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元谷友貴をTKOして一躍GPのダークホースに躍り出た瀧澤謙太インタビュー（聞き手／松下ミワ）


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・萩原京平インタビュー「朝倉兄貴、そしてRIZINの舐めた考え方ごとを叩き直してやりますよ」



――元谷友貴戦の快勝からちょうど1週間経ちましたね。

瀧澤　まあ、ちょっとだけゆっくりできたかなという感じですけど、気持ち的には全然休めてないですね。

――ああ、そこは日程が決まっているトーナメント独特というか。

瀧澤　パーっとメシ食ってても、どっかに「……次の試合決まってるんだよな」というのがあったり。「相手は誰になるんだろうなあ」とか、やっぱり試合のこと考えちゃいます。

――バンタム級GP2回戦は「東京組に誰が一矢報いるのか」というのがひとつのテーマだったと思いますが、それがGP一発目の瀧澤選手の試合だったんで凄く衝撃的でした。

瀧澤　フフフフ、ありがとうございます（笑）。

――瀧澤選手の試合前後のコメントを聞くと、やはり今回は相当緻密に作戦を立てていた印象ですね。

瀧澤　考えましたね。セコンドの方も「練習やってきたことが、そのままできていた」と言ってくれて。「試合で確認してんのか？」ぐらいの試合運びというか。

――大沢ケンジさんは「元谷選手はどんどん前に出てくるから、それをどうするかがポイントだ」と言われてましたが、それも頭にありました？

瀧澤　元谷選手は前に出てくるんで、下がるのはダメだなと思ってました。逆に押し返してプレッシャーをかけるか、回ってプレッシャーを逃すか。モロにプレッシャーを受けるのはダメだと思って、そこの切り替えを凄く意識したという感じです。

――プレッシャーかけられて下がると、向こうの思うツボということなんですかね？

瀧澤　元谷選手って、前に出てくるとやっぱり乗ってくるんですよ。それで、ガチャガチャ攻撃してくるんで、相手のやりたいことをさせないようにというのは考えてましたね。

――事前の作戦として「腹と足を効かせる」という話もありました。それはなぜそういう作戦に？

瀧澤　そこは、元谷選手は戦前から打たれ強いと言われていて、KO負けも公式レコードではカット以外になかったんですよ。だから、顔に攻め急ぐとおでこで打撃を受けながら前に出て組んでくるかなと思ったんで、まずは下から崩して、空いてたら顔面に叩き込もうかな、と。

――しかも、その作戦が成功して、最初の前蹴りでかなり手応えを感じたと言われてましたよね。

瀧澤　前蹴りは、足の角度で三日月か前蹴りかを蹴り分けているんですけど、一番最初の三日月っぽいのが効いたなと思いました。あのときにもう顔が引きつってたし、うしろ下がってたんでね。ただ、そこですぐに顔に攻撃するのは早いなとも思ったんですよ。なので、足も削っていったりして慎重に戦った感じすね。

――たしかに、攻撃はお腹か足かという感じでしたもんね。

瀧澤　だから、ステップインして顔面というのはそんなに意識してなかったです。

――逆に、元谷選手が前に詰めてきたときはどうでした？

瀧澤　いや、あのボディはまったく効いてないですし、最後のほうにもらった一発がちょっと目に入ったかなという感じで。だから、まともにもらった攻撃はあのフックだけかなと思います。

――逆に、瀧澤選手のフックで元谷選手がグラついたシーンがありました。

瀧澤　あの場面は「空いてる」と思って打ちましたね。ボクは、ステップインでパンチで倒すというのも得意ではあるんですけど、うしろに下がりながらとか、回りながらとかでも、いままで打撃で倒したりしてるんでね。

――しかも、冷静だなと思ったのは、そのあとのボディで。「元谷選手は打たれるとガードが高くなるから」ということで、そのボディも狙っていたということなんですよね？

瀧澤　そうそう、コーナーに詰めてボディというのも練習していたんですよ。それで「ああ、やっぱりこうなったな」と。それでボディに打ったら「うっ……」と声が出てたんで、これは効いたなと思いましたね。

――そこも、冷静に上下に打ち分けていた、と。

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瀧澤　だから、今回の試合でボクが警戒していたのはギロチンだけですね。テイクダウンされたあとの立ち際のギロチンというか。魚井フルスイング選手との試合とか、祖根寿麻選手の試合も最後がバックチョークでしたけど、けっこう首を抱えてのギロチンは取られそうだったんで。

――そういう意味では、ゴリゴリの寝技の展開って想像していたんですか？

瀧澤　でも、そんなにレスリングが強いイメージはなかったんで。扇久保博正選手とかはそこがウマいじゃないですか。でも、元谷選手は「上になっても下になってもいいよ」というスタイルなんで、タックルもしつこくないんですよ。だから、レスリングで負けるイメージはなかったです。本当に怖かったのは立ち際のギロチンだけで。

――元谷選手ってオールラウンダーだから作戦は立てづらいと言われてましたけど、お話をうかがうかぎり見事にハマっている感じですよね。

瀧澤　けっこう考えましたから。それは、今成（正和）選手とやってよかった点かもしれないですね。今成選手ってひとつの芸に長けてるんで、作戦を立てないと絶対にやられちゃう選手なんですよ。そこで、作戦を立てる重要さというのに気づかされた試合だったんで。

――じゃあ、具体的に作戦を立てたのは今成戦からなんですか？

瀧澤　ええっと、RIZINの試合でいうと金太郎選手との試合は急遽決まったんで、作戦もクソもなかったし。試合が決まったのも、金太郎選手がサウスポーだと知ったのも6日前だったんでね。で、扇久保選手との試合は1カ月のスパンで決まったんですけど、そこまでちゃんと作れなかったんですよね。1カ月だと、ちょっと練習してすぐに減量に入るんで。で、佐々木憂流迦選手との試合もその1カ月後だったんで。

――けっこう試合間が詰まっていたんですね。

瀧澤　だから、RIZINでゆっくり作戦立てて戦うのは、今成選手が初めてでした。

――扇久保選手や憂流迦選手などトップ選手になかなか勝てなかった中で、今回の元谷戦で突き抜けられた理由って何が一番大きいんですか？

瀧澤　うーん、いままでは練習の比重を相手の対策に置いてたり、グランドの技術を打撃に追いつかせようとして、けっこう試合前でも組みの練習を多めにやってたんですよ。打撃はそこまで深く練習しなくても負けはしないだろうということで。だけど、今回は倒す練習というか、自分の得意な部分を伸ばす練習をしていて、それがよかったと思います。

――2人に敗戦したときに「戦い方を変えなきゃいけない」という話もされていましたよね。

瀧澤　そこは変えました。具体的に言うと、ステップと重心ですね。

――ほう、重心が大事なんですか。

瀧澤　いままで、身体の重心を前かがみにして戦っていたんですけど、それを直したという感じです。つまり、いままではテイクダウンをスプロールして切るということに重きを置いていたんですよ。ステップでかわすというのをそこまで意識して重心を置いてなかったんですよね。そこを、そもそも触らせないようにしたという感じですね。

――それは得意のスタンドで試合運びができるようにしたということですよね？

瀧澤　そうです。あとは、フィジカルもめっちゃやりましたし。

――そこも、やっぱり変わりました？

瀧澤　変わりましたけど……今成選手との試合はステップして小突いてという感じだったんで、そんなに出してないというか。で、今回の元谷戦も試合が早く終わったんで、そんなに試合での実感はないんですよね。でも、こなせる練習メニューとかは変わってきてて、スパーでもかなり調子はいいんですよ。だから、確実に強くはなってるんですけど、そこを見せられているかと言われると見せられてないかもしれないですね。

――じゃあ、そこはこれからですか。

瀧澤　競った試合になったときにやっと見せられるかなという感じですけど……でも競りたくないんですよねえ（苦笑）。

――ハハハハハ！　まあ、そうですよね（笑）。

瀧澤　やっぱり、早めに勝ちたいんで（笑）。

――大晦日は準決勝、決勝と2試合あるから、そこはなおさら。その大晦日は、念願の朝倉海選手との試合が現実味を帯びてきてますよね。過去に対戦してない新鮮なカードを組もうとすると、やはり朝倉海vs瀧澤謙太、井上直樹vs扇久保博正となるので。

瀧澤　いやあ、楽しみですね。

――そもそも、朝倉選手と戦いたいと思ったのはどういう理由からなんですか？

瀧澤　うーん、まあ倒しやすそうというか、倒せると思ってるんで。相性がいいですし、自分の中に勝てるイメージもありますね。

――朝倉選手のあのスピードと破壊力がある打撃を見てもそう思う、と。

瀧澤　ボク、スタンドでKOされたことがないんで。そんな、まともにもらわないと思いますし、アゴにもらったりもしないと思うし。

――そして、瀧澤選手は朝倉選手だけじゃなく、井上選手に対してもいいイメージがあると言われていますよね？

瀧澤　そうそう、だから本当にやりたいんですよ。

――それ、どうしていいイメージを持てるんでしょう？

瀧澤　ええっと……これ話すといろいろバレちゃうんでアレなんですけど、言える範囲で言うと、ボクの距離でやらせてくれるかなというか。お互いに得意な距離が似ているのかなって。

――だからこそ、自分の戦いができるという。でも、それは向こうも自分の戦いができるということですよね？

瀧澤　でも、井上選手や海くんとかは、いい感じでやれそうな気がしますね。逆に、扇久保選手のほうがやりにくいかなという感じがします。ああいう、組んでくるタイプは。でも、扇久保選手とも勝てるイメージはできてるんですけどね。

――1回対戦しているから、対策はバッチリと。

瀧澤　次は負けないというか、「こうやったほうがいいんだな」というのがあるんで。

――……となると、これは優勝しちゃうんじゃないですか？

瀧澤　もちろん優勝狙ってます！　なんか、みんなケガしてるとか言ってますもんねえ。

――ああ、3人とも拳をケガしているという話ですよね。

瀧澤　でもねえ、それボクは「保険かけてんなあ」と思って。だって普通のファイターだったら、拳が折れてたらあんまり言わないですよ。普通だったらね。「拳が折れてるんだ」と言っておいて、負けたら「拳が折れてたから」と言い訳できるし、勝ったら「折れてたのにスゲエ」と言われるわけじゃないですか。

――でも、瀧澤選手としては相手のコンディションがわかっていたほうが戦いやすいんじゃないですか？

瀧澤　いや、そんなの気にしないですね。だって、本当かどうかもわからないし。

――ああ～、もう心理戦が始まっているということなんですね。

瀧澤　だから、ボクはまったく気にしないですね。ただ、自分がちゃんとやるだけです。
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