なぜブアカーオvs三浦孝太がタイで歓迎されたのか? 90年代に活躍した元キックボクサーで現在はムエタイジムを主宰する佐藤孝也会長に話を伺いました!(聞き手/ジャン斉藤)
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──現役時代は全日本キックやニュージャパンキックでチャンピオンに輝き、現在はムエタイジム「キング・ムエ」を主宰する佐藤孝也会長にブアカーオvs三浦孝太についておうかがいします。
──現在は昔と違ってムエタイとの距離があるので、日本の新しいファンはムエタイという競技の見方がわからない人たちがけっこういるんです。
佐藤 それは日本に限らずタイでもそうなんですよ。
──ああ、そうなんですね。佐藤会長はどれくらいの頻度でタイを訪れてるんですか?
佐藤 コロナになる前までは月1回くらいのペースで行っていたんですけど。コロナで2年くらい行けず、今年3月が2年ぶりのタイでした。今年は3月、6月、7月、8月。基本的には福田海斗が試合するときに同行するって感じですね。それ以外ではよほど重要な打ち合わせがなければ行かないですね。
──今回日本から三浦選手がラジャダムナンの興行に招待されました。東南アジアで爆発的な人気を誇っているという話は耳にしてましたが、やっぱりタイ現地の人気もすごいんですか?
佐藤 いやあ、すごかったですね。スタジアムの中もそうですけど、三浦選手がタイの空港に到着したところから追っかけファンが集まっていたり、一般メディアも空港到着を取材してたりするので……なかなかすごいですね。
──佐藤会長の目から見ると、人気があるのはどういう理由が考えられますか?
佐藤 ぶっちゃけ言っちゃえばハンサムだからってことですね(笑)。タイの女性って韓国系の男の子みたいな色白の子が好きなんで、そういうことなんじゃないかなって思いますけど。ボクはあまり三浦選手を存じ上げないんですけど、RIZINで1回試合しただけだと聞いてます。それがタイで報道されてから一気に広がったみたいです。ボクらからすればなぜそんなに人気があるのか……ビックリしてるんですけど(笑)。
佐藤 そうですね。今回のラジャダムナン・ワールドシリーズ(以下RWS)という興行は、いわゆる世界のスタンダードな格闘技の興行にムエタイを持っていこうと。そういうコンセプトの興行なものですから。いわゆるボクたちが考えるムエタイはワールドスタンダードにはなりえないだろうと。そこからまずスタートしてるわけですよね。なので今回のRWSは通常のムエタイとはルールもポイントの取り方も全然違いますね。
──福田海斗選手が出た試合も違うんですか?
佐藤 はい、ムエタイとは違います。まず通常のムエタイは5ラウンド制なんですよね。3分5ラウンドのインターバル2分。今回のRWSは3分3ラウンドなんですよ。
──3分5ラウンドと3分3ラウンドの違いがある。
佐藤 あと通常のムエタイはラウンドごとに採点を発表することはしないんですよね。逆にRWSはラウンドごとに公開。オープンスコアで、なおかつラウンドマストなんですよね。ラウンドごとに必ずどちらかに10-9をつけなきゃいけなかったんです。
──判定の付け方も通常のムエタイとは違うんですね。
佐藤 オープンスコアだとムエタイは難しいんですよ。なぜかというと、ムエタイは賭けの対象になってますから。ムエタイの賭けって試合前にどちらが勝つか負けるかの賭けと、ラウンドごとにどちらが勝つか負けるかの賭けがあるんですね。
──ラウンドによって賭けの倍率が変動していくわけですよね。
佐藤 そうなんです。ということは、オープンスコアだと、どちらにポイントが入っているかはわかってしまうので賭けにしづらいんです。そういう意味でRWSには賭けの要素が薄まっていることは、大きな違いにはなりますよね。
──このRWSはいつぐらいから始まってるんですか?
佐藤 始まったのは今年ですね。1回目の興行がたしか7月だったかな。つい最近始まったばっかりですね。
──ムエタイというと賭けを仕切るギャンブラーと呼ばれる人たちがいて、選手や試合に多大な影響力を持っているという話は聞いてるんですけど。結果的にギャンブルの要素を排除したのは、そうしないとムエタイはワールドスタンダードなものにはならないってことですか?
佐藤 まあ、そうですねぇ。初めてムエタイを見た方が「判定でどっちが勝ったの?」って、ほとんどわからないと思うんですよね。KO勝ちだったらもちろんわかりやすいんですけど、基本的にムエタイはKOが生まれないとは言いませんけど、割合としては少なくて。判定決着が多いですからね。
──戦っている選手のジム同士が賭けをやっていたり、ヘタに試合を落とすとギャンブラーからの信用が失われることで確実に勝利を追い求めるそうですね。
佐藤 でも、長年ムエタイに携わっているボクらでも「どっちが勝ったのか?」わからないことがあってですね。
──そんなに難しい。ムエタイの判定というと、この選手がミドルキックがうまい、あの選手は首相撲が強い。その特性を活かせれば判定に響くという話は聞いたことがあるですが、佐藤さんクラスでもわかりづらいところあるんですね。
──そんな要素も絡んでくる。
佐藤 良い言い方をすると、ホントに情報戦まで含めた総力戦なんですけれど。逆にいうと、そこから賭けがスタートしてるので、この選手がたくさんミドルを蹴ったからって勝つわけではない場合があるわけですよ。そのへんを含めると、もうホントに難解なものになってしまうので、ボクらでもわからない判定はよくあります。ボクらでさえわからないものが「初めてムエタイを見に来ました」という一般人にわかるわけがないので。そうすると神秘的なものというような捉え方をするしかないわけです。
──そうなるとスポーツとしてのファンが増えていかないですね。
佐藤 ギャンブルではなく純粋にムエタイを見に来るお客さんを増やそうと思ったときに、現在賭けとともに共生してるムエタイというものが、はたしてワールドスタンダードになるかっていうと、そこは難しいんじゃないかなという気はしますね。そういった背景からRWSみたいな興行が生まれてきたんだと思います。
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コメント
コメントを書く部外の日本人や門外漢の青木が「ぼくのかんがえたさいきょうのムエタイ」をギャーギャーわめいて、滑稽だったな(笑)
ほんと勉強になりました。
ムエタイが競輪的な感覚なのも、そこから脱しようという動きがあることも、知らない事だらけです。
そしてカズジュニアはこれからどうなっていくのか、、、