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斎藤裕、石渡伸太郎が生き抜いた“冬の時代”のマネジメント術■遠藤正吾【22000字】
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斎藤裕、石渡伸太郎が生き抜いた“冬の時代”のマネジメント術■遠藤正吾【22000字】

2023-06-21 09:51
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斎藤裕、石渡伸太郎をマネジメントする遠藤正吾インタビュー。メジャーイベントなき冬の時代を生き抜いてきた裏側を22000字のボリュームでお届けします!(聞き手/ジャン斉藤)



【1記事から購入できるバックナンバー】

・斎藤裕、平本蓮戦を振り返る…「ボクのほうが負けられない状況でした」




――
最近は海外マネジメント会社と契約するのが流行ってますけど、それはそれでメリットはあるとして、個人マネージャー的にきめ細かいサポートまでやってくれる遠藤さんたちのほうがやりやすいこともあるのにな……って常々思ってます!

遠藤 ありがとうございます(笑)。海外の大手マネジメント会社さんは将来性を高く評価されている選手だったり、UFCやベラトール、PFLクラスにならないと、なかなか本腰を入れてサポートしてくれない部分が多いですし、日本でのスポンサー獲得の営業活動なんかも選手に任せっきりだったりしますからね。

――
いま遠藤さんはどの選手をマネジメントされてるんですか?

遠藤
 有名どころで言いますと、斎藤裕選手、中村K太郎選手、アキラ選手、越智晴雄選手、DEEPフライ級GPで活躍した本田良介選手や宇田悠斗選手、パンクラスのバンタム級1位・井村塁選手、元ムエタイ三冠王の雅駿介選手や、引退しましたけど石渡(伸太郎)さんなどです。デビュー戦の選手から国内トップクラスの選手まで担当しています。自分のほうからスカウトすることはなくて、基本は選手や関係者からの紹介ですね。あとは選手から直接ご依頼をいただいたり。

――下世話な質問ですけど、ビジネスになるのはトップ選手になってからですよね。

遠藤
 まあ、そうなりますね(笑)。メジャー団体と契約している選手、もしくはDEEPさん、パンクラスさん、修斗さんの王者や元王者、王者クラスもいますけど、それでもビジネスになるとは正直、言い難いところはあります。将来を見据えてサポートさせていただいているところはありますね。

――
そこは芸能人やタレントのマネジメントと同じなんですね。売れっ子になるまでは赤字前提で。

遠藤
 そうです。なので新人だからといって、手を抜いたりとかは一切ないです。

――
遠藤さんがもともとこの仕事に入るきっかけは?

遠藤
 2006年にトライファイトという格闘技のアパレルやグッズを扱う会社を設立しまして。それまでは格闘技ファンでした。ファイターになりたいという気持ちはなかったんですけど、格闘技に携わる仕事をやりたいなと思ってまして、当時グッズを扱うところが少なかったんですよ。イサミさん、ブルテリアさん、公武堂さんが有名どころで。会社を設立して自分1人が食べていけるぐらいはできるかなと。当時はPRIDE人気がすごかったんですが、UFCのブレイクでこれからいよいよアメリカのマーケットが開拓される感じもあったので、アメリカンMMAブランドを仕入れようと。そこはあんまり扱ってるところは少なかったんですよね。

――ブルーオーシャンじゃないかと。

遠藤
 はい。そこのシェアをほぼ獲得できるだろうと。いま思えば若かったし、楽観的に考えてたんですけど、もう全然PRIDEさんやHERO’Sさん、その後のDREAMさん、戦極/SRCさんの人気が凄くて、みんなアメリカのMMAブランドに目が向かずに日本の団体で人気のある選手が着用されているブランドしか売れないという(笑)。ちょっと早すぎましたね。

――
その流れで選手のサポートが始まったんですか?

遠藤
 最初は物品提供とか、ショーツのプリントなんかでサポートさせていただいて。石渡さんと共通の知り合いがいて、その方の紹介で石渡さんから始まりました。当時の石渡さんはガッツマンさん所属で、そこの先輩だった廣田(瑞人)さんや奥野(泰舗)さんを紹介していただいて。

――
いまのCAVEを立ち上げる奥野さんですね。

遠藤
 はい。当時、廣田さんや奥野さん、石渡さんにはマネージャーさんがいらっしゃったんです。でも、それだけで家族を養っていくのはなかなか難しいので、他の仕事もされていまして、そっちのほうがかなり忙しくなってしまったことで「代わりにやってもらえませんか?」と。格闘技自体は好きでしたし、業界の内側の方にも興味はありましたので「うまくできるかわかりませんが、できるかぎり頑張ります」ということで。

――日本人選手専門のマネジメントって珍しいですよね。

遠藤
 ほぼいなかったんじゃないですかね。

――
あの頃は日本に外国人選手を招聘する役割が主というか。日本人選手は団体がマネジメントも兼ねるみたいな感じだったんですよね。

遠藤
 そういう選手が多かったと思いますね。マネージャーみたいな方はいたけど、選手のさまざまな仕事を管理する方はいなくて、そこは所属ジムの代表の方がやられていたり、友達にやってもらったりとか。それはいまでもありますけどね。

――
遠藤さんもきっかけは「知り合いだから」ですもんね。

遠藤
 そうなんですよね。それで最初の仕事がUFCとの交渉だったんですよ(笑)。

――
いきなりハードルが高い!(笑)。

遠藤
 当時の廣田さんはDEEPさんのライト級チャンピオンだったんですけど、UFCが久しぶりに日本大会を開催して。UFC144だったかな。

――
ベン・ヘンダーソンvsフランク・エドガーのタイトルマッチがあったナンバーシリーズ。

遠藤
 せっかくUFCが来るので廣田さんと石渡さんを誘って観戦しに行ったんです。当時はたしか日本のメジャーは戦極/SRCさんは休止というかたちだったんですかね。

――
戦極はもうやってなかったですね。DREAMもその年の大晦日の1回やっただけで。

遠藤
 国内では先が見えない中で、UFCの盛り上がりを目の当たりにして「やっぱり、いまはここを目指さなくちゃいけないのでは?」となったんです。当時のUFCのライト級のマッチメイカーはジョー・シルバだったんですけど……。

――
90年代からUFCを支えた名物マッチメイカーですね。いまはリタイアしちゃいましたけど。

遠藤
 問い合わせたら「UFCはいまはライト級の枠がないけど、ストライクフォースだったらすぐ組めると思う」と言われまして。当時はショーン・シェルビーがストライクフォースのマッチメイクもやってたんです。

――いまのUFCのマッチメイカー。ストライクフォースがUFC傘下に入った時代ですね。

遠藤 はい。それでショーンに連絡したら、パット・ヒーリー選手と次期挑戦者決定戦を提示されたんです。アメリカのニュースサイトや関係者からの情報によると、いずれストライクフォースはUFCに完全に吸収されるだろうという憶測もあって、すぐにUFCと契約できないならまずはストライクフォースと契約したほうがいいんじゃないかっていうことで。

――
実際にストライクフォースの契約ファイターはUFCへ移管することになって、廣田さんもUFCファイターとなりましたね。ストライクフォースに参戦するにあたって、佐伯さんともお話はされたんですよね?

遠藤
 もちろんです。当時DEEPチャンピオンでしたので、佐伯代表に相談することがマネジメントとして、いの一番の仕事でした。佐伯代表もUFC日本大会を見られたとのことで「あの大会の盛り上がりを見たら上を目指す選手としては、現状だとUFCを目指さなくちゃいけないよね」と快く応じてくださいました。佐伯代表は廣田さんのマネジメントが変わるとなったときに「やっぱりウチのチャンピオンだから、そう簡単に、はいそうですかでは終わらせられない」ということで、ジム代表の奥野さん、元マネージャーさん、私の3人でDEEPさんの事務所にご挨拶にうかがわせていただきました。で、実際に会ったら「えっ、新マネージャーの遠藤さんってウチのグッズも扱ってる遠藤さんなの? 早く言ってよ~。だったら大丈夫ですよ」と(笑)。

――
まったくの外部の人間だと共通言語が成立しない場合があったり。

遠藤
 そうなんですよね。言い方が適切じゃないかもしれないですけど、各業界それぞれのルールみたいなものがあるじゃないですか。そこにどっぷり漬かってないといけないわけではなくて、それなりの筋を通して物事を進めていったほうがあとになって揉めないですし、そこらへんは理解していたつもりではいましたけど。佐伯代表は「こうした場合はこうやったほうがもっとスムーズに進むよ」とかいろいろと教えてくださいました。プロモーターとマネージャーってファイトマネーなんかの交渉もするので、ある意味、敵みたいな関係性だったりする場合もあるんですけど、それでもすごく親切に教えてくださいましたね。なので変な話ではありますが、ボクにマネジメントのイロハを教えてくださったのは佐伯代表です。

――
佐伯さんってプロモーターサイドでありながら、選手目線で配慮することが多いですよね。

遠藤
 そこのバランス感覚はすごいですよね。なかなか話が進まない場合でもWin-Winになるような落としどころを見つけてくださって「ここまではやれるけど、ここから先はできないよ」と正直に言ってくださるし、そのあとのことも考えてくださる。そのご配慮やお気持ちは選手にも伝わりますので。

――
いまはそうでもないけど、団体側ってマネジメントに対して固い時代ってあったじゃないですか。

遠藤
 いまは時代が変わって、自分の場合はお世話になっているどの団体さんともコミュニケーションが取れてるとは思っていますけど、やっぱり線を引くところは引いてますよね。たとえばRIZINさんはコロナ禍以降は選手の控室にマネージャーは入れない決まりになってるんです。選手とセコンドだけ。マネージャーはある程度のエリアまでは入れるんですけどね。マネージャーがセコンドに入る場合はセコンド扱いになるので入れますが。

――
昔のメジャー団体って選手の知り合いなら誰でもバックステージに入れちゃったんですよね。選手入
場のときにみんなゾロゾロ一緒だったりしたのはそのせいで(笑)。

遠藤
 その点、RIZINさんはちゃんとしてますよね。ホテルから会場に向かうバスにも通訳さんは別として、選手とセコンドしか乗れないですし。公開計量はOKなんですけど、本計量のほうは選手とセコンドだけしか部屋に入れないです。

――
RIZINらしからぬマジメぶりですね(笑)。

遠藤
 セコンドとファイターのパスは顔写真付きです。ファイターは誰でもわかりますけど、セコンドって元選手だけではないですし、わからないじゃないですか。やっぱりバックステージをフリーにしちゃうとトラブルが起きかねないですから。

――話を戻すと、廣田さんがストライクフォースと契約したときは、ファイトマネーの交渉もされたんですか?

遠藤 交渉というか、向こうから「この額でお願いします」と。たしか当時の相場はまだ〇千ドル+〇千ドルのスタートだったんです。ただ、戦極で王者になってましたし、DEEPの現役チャンピオンということで〇千ドル+〇千ドルのスタートにしていただいて。

――ファイトマネーの相場を知っていないと、めちゃくちゃな数字を要求しちゃってトラブルになるケースはありますよね。

遠藤
 性格的にやるんだったらきちんとやりたいなと思いまして、そこは前もって相場を調べたり、多くの関係者に情報収集をしていたので。あまりにも安かったらどうしようかと考えてプランABCを立ててました。なにより選手が納得できるかたちで進めていこうと。興味のある世界なのでやっぱり楽しかったですね。「こういう仕組みになっているんだ」「この選手はだからよく使われるんだ」とか。

――どういう選手が売れるか見極めがついてくるわけですね。

遠藤
 でも、やっぱり一番は強くて、試合が面白い選手が売れていきますね。そこはどの団体も変わりはないと思うんですけど。たとえば代役出場だったり、バーターとか何かしらのきっかけがあっても結果を残さないと長くはチャンスをもらえない。

――
最近でいうとRIZINで萩原京平選手は白川陸斗選手の対戦相手としてピックアップされたけど、そのチャンスを最大限に活かして。

遠藤
 そこはもう萩原選手がアッパレですよね。あそこまで人気が出ましたし。それは萩原選手がチャンスをものにする力や魅力があったってことだと思います。

――
具体的な数字は言えないと思うんですけど、最初のマネジメント料はどれくらいだったんですか?


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