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現役時代は「ムエタイキラー」として名を馳せ、「キックぼんやり層」にその面白さを解説してくる鈴木秀明氏。今回は那須川天心vs武尊を解説します! 



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【メイウェザー劇場】「天心くんもやるべきことはやってたんですが……」■鈴木秀明





──
今日は鈴木秀明さんをゲストにお呼びいたしまして、キックぼんやり層に優しい天心vs武尊講座を行ないます。鈴木さん、よろしくお願いします。

鈴木
 こちらこそよろしくお願いします。

──
鈴木さんはこの試合をどんなかたちでご覧になったのでしょうか?

鈴木
 ジムの指導があったので、ジムの練習が終わってからすぐに家に帰って、遅れながらのPPV視聴です。

──
ネタバレは大丈夫だったんですか?

鈴木
 それはもう誰ともその件を話さないように(笑)。

──SNSも迂闊にチェックできなかったわけですね(笑)。いろいろとお話を聞きしますが、まず契約体重や試合当日計量など条件設定はどちらが有利だと思われましたか?

鈴木
 これはどちらが優位というよりも、お互いに勝負できるギリギリの条件なのかなと。武尊選手が55キロまで落とすことは無理だったと思いますし、逆に大きくすると計量後のリカバリーで天心選手が不利になってしまう。ボクは57.5キロが落としどころかなとは思っていたんですけど。

――58キロ契約の当日計量が62キロ。

鈴木
 お互いがいま戦えるラインだったのかなとは思いますね。

──
ここが着地点だったということですね。

鈴木
 天心選手は55キロにも落ちる選手だし、これから先のボクシングではバンタム級を視野に入れてると思うので。そこを目指してる選手があんまり上げすぎてしまうのはこれから厳しくなってしまう。武尊選手が落とすのにも限界があるってことで、命に負担がかからないように落とせて、なおかつ動けるギリギリの体重なのかなと。

──ワンキャッチ・ワンアタックOKはどう思われました?

鈴木
 世界的にいろいろキックボクシングのルールがある中で、一度でも掴んじゃダメというルールはK-1だけなんですよね。海外のグローリーや他の団体はみんなワンキャッチはありなんですよね。そこを世界標準にしていくのであれば、ワンキャッチルールのほうが世界的にもいいのかなとは思います。

──
ワンキャッチ・ワンアタックを認めていないK-1の武尊選手は、そこの対応は問題のない選手ではあったんですよね。

鈴木
 だと思いますけど、何年もやってないから、そこはちょっと……。掴んでるところでは、天心選手がうまくクリンチを使いましたよね。

──
そのクリンチが今回ポイントになってくるわけですが……1ラウンド目の動きはどうご覧になりました?

鈴木
 ボクは武尊選手もある程度ステップを使って、お互いに早い攻防になるのかなと思ったんですが……武尊選手はもう最初から差し違えるぐらいの覚悟を持って、すり足で勝負をかけてきましたよね。対する天心選手はいつもどおりステップを使って、序盤にジャブをうまく当て始める。ミドルキックやボディストレート、左ジャブストレートも変化をつけて散らすように打った。それでも引かずに前に出てくる武尊選手にジャブを合わせていく。天心選手は最初から距離をうまく作りましたよね。うまく主導権を握っているので武尊選手が出した攻撃にすぐリターンしてるんです。自分がやられて終わってない。武尊選手が攻めようとする前の瞬間にジャブ、ちょっと長い技をぱっと当てる。揺さぶって距離を作っていった感じです。

──刺し違える覚悟で前に出ていったのは武尊選手なんだけど、天心選手は即対応して攻め手を許さなかったと。

鈴木
 そうです。ジャブがうまく内側から突けたことで、いい感じに距離をコントロールできた感じです。ジャブをきれいに当てることによって、そこに同じ道ができるというか、左ストレートもすっと入っていける。ワンツーを打ったり、ワンツーからのワンをアッパーから打ったり。

──
それはもう武尊選手も対応がすごく難しくなるんですね……。

鈴木 攻めたい武尊選手はジャブを食らって中に入って、一気に自分のペースに持っていきたかったんでしょうね。だからジャブをもらう数が多くなっていったのかなと。

──
そして1ラウンド後半に武尊選手のアゴを撃ち抜いてダウンを奪った。

鈴木
 これ、天心選手の得意技なんですよね。相手が入ってきてパンチを打つ瞬間、そのパンチを潜りながらカウンターをとる。普通はあんな風には取れないんですけど(苦笑)。

──
苦笑いするしかないと(笑)。

鈴木
 いやあ、なかなか難しいですね。ちょうどお互いの右がクロスしてるんですよね。武尊選手の右のストレートと、天心選手の右のジャブがうまく交差して。交差した次の瞬間に天心選手の頭がすっと一緒に潜っている。武尊選手はそのまま左フックにモーションが入っていることで、身体が少しだけ上がっている。そこを天心選手の左フック。引き込んで決めるこのパターンはいっぱい練習してきたんじゃないかなとは思います。この一撃は本当にすごいですよね。

――引き込んで決めるすごさ。 

鈴木 そこまでの作り込みですよね。武尊選手の動きを読んでるわけだし、武尊選手が強引に欲しがったところで……。

──
武尊選手が強引に欲しがったのは、焦っていたところもあったんでしょうか。

鈴木
 一気に潰すぐらいのつもりはあったと思うんですが、本当に刺し違えようと思っていたんでしょうね。ボクシングの定石なんですが、ジャブを当てられるんであればジャブで取り返すというか、ジャブの取り合いをよくやるんですね。その取り合いの中でリズムを図り合うってことをするんですけど、武尊選手は今回それはほとんどなく。右を狙ってそのまま左を繋げる自分の得意なパターンに持っていこうとしてたんですよね。

──
最初から強引に。

鈴木 当ててやろうっていう気持ちがすごく強かったんだと思います。

──
武尊選手のセコンドから「ジャブは捨てろ」という指示があったそうなんですよね。

鈴木
 あー。

──
その指示は天心選手にも聞こえていて。その冷静さも怖いんですけど。だったらちょっと強めにジャブを入れてやろうと。

鈴木 ということは武尊選手の狙いと、セコンド側の戦略は一緒だったと。ジャブをいくらもらっても右ストレートを当てる。ジャブをもらってもそのまま強引に巻き込んで、ラッシュに持っていく。どんなに食らってもいいから、そのあとに返していけば、どこかで捕まえられる……っていう考えが武尊選手やセコンドにあったのかもしれないですね。
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