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【メダル11個!!】パリ五輪レスリング日本代表が超強かった理由■保高幸子
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【メダル11個!!】パリ五輪レスリング日本代表が超強かった理由■保高幸子

2024-09-17 08:24
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    RIZINオフィシャルカメラマンとしてのおなじみ!レスリングを20年以上も撮り続けている保高幸子さんにパリ五輪のレスリングを振り返ってもらいました!(聞き手・ジャン斉藤)


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    ・【知りたいんでしょ!?】日本レスリングが東京五輪で強かった理由■保高幸子

    ・レスリングを20年間、撮り続けきたカメラマン――保高幸子インタビュー



    ――
    レスリングを撮るために世界の果て飛んでいく保高さんですが、Dropkickのインタビューは2021年の東京オリンピック以来になります!

    保高 ですよね。あれからもう3年ってめっちゃ早い(苦笑)。

    ――
    東京オリンピックでレスリング日本代表が獲得したメダルは金5、銀1、銅1でしたが、今回のパリは金8、銀1、銅2と大躍進でした。女子6種目、男子12種目で11個の獲得だから凄すぎます!

    保高
     本当に凄かった。ただ、私たち関係者のあいだでは「全員メダル圏内だね」という話をしてたんですよ。

    ――
    全員メダル圏内! ただでさえメダル鉄板競技だったのになぜここまで?

    保高
     今日は「なぜこんなにメダル獲得できたのか?」ってことは絶対に聞かれると思ってたんで、一生懸命考えてきました(笑)。まずレスリングの強豪国ってイランやアメリカなんですけど、そういった国との違いを考えてみたら、日本のレスリングは本当にオリンピックでしか注目してもらえないから、全勢力をパリに注いだということなんじゃないかなと。だって、イランやアメリカはオリンピックで結果を出さなくても年中チヤホヤしてもらえるんですよ。

    ――
    へえー、そんなにチヤホヤされるんですか?

    保高
     もちろん、どの国もオリンピックの金メダルに価値があるんですけど、日本はオリンピック以外“ゼロ”なので。

    ――
    正直、オリンピック以外の注目度はゼロに等しいですよねぇ。

    保高 選手たちもそこは理解しているし、フリースタイル57キロで金メダルだった樋口黎なんかも、世界選手権は目標にしてないですからね。世界王者になったところで、誰もチヤホヤしてくれないし。

    ――イランやアメリカでチヤホヤされるというのは、具体的にはどういうことなんですか?

    保高 たとえばですよ、イランだったら世界選手権で勝った程度でも、選手が帰国した際の空港に人だがりができますよ。

    ――あー、MMAでも国によって大歓迎シーンがよくありますね。

    保高 キルギスは人口700万人の国なんですけど、けっこうレスリングが強くて。最初に有名になった女子選手のインスタフォロワー数はいま50万人とかなんですよね。700万人の国で50万人いるんですよ?オリンピックで優勝したことないのに。

    ――
    凄い!

    保高
     今回のオリンピックで文田健一郎に準決勝で負けたキルギス選手もフォロワー数10~20万人かな? 彼はマネジャーもついてますからね。なので、日本の選手とはオリンピックの捉え方がちょっと違うんですよ。

    ――
    日本人選手のオリンピックのモチベーションは他国より高いんですね。

    保高
     日本が勝てた理由は日本代表が若い世代だったこともあると思います。いまもSNSの時代になって、他国のトップ選手の生活などが垣間見えるじゃないですか。スポーツウェアのモデルになっているかっこいいビジュアルが流れていたり、大スター扱いされてフォロワーが何十万何百万単位だったり、国内大会で4万人の観衆を集めたり……日本だったらオリンピックで金メダルを何個も獲っても難しいことが起こっているから、「日本だってレスリング人気が高くなることは不可能じゃない!」という気持ちが出ていますね。

    ――
    隣の芝生の青さがSNSで可視化されたわけですね。

    保高
     レスリングがそれだけ人気がある国がたくさんあるということは、レスリングというスポーツが面白くないとかそういう理由じゃない。そこに選手たちが気付いてしまったんじゃないかと思います。そこを変えるためにはまずオリンピックで勝つしかないと。

    ――
    執念が違うわけですねぇ。

    保高
     よく日本選手にはハングリー精神がないと言われますけど、オリンピックで勝たないと錦を飾れないという面でのハングリー精神は負けないんだと思います。

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    ――
    水泳なんかは世代交代が難しそうに見えたんですが、その中でレスリングが強かったのは組織的な強さもあるんじゃないかなと。

    保高
     ちょっと他のスポーツのことはわからないですけど、レスリングに関しては、逆にコロナ禍があったことで協会として強化がほとんどできなかったと聞いてるんですけどね。全日本合宿がほぼなかったですし。

    ――
    え、そうだったんですか?

    保高
     まあ、全日本合宿って以前から年にトータル2ヵ月あるかどうかだったんですけど、このオリンピックに向けては4日間程度の練習を数回ちょろっとやった感じだったので。そのぶん各所属チームでの練習がよかったんだと思いますね。中でも日本体育大学(以下、日体大)ですよね。今回、金メダルを獲った選手は全員が日体大関連の選手なんですよ。樋口黎、清岡幸大郎、日下尚、文田健一郎は全員が日体大で練習してて、それから藤波朱理も日体大の女子で練習してますし。ちなみに、元木咲良、桜井つぐみ、鏡優翔も先生やコーチが日体大出身の若手なんですよね。

    ――
    みんな日体大ネットワークの中にいるんですね。

    保高
     なので女子はもちろん、男子に関しては業界外の人から見ると、なんとなく「ゴリゴリの外国人に囲まれて世界で勝つのは難しいんじゃないの?」と思うかもしれないんですけど、みんな絶対に金メダルを獲ると信じてやってきてる。オリンピックでメダルを獲ったコーチはその中にひとりしかいないんですけど、自分たちが金メダルが獲れなかったのは日本人だからじゃないということをわかっていて。選手たちに「金メダルを獲れるんだ!」と信じさせてあげられたと思います。

    ――
    その成果なのか、男子も女子も重い階級でちゃんとメダルを獲ってます。

    保高
     今回獲ったメダルの中で一番階級が重いのは男子は74キロですね。その階級の高谷大地に関しては、外国の凄く強い選手がガチガチに緊張してたのもあるんですけど(笑)。

    ――
    そうだったんですか(笑)。

    保高
     高谷選手本人が言ってました。「こいつ、めっちゃ緊張してるな」って。彼はもともと凄くリラックスしていて。なぜなら「金メダルは獲れないだろう」と、ちょっとネガティブに考える選手なんですけど、それがリラックスにつながって。レスリングって対戦相手と一緒に入場口に並ぶんですけど、その緊張してる外国人選手を横で見て「こいつめっちゃ緊張してるなぁ~(笑)」と思ったので気が楽になったと言ってましたね。フィジカルも見た感じで負けてる気がするだけで、実際は負けてないってことを何年もかけて実感してますから。

    ――
    フィジカルでも世界と勝負できると。

    保高
     86キロの石黒隼士もメダルは獲れなかったけど、海外の選手にフィジカルは負けてないんですよ。だから、ちゃんと鍛えればやれることは実感してて。

    ――
    MMAやキックでは「外国人にはフィジカル負けするから」となりがちですけども……。

    保高
     たぶん、それちゃんとやってないだけですよ(キッパリ)。

    ――
    そう言われたら何も言い返せない(笑)。

    保高
     ああ、MMAでフィジカル差が出るのは前日計量というのもあるのかなあ?当日計量になってから日本の調子がいいようにも思います。指導法に関していうと、レスリングの日本人選手はもの凄い練習量をこなしてます。

    ――太田忍選手も言ってました。オリンピック向けの練習は「死ぬかと思った」と。

    保高
     やりすぎてみんなしょっちゅう口唇ヘルペスです。たとえば、選手たちが外国に武者修行に行くじゃないですか。そのレポートによれば、外国人はとにかく練習時間が凄く短いんですよね。1時間半とかで終わったりするらしくて。

    ――
    効率化されてるんですかね。

    保高
     そうかもしれないし、短いからこそ集中してガッとできると思うんですけど。逆に日本の選手は練習量がすごい。日本だと3時間近かったり、高校生の中には8時間やるところもあるんです。

    ――
    8時間って、ほぼ練習の1日じゃないですか!(笑)。

    保高
     日本人選手にスタミナがあるのは、厳しい練習を経験しているからだし、「こんなところで負けられない!」という気持ちで臨めるんじゃないかなと。

    ――
    最近は何かと脱・根性論的な風潮がありますけども、才能がある選手に根性トレをやらせたら確実に強くなるということですね。

    保高
     だから、みんな言ってますね、「根性も必要だ」と。日本人ってけっこう淡白な性格だったりするじゃないですか。ロシアやキルギス、インドの選手とかは、べつにそんなに練習やってなくても死にもの狂いの試合ができるんですよ。でも、日本の選手はそこまで練習で追い込まないと、たぶん執念みたいなものが出ないんだと思います。私はずっと練習を見てるわけじゃないんですけど、長年オーバービューで見てきた感じとしてはそう思います。あとはメンタル面。これは、最近メンタルコーチをつけてる選手が増えていて。私が把握してるだけで清岡、樋口、桜井はメンタルコーチをつけてやってるんですよ。そういう選手たちは「役に立った」と発信しているし、そこの存在も大きいと思いますね。

    ――MMAではレスリング出身の中村倫也選手もメンタルトレーナーをつけてますよね。

    保高
     ああ、たぶん同じメンタルコーチの方か、そのつながりだと思いますね。

    ――
    昔のスポーツ選手だと、それこそ「国家のために」とか何か自分が帰属するものがあるから力が出せたり、それこそ信仰や宗教も支えになりますよね。晩年のヒョードルもロシア正教に帰依してましたけど。

    保高
     日本人みたいにあんまり信仰がなかったりすると、どこに目標を置くかとか、何のために戦うかがはっきりわからなかったりすることがあるのかもしれないですね。特定の神もいないから、そうするとメンタルコーチに頼るという。樋口は強メンタルの持ち主なんですが「メンタルが弱い人がやるものと思っていたけど違った」と発信していますね。そういえばオリンピックに出なかったある選手と話をしたら「最近プレッシャーでずっとレスリングが楽しくない。オリンピックでの選手たちはすごく楽しそうに試合していた」と言ってて。文田健一郎にオリンピック前に聞いた話だと、東京五輪のあとは自分のやりたい投げるレスリングは研究されてなかなか投げを打てない。勝つために違うスタイルでやっていたけど、レスリングが楽しくなくなってしまったと。でも、昨年世界選手権決勝で試合したキルギス選手は警戒しすぎずに戦ってくれて、自分のやりたいレスリングができて楽しかった。そこから元のスタイルに戻してからまたレスリングが楽しくなったと言っていました。それでオリンピックでも勝つことができたんだから、やっぱりメンタルは重要ですね。

    ――
    自分を信じきれるメンタル、そして地獄の根性トレが支えていたわけですね。

    保高
     川井姉妹に「外国の選手とフィジカル差での不利を感じるか」って聞いたんですが、やっぱり感じないと。「アフリカ系の選手はタックルが伸びるバネがある」といった特長の違いはあるけど、それぞれが得意なところどうを使ってどう伸ばして苦手をどう克服していくかだそうです。

    ――
    たとえばドーピング抜き打ち検査があるから、外国人と対等に戦えていることもあるんですかね?

    保高
     「ドーピング抜き打ち検査があるからクリーンだからだろう」と思うかもしれませんけど、外国の選手でもやってる選手はいるみたいですねぇ。


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    ・レスリング界にも朝倉未来がほしい……13000字インタビューは会員ページへ続く


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    最終更新日:2024-09-17 09:12
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