いてない。各方面に危機感を伝えるためにわざと“非常ベル”を鳴らしてるのかなって。やっぱり自分の利益しか考えてない人もいたんじゃないのかと。
「ノーコメントおじさん」になった時点で、すでに大晦日の実現はゼロにだったんでしょう。最終手段として、キック引退延期による来年6月実現の交渉に突入していた。
RIZINも、天心選手も、武尊選手も3者とも大晦日実現には前向きではなかったんじゃないかなと見えるんですよね。 どういうことかといえば、天心選手はRIZIN大晦日は“卒業式”として絶対に出たい。武尊選手はあくまで中立イベントを求める。RIZINはRIZINだけでやりたい。だって今年のRIZINは天心vs武尊抜きでも2万人バージョンは満員になるわけだし、日本人対決最高額のファイトマネーになるなら独立した興行でやらないと大赤字になってしまう。
いろんな噂がありました。RIZINが抑えていた29日たまアリで中立イベント。フジテレビは大晦日だけではなく29日も地上枠を空けていたとか。その案が消滅したことで村田諒太vsゴロフキンに会場が貸し出されましたが、この試合もオミクロン株で中止になったのは周知の事実です。
31日に大阪・京セラドーム、中立イベント案。たまアリRIZINとの同時開催です。しかし29日案や大阪案だと天心選手のRIZIN卒業マッチができなくなる。31日の昼にRIZIN、夜は中立イベントという案もあったそうですが、それはそれでRIZINに前座感が出ちゃいますよね。ホントに難しい……。
では、榊原さんは「なぜRIZIN大晦日で天心vs武尊はやらない」と事前に言えなかったのか。口の悪い人は「チケットを売るためだった」と笑うけども、今回のカードでアリーナバージョンは充分に埋まるんですよね。他にも いろんな辻褄の合わない話はたくさんあるし、いったい何が実現への障害だったのか。これから関係者や選手が「じつはこんなことがあって……」と裏を明かすかもしれない。
天心vs武尊実現の裏側は、まるで新生UWF の解散劇のように“藪の中”として扱われていくんでしょう。多くの人たちが関わっているから、なおさら。榊原さんがすべてを明かさないかぎりは答えは出てこない。その答えもあくまで榊原さんからの見え方で、決して正解ではないんでしょうね。
そういった多くの謎や裏側は、天心vs武尊実現の熱狂の渦の中で打ち消されていきます。ボクの天心vs武尊決定速報ツイートはけっこうな数のリツイートがされましたが、珍しくクソリプらしきものはない。ボクの名前はジャン斉藤だから「ジャンポケ斉藤さんだと思いました」くらいで、 みんな本当に喜んでいる。熱狂がこれまでの因縁を含めたすべての泥を洗い流した感はあります。
それでも天心vs武尊が実現することにシニカルな目を向けるというか、「俺はこんな熱狂に身を置かないぜ」っていう人も出てくると思うんですよ。それはそれで個人の好みだけど、「天心vs武尊をやったあとの格闘技界は盛り下がる」と主張する人も出てくるはずで。それは幼稚なロジック。天心vs武尊を超えるカードなんてそうそうあるわけないんだから、瞬間最高温度は下がるに決まってるって話だし、天心vs武尊をやることによって格闘技界の平均温度を上げていきましょうということですから。「天心vs武尊をやったあとの格闘技界は盛り下がる」なら、実現しなかった場合はただ温度が下がるだけなんですよ。
試合合意までどんなやり取りがされたのか知るよしもありません。2人の言葉を尊重して謎は謎のまま、裏は裏のままタイムカプセルに埋めて、いつかなんとなくわかればいいんじゃないかなと思います。 それがボクたちの那須川天心、武尊の両雄に対する最大のリスペクトですよね。雑音はいらない。ルール問題がどうだとか、クリスマス・イブにボクのリプ欄でケンカが起きてますけど (笑)、彼らが同意したんだからもういいんですよ。いまはとにかく「ありがとう!」です。6月までの半年間くらいはね、仲良くしていきましょうよ。 どうせまた揉めるに決まってるんだから!
それくらい2人が並んだ絵は本当に美しかった。これだけテクノロジーが発達した時代で天心と武尊の2人はこの6年間、一度も会話らしい会話はかわしてないわけですよね。 SNSでもやり取りしてない。メッセージを送った形跡もない。
2人が接触したのは、わずか2度。
那須川天心が6年前のK-1代々木に訪れて、試合後、花道を引き上げる武尊に声をかけて対戦を要求したとき。武尊はファンに声をかけられたと勘違いしてハイタッチをかわしたそうです。
その次は2020年の大晦日に武尊がRIZINに来場して、試合後、花道を引き上げる那須川天心に何か言葉を送ったとき。接触はこれだけです。今日の会見でも会話はかわしてない。トラッシュトークが格闘家の嗜みとなった時代に、ひじょうに格美しい関係です。そんな2人がクリスマス・イブに初めて、公の場で顔を会わせた。
クリスマスソングの定番曲、山下達郎の「クリスマス・イブ」は遠距離恋愛ソングとしても印象的です。
テクノロジーにより遠距離恋愛のあり方も変わりつつある時代において、6年間ずっと思い続けるだけで、言葉をかけることさえできなかった2人の関係。そしてついにクリスマス・イブに出会えるなんてロマンチックすぎますよ。
きっと君は来ない
ひときりのクリスマス・イブ
Silent night, Holy night
心深く 秘めた想い
叶えられそうもない
必ず今夜なら
言えそうな気がした
Silent night, Holy night
「クリスマス・イブ」山下達郎
まるで天心vs武尊のために用意されたみたいなこの歌詞!
ちなみにこのCMはJR東海制作。東海出身のビジネスマン榊原さんが実現するのは運命だったのです……という強引なオチで締めさせていただきます。熱狂は、微妙なオチすらも荒い流してくれる!
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