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平本蓮1
万字インタビュー!(聞き手/ジャン斉藤)




平本
 (ニコニコしながら登場)あー、すいません、遅れました。

――斎藤裕戦は判定で負けちゃいましたが……なんだかやる気にみなぎってきますね。

平本
 いや、これからのことがいろいろと決まりそうなので……ホントに楽しみなんですよ(笑)。みんなにも楽しみにしててもらいたいですけど、自分の確変を感じてますね。次の試合では、もっとすごいものを見せられるなって。

――
へえ、何が決まるのか気になりますね(笑)。先日の試合なんですが、いまのキャリアで斎藤裕とあそこまで渡り合えたことと、その一方で超えることはできなかった。嬉しさとくやしさ、半分半分という感じですかね?

平本
 試合を振り返ってみて、自分的には必要不可欠な試合だったと思いましたね。いままでやってきたディフェンスの練習の成果は見せられたし、打撃の組み立てでいえば、もっと手数がほしかったなっていう。その反省点はあるんですけど、しっかりダメージが取れる蹴りだったし。ただ、自分の武器を最大限、使えなかったなって。

――
反省点と成果がないまぜになってると。

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平本
 けど、総合格闘技としてはすごい自分に自信を持てたというか。試合前から岩崎(達也)先生にそこは指摘されてたんですよ。「待ちに徹したら、そこで絶対に合わされる」と。そこは斎藤選手のうまさだからって。

――平本選手が空手を習っていて、MMAではヘッドコーチ的存在の岩崎先生。

平本 岩崎先生でいえば、セコンドで「行くな!」って指示したことを勘違いして受け止める奴が多くて。あれ、全然違いますよ。

――前に出られなかったのは、「行くな!」というセコンドの指示が原因だってやつですね。

平本 「行くな」っては「攻めるな」ってことじゃなくて「寄るな」っていう距離感の話ですね。手数は出せってずっと言われてたんですよね。

――なるほど! セコンドの指示って瞬間に伝えないといけないから、簡略化して暗号的になることが多いんですよね。あと意識付けが重要だったり。

平本 そうそう。自分の試合に限らず、すぐにセコンドのせいにするじゃないですか。石渡(伸太郎)さんがボクのセコンドについたときもそうだったし、萩原(京平)に負けたときはハセケン(長谷川賢)さんがいろいろと言われて。

――下のポジションになったときにハセケンさんの「暴れろ!」って指示が批判されましたけど、正攻法だと切り抜けられないシチュエーションの場合、「暴れろ!」は的確だったりするわけですね。

平本 俺がいろいろと言われるのはいいけど、今度は「岩崎じゃなくてハセケンに戻せ!」とか言ってる奴もいるじゃないですか。あの「行くな」は緻密な距離を取って手数を出せってことなんですよね。

――練習ではその距離感をずっと意識してやってきたんですね。

平本
 そうですね。組まれてもいいから、ぶん殴る。とにかく組まれても対応できる練習をしようと。それを徹底してやってました。試合のちょうど5週間前ぐらいにGENでスパーリングをやったときに顔の骨を折ったんですよ。

――
あ、そんなケガを。

平本
 そこから距離感を修正したりして、岩崎先生や大塚(隆史)コーチと強引に倒しにいく練習はしてたんですけど……試合が終わって振り返ってみると、もっと貪欲に攻めるべきだったというか。

――
思ったより手が出なかった。

平本
 うーん、MAX100%のパフォーマンスの試合を目指すというよりも、勝ちを目指そうとしてしまったというか……そこは勝ちたかったんですよ。でも、あまりにも勝ちに徹しすぎてもダメじゃないですか。

――
アクセスを踏みっぱなしだと暴走しちゃうし、おそるおそるだとスピードは出ない。そのバランスですね。

平本
 そこの反省点をすごい感じられたんで、落ち込むというよりは、次にやるべきことが明確にわかった。それプラス、レスリングの部分でやってきたことは間違ってなかったって。

――収穫の多い試合だったわけですね。

平本
 こんなこというと格闘家らしい話になるんですけど、萩原と鈴木千裕は何がなんでもリベンジしてやろうと思ってて。でも、斎藤選手に対しては、すごくいい経験をさせてもらって、やり返したいという気持ちはないんですね。これからの自分にとって必要不可欠な経験をさせてもらいました。斎藤選手、本当にありがとうございました!……って感じが強いかもしれない。なんて言うんだろう。あの人が伝えたかったことも身をもって知ったというか。

――
斎藤選手は試合前にそういうことを言われてたじゃないですか。戦う人間としてカチンとくるところはなかったんですか?

平本
 いや、そこは絶対に乗り越えてやろうと思ってましたね。あの人にはあんまり「この野郎!」みたいな感じにはならないんですよねぇ。実際にあの人の言うとおりになってしまったし、これがベテランの強さなんだって納得できているんだけど。ただ、サイドバックを取ったときは「どんなもんじゃい!」とは思いましたよ(笑)。

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――
あれはビックリしました。でも、あのとき平本選手のほうから離れ気味でしたよね。

平本
 大塚コーチから「離れて!」という声が聞こえて。自分から離れて打撃勝負を徹底しようということだったんです。あそこで片足を入れてグラウンドで漬けようと思えば、たぶんできた自信はあったけど、無理に漬けることで自分のスタミナを削られたり……。

――
斎藤選手にインタビューしたら「ああやって崩していくほうも疲れるんですよね。あえてもう少しやらせようかなと思った」そうですね。

平本
 やっぱり向こうのほうがベテランだから、変に向こうの土俵で勝負するのも危ないじゃないですか。これが試合じゃなかったら、あのままやればすごくいいスパーリングになるんですけど、試合として考えたら、それは間違った選択なのかなと。だから瞬時に切り替えて離そうと。

――
何が命取りになるかわからないってことですね。

平本
 あのシーンも含めて、本当に必要不可欠な経験を得たなって。でも、悔しいですよ、悔しい。結果として悔しいけど、もっとすごくなれるっていう自信がお土産でついている感じがすごく強くて。

――
自分の可能性が見えたと。

平本
 試合が終わってから、ずっと動画を見返していたら、絶対すごくなれると思える。見れば見るほどそう思えたんで。より前向きにはなれました。

――
デビュー戦の頃と比べれば、テイクダウンディフェンスのレベルも格段に上がっていますし。

平本
 練習では前から自信はあったんですよ。強い人とやっても全然テイクされない。でも、試合になってみないとわからないですからね。そこで試合でもできたことは自信です。

――
やっぱり試合と練習は違いますもんね。

平本
 練習や試合経験を積んだことで「寝かされたらもうダメだ」っていう不安はないんですよ。だから、自信を持ってMMAファイターを名乗れるというか。思ったのは俺と斎藤選手くらいの試合じゃないですか、壁レスであんなに盛りあがったのは。

――
あんな地味な攻防なのに歓声がすごかったですよね(笑)。

平本
 嬉しいですよね。だってそれはRIZINファンのみんなが自分のストーリーをわかってるというか……笹原さんのインタビューが腑に落ちたんですけど、平本蓮という名の漫画を読んできてるってことですよね。ボクが「K-1最強じゃー!」って啖呵を切ってRIZINにやってきて(笑)。

――K-1ファイターがMMAデビュー戦であっという間に寝かされて……という第1話ですね。

平本
 ファンもアンチもあんなに感情移入してくれて。だからこそ勝ちたかったし、いろいろと思うところがあるんですけど……まあ胸を張ろうかなと。満足はしてないし、「俺はもっとこんなんじゃなかったな」って悔しくて。本当に自分に負けました。自分に負けたなあ……って。試合後の控室で「自分に負けた」って言ったら、岩崎先生に「そんなこと言うんじゃねえよ。おまえは最後まで勝つ気で戦ったよ」って。その言葉に救われましたねぇ。

――
競技の結果じゃなくて、いままでやってきたこと、試合に向かう姿勢がかたちになってるってことで
すね。

平本 そこは自分でもわかるんですけど、全部燃え尽きられなかったなって。試合が終わってもあまり疲れてない自分に腹が立ったという感じですよ。もっとゼーゼーへたり込むくらいまで……。ダメージもなく、傷もなく、疲れもなく、次の日には練習できてしまう自分に腹が立つ。「もっとボロボロになって取りに行けや!」って自分にイラつきましたね。


・斎藤裕のうまさ
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・牛久絢太郎への対戦アピールは
・前田日明、安保瑠輝也、白川陸斗……
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