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DEEP代表・佐伯繁インタビュー!!(聞き手/ジャン斉藤)


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佐伯さんがお正月を箱根の温泉宿で過ごしたという湯けむり情報をキャッチしました。

佐伯 なんかいろいろとあったみたいだけど、蚊帳の外だしね(苦笑)。1月下旬には石渡伸太郎選手の引退興行を手伝うし、DEEPも2月3月と大会は立て込むから、正月くらいしか休めないんだよね。

――まあ、お正月はゆっくり休むものですし。大晦日RIZINはDEEP勢が活躍しましたが、なんといっても伊澤星花選手が浜崎朱加選手をTKOするというビッグアップセットが……。

佐伯 浜崎さんはいままで外国人にしか負けたことがなかったから。その相手にこういう勝ちかたをしちゃう星花選手はすごいと思います。しかも何万人という舞台の前でもまるで気負わなかったしね。

――伊澤選手は勝負度胸がすごかったですね。

佐伯 次は浜崎さんのベルト(RIZINスーパーアトム級王座)を懸けて再戦になることは間違いないでしょ。浜崎さんからすればナメていたわけじゃないけど、なかなか見合う相手がいなかったことでのモチベーションの持ち方や、ケガの話も聞いていたし、そういう中で星花(セイカ)がひとつの成果(セイカ)を出したのかなと。

――あれ、箱根がいい湯すぎて、ノボせてるんですか?

佐伯 (無視して)次は万全な状態で“怖いハマちゃん”が来たときにどんな試合になるのかな?って楽しみだよね。そこで星花選手が厳しさを感じるのか、それでも超えてしまうのか。

――どんなセイカが出るのかと。

佐伯 浜崎さんが勝つにせよ、負けるにせよ、今後のことを考えるだろうし。実際問題、日本人では相手がいないでしょ。“若手の壁”としてやっていくというのもね……。

――格闘家にとってモチベーションは重要ですもんね。試合自体はどんな感想ですか?

佐伯 星花選手とは浜崎さんと同じAACCの本野美樹さんと2回やってるし、グラップリングではこれまたAACCの杉本恵さんとやっている。伊澤星花選手という格闘家がどんなタイプの選手なのかという情報は聞いていたと思うんだよ。ひとつ思ったのは、10月DEEPでやった星花選手のパク・シウ戦。反則のサッカーボールキックを食らったとはいえ苦戦したでしょ。

――それでも伊澤選手がなんとか凌ぎきった試合ですね。

佐伯 実際、星花選手への期待は高かったし、パク・シウ選手をどうやって極めるのかなと

――つまりハードルは高かったんですね。

佐伯 でも、いろんな見方があって「伊澤星花選手って4戦目でパク・シウ選手とここまでやれるなんてすごい強いよね」ってビックリした選手や関係者もいました。この試合を見て浜崎さんはどう思ったのかだよね。

――選手・関係者の事前予想は伊澤選手の将来性は買いつつも、浜崎選手の壁は突き破れないじゃないか、というものが多かったのは、パク・シウ戦の苦戦があったからかもしれないですね。

佐伯 パク・シウ選手もやっぱり強いからね。浜崎さんも、大晦日は外国人が呼べるかもしれないっていうことだったけど、結局コロナでダメになって。星花選手しか相手はいないと。浜崎さんサイドが無理に大晦日に試合はしなくても来年に……という考えでもおかしくなかった。浜崎さんがやるという選択をしたんだけど、どこまでモチベーションが上がっていたのかなってところは気になるよね

――浜崎選手にとっては、なかなか難しいシチュエーションだったんですね。

佐伯 ただ、終わってみると、今回は師匠のフジメグさん(藤井惠)が浜崎さんのセコンドに付いたり、煽りVを含めて世代交代のストーリーだったんだなって見えちゃったよね。

――00年代の女子格闘技を牽引したフジメグさん、10年代を支えた浜崎選手、そして20年代を背負うだろう伊澤選手が一同に介したわけですもんね。

佐伯 そういう意味では面白くなった部分と、ボクが前から言ってる女子格闘技の先が見えないという意味では転換期なのかなと。コロナで外国人選手が入ってこれない状況でどうして行くのか。やっぱり日本人対決だと男子以上に限界がある。チームメイトが多いから。選手はいるんだけど、組み合わせがすごい難しいんですよ。組めるカードが決まってしまう。

――同門同士で対戦できないケースが多いと。

佐伯 それでもDEEP JEWELSはDEEPJEWELSの世界観でやっていけるけど、RIZINはポッと出てきた選手が上がれる舞台ではないから。

――ただでさえ組み合わせが難しいのに、RIZINになるとさらにマッチメイクが大変なんですね。

佐伯 RENA選手だって大晦日の相手はパク・シウ選手もしくは星花選手くらいですよ。

――RENA選手に関していえば、今後も外国人が入ってこられないと相手は難しいですね。

佐伯 RENA選手は試合後にパク・シウ選手との再戦を希望してたよね。どっちが判定でも勝ってもおかしくない内容だったけど、これがもしRENA選手がベルトを持っていてノンタイトル戦でこういう結果になったら再戦なんだろうけど。勝ったパク・シウ選手からすると再戦する意味がなかなか見いだせないから。

――マッチメイクはファイター心理も問われるってことですね。

佐伯 難しいんですよ、いろいろと。これは女子に限った話じゃないけど、大晦日に出たメインクラスの選手はしばらくお休みしたい雰囲気じゃないですか。

―― 2次会から参加した感じの太田忍選手はまだ飲み足りないっぽいですけど(笑)。

佐伯 そうなるとパク・シウ選手や星花選手にしても、それまでにDEEPで試合を組まなきゃなんないからね。

――伊澤選手は将来的にはUFCという舞台も見えますよね。

佐伯 そこは最終的に本人がどうしたいかですけど、ちゃんと責任を持って試合をやっていかないと。たとえば、RIZINのこういった大舞台でチャンスをもらった以上は、いきなりどこかに行っちゃたりはできないですよね。もしも浜崎さんとの再戦に勝ったとしたら相手は厳しいじゃないですか。そうなったときに今後の目標を含めて本人がどうしたいのか。再戦自体もいますぐ、という話じゃないだろうから。試合後のインタビューで浜崎さんは珍しく「休みたい」って言ってたからね。

――4月に再戦……という流れじゃないですよね。

佐伯 RIZINのスケジュールもどうなるのかって話ですよね。

――いまだに2月のLANDMARK の日程も決まってないですよ(笑)。


――佐伯さんは蚊帳の外からシバターvs久保騒動をどう見てたんですか? 

佐伯 一番に言えるのは「これは表に出す問題じゃないよね」ってことです。これはどっちが悪いとかそういう話じゃなくて、他の選手や他の格闘技団体にも影響する話でしょ。これが表に出ることによってRIZINだけじゃなくてDEEPだって「判定がおかしいんじゃないか」「八百長なんじゃないか」と疑われかねないですよ。12月の牛久(絢太郎)選手のDEEPのタイトルマッチだって「RIZINのチャンピオンだから判定で勝たせたんじゃないか」って騒がれたじゃないですか。

――あの試合も接戦だっただけですよね。

佐伯 そうやって言われてしまう材料を作ってしまったのは……そこまで考えて彼らがやっていたようには思えないんですよね。

――それは臭いものに蓋をするんじゃなくて、問題を解決するにせよ、それなりのやり方があったんじゃないかってことですね。

佐伯 そうそう。第三者を入れてシバター選手と久保選手が話し合うとか。

――実際にああやって事前にやり取りをしていたことはどう思いますか?

佐伯 裏で何が起きてるかってことはRIZINが判断するしかないですよね。ただ、ひとつ言えるのは、自分が今後ビジネスをする機会があったらあの2人と何か話をするのは怖い。どこで音声を記録されて、いつ表にさらされるかわからないから。

――ああ、交渉のやり方は難しくなりますね。

佐伯 変な話、交渉における駆け引きができないから。何かあったときに「こんな話をされた」って言われかねないでしょ。

――話の流れで言った言葉が切り取られたりして、ものすごく誤解されるかもしれないってことですね。

佐伯 言葉のニュアンスというのもあるから。しかし、正月からみんなこの試合の話ばっかりしてるなあ。

――そんな中でハートフルな話があったというか、佐伯さんと長南亮さんが和解したと。2人が握手をしている写真がSNSを賑わせましたが。

佐伯 あ、その話をする? 

――そもそもなんで険悪になってるのかすら遠い記憶になってるんですけど。

佐伯 今回でいえば、前田吉朗選手の道場開きの出来事なんですよ。昨年の12月19日。大阪での道場開きだったんだけど、吉朗選手に関してはウチの人間みたいなところもあったし、ピーズラボ大阪(現パンクラス大阪)ってボクがやってたジムだったんですよね。その頃に吉朗選手が入ってきて稲垣(克臣)さんを雇って運営していて。そういう縁もあるから大阪ではDEEPとパンクラスが合同興行をやったりしてる。で、道場開きの日に大阪で修斗があったんですよ。吉朗選手に「誰が来るの?」って聞いたんですけど、聞いておいて行かないっていうのもおかしいでしょ。

――誰々がいるから来なかったんじゃないか……って思われますよね。

佐伯 「来るメンバー聞いて逃げた」って思われかねないじゃないですか。それにお祝い事だから誰がいようが関係ないでしょ。当日は雪で新幹線が遅れてまして、道場の到着もちょっと遅れたんですよね。当日に修斗があったことでそんなに関係者が多くなかったこともあって、雰囲気的にボクの到着を待ってたみたいになってて。そこで長南選手と会って久しぶりと握手して、あの写真を撮った。長南選手は修斗に行かなきゃなんなかったみたいで、実質5分ぐらいですよ、同じ場所にいたのは。話をする時間もなかったけど、まあ会えてうれしかった。

――挨拶もしない! って関係ではないですよね。

佐伯 なんていうのかな、お互いに考え方の違いや意地もあるけど、長南選手も自分を曲げない人間ですよね。

――一本気な方ですよね。

佐伯 なんで長南選手とこうなったのかは実際にはボタンの掛け違いがあったわけですよ。あいだにいろんな人が入るわけだし、長南選手の性格をわかってるけど。そうは言っても長南選手のDEEPでのキャリアは事実ですからね。

――DEEPで育って引退試合までやりましたし。

佐伯 長南選手のところにはいろんな選手もいるわけなので、いまの状況はお互いにもしかしたら損してるのかもしれない。近いうちにタイミングが合えば、とは思うけど。

――斎藤裕の「タイミングが合えば」じゃないですけど。

佐伯 でも、みんながこうやって面白がってくれて、大阪に行ったセイカが出ました。

――あ、まだノボせてますか。<おしまい>