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グレコローマンからMMAに転向! 今年はPFLでも活躍した泉武志選手インタビュー!(聞き手/ジャン斉藤)






――
泉選手は何事もチャレンジ精神が旺盛というか、いろいろぶっ飛んでますよね。

 ハハハハハハ。たしかに自分でも変わってるとは思いますね。

――本人を前にして言うのもなんですが、無計画な感じで突き進んでるように見えるんですけど。

 いやあ、一応計画をしてるつもりなんですけどね(笑)。

――まず小さい頃からレスリングをやってきたわけじゃなくて、高校途中から突然始めたわけですよね?

 そうですね。とりあえず「全国に行きたい!」という理由でした。

――「オリンピックに出るならレスリング」って大学入学後にレスリングを始めたジャンボ鶴田的ですね(笑)。それまでやっていたバスケでは全国は目指せないと思ったんですか?

 バスケでは行けないなと思いました。そのバスケ部は指導者も来ないし、練習メンバーもやる気ない。これでは全国には行けないし、自分の夢が叶わないと思ったんで。で、兄貴2人が全国に行っててバカにされるんですよ。一番上が競歩、真ん中の兄貴がバレーボールだったですけど。

――お父さんもアスリートだったんですよね?

 お父さんは陸上でインターハイに出てますね。お母さんはただのママさんバレーボールですけど(笑)。

――お兄さんに倣って競歩やバレーをやろうとは思わなかったんですか?

 中学のときにバレーボールを一瞬やろうと思いましたね。でも、かわいいなと思ってた子がテニス部に入ると言ってたので、俺もテニス部に入りました(笑)。

――高校でバスケを始めたのはなぜですか?

 最初は兄2人が通った進学校に行きたかったんですけど、中学の友達から「この高校で一緒にバスケやらないか?」って誘われて。ソイツとは小学校のときに一緒にバスケをやってて、ゴールデンペアとして活躍してたから、絶対に全国に行けると思って。その高校は名前を書けば入れるところなんで勉強もしなくなったんですけど。ソイツが途中で「ごめん、やっぱり別の高校に行く」と言われて。

――えー!(笑)。

 最悪ですよ(笑)。また進学校に戻ろうとしたら、先生から「オマエの学力じゃ無理だ」と。そのままその高校に行くことになったんですよね。でも、バスケ部は全然やる気がなかったのでレスリングに……

――レスリングはまったく知らなかったんですよね?

 全然知らなかったです。

――よくやりますよ(笑)。

 でも、親父が「レスリング部にいい指導者がいる」と。レスリング部の奴がクラスメイトでいたので、「どんな感じかタックル入ってみて」から始めました(笑)。

――レスリングって小さい頃からやってないと、勝てないですよね?

 高校から始めた奴はなかなか勝てないです。かなりの差があって、高校のときはもう埋められず。せいぜい全国に出れるぐらいのレベルぐらいです。

――それでも全国に出られるんだからすごいですよ!血筋的に運動神経に優れてるとか。

 自称「球技の神様」でした(笑)。

――球技の神様!それって運動神経が相当あったわけですね。

 そうですね。でも、レスリングは最初のマット運動だけでもうやめようと思うくらい、つらくて……。

――高2から始めて、日体大のレスリング部に入るってハードモードですよね?

 推薦で入ったんですけど、変な話、誰でも入れるには入るんです。でも、潰れる奴は潰れます。

――部員はけっこうな数なんですよね?

 ボクのときは1学年20人ぐらいいて、4学年なんで80~100人はいましたね。

――その中で生き残ることが大変なんですね……。

 入ってすぐに2~3人は逃げていきます。寮生活だから「あれ、アイツの荷物がねえな」みたいな。そのまま大学もやめちゃいます。

――寮生活だと先輩・後輩の関係も大変ですし。

 下級生が何かミスしたら「連帯責任だ!」ってことで……まあ、いろいろありましたよね(苦笑)。深夜に叩き起こされて「酒のツマミを買ってこい!」って命令されたり。それで朝6時からの朝練ですからね。かなりしんどいですよ。

――いまは学生スポーツのイジメは告発される時代ですけど、当時は本当に酷かったんでしょうね。

 ボクも嫌いな先輩いっぱいいます(苦笑)。

――そんな泉さんは後輩にはどうだったんですか?

 ボクは後輩に舐められやすいのか、上下関係はあんまりないですね。(太田)忍とは仲良いんですけど、ボクにタメ口で舐めてるんですよ(笑)。

――ハハハハハハ! 大学に入ってからグレコローマンをやるわけですよね。

 そうです。高校からグレコローマンをやってる奴もいるんですけど、日本ではだいたいは大学からですね。

――なぜグレコローマンを選んだんですか?

 大学に進むときに恩師に言われた言葉は「レギュラーになりたかったらフリースタイル。全日本チャンピオンになりたかったらグレコローマンを選べ」と言われてたんですよ。あとグレコは上半身だけでやるので、見てるぶんには楽そうに見えたんですよね。全然違いましたけど(笑)。

――ハハハハハ! 他の部員が事件を起こして、レスリング部自体が試合出場停止処分を受けますよね。

 ああ、よくそのこと知ってますねぇ。しかもボクの部屋っ子だったんですよ。

――そんな気配はあったんですか?

 まったくなかったから、びっくりしました。年に一度、草津で合宿するんですけど、そんときインフルエンザが流行ってて。インフルエンザにかかった組は寮に残ってたんですよね。そいつも草津には行かなかったら……。

――事件を起こして1年間出場停止。

 1年試合に出られないんだったら……ってことで、やめてく奴もいました。とくに4年生がかわいそうでしたね。最後の大会なのに出られないので。

――その数年前にも事件が起きて、ペナルティがより重くなったという話ですよね。

 ああ、それも知ってるんですか。それ、ボクの先輩です。その人もまさか……って感じで。

――閉鎖された空間だと、いろいろとおかしくなっちゃうんですかね。

 やっぱりストレスは溜まりやすいですよね。それもあってやめてく人もいますね。

――大学卒業後はどこか企業に就職してレスリングを続けなかったですよね。実業団からの誘いはなかったんですか?

 なかったですね。どこかに所属してないとなかなか食っていくのは……レスリングってコスチュームに1社しかスポンサーを付けられないんですよ。何社もロゴが入ってないですよね。

――たしかに。

 スポンサーというよりも所属企業のロゴなんですよね。格闘技に来たときに「こんなに何社も付けていいんだ!」ってビックリしましたけど(笑)。

――じゃあ企業に所属せず、スポンサーをたくさんつけて活動……するわけにもいかないわけですね。日体大のレスリング部からでも実業団に行けない人はけっこういるんですか?

 ほとんど入れないですね。9割8割は就職します。教員が多くて、あとは消防や警察とか。

――成績優秀じゃないと誘いはないわけですね。

 インカレチャンピオンだと弱いです。全日本1位とか3位とかじゃないと。

――オリンピックを狙えるぐらいの位置に入ると声がかかるってことですか?

 もしくは才能を見抜いて「こいつは伸びるな」と思ったら、先に声をかけとくとか。

――卒業後はどう考えていたんですか?

 レスリングを続けてもメシは食えないなと思ったんで。たとえオリンピックに出たとしても……けっこう食べていくのは大変だなと。

――レスリングは柔道と比べてセカンドライフのアフターケアが弱いというか。

 もちろん成功されてる方もいますけど、ここでレスリングは区切って就職しようと思って。

――その前にお笑いタレントになろうとしたんですよね?

 ああ、そうです(笑)。一晩ずっと考えて「俺に何ができるんだろう。何をやればワクワクするんだろう」と。歌手になるか、お笑い芸人になるか。

――歌手とお笑い芸人の二択ですか(笑)。

 他人を笑顔にして幸せにできるって、すごくいい職業だなと思ったんで芸人にしたんですけど。一番大きい吉本に応募しようとしたら、時期が違っていたからワタナベ・エンターテインメントのオーディションを受けに行って。スクールに入らされる感じなんですけど、親を説得しないといけない。正月に実家に戻ったときに「芸人になりたい」と明かしたら、両親も兄貴2人も大反対。「大学まで行って、就職せずに芸人なんて、ふざけんな!」と。

――ご両親の気持ちはよくわかりますよ!(笑)。

 ハハハハハ。お父さんと兄貴2人は説得できたんです。でも、お母さんだけは「絶対に無理。家を出て行ってくれ」と言われてしまって。そこまでの覚悟はちょっと俺には……。

――そこまでの覚悟を持ってくださいよ(笑)。

 そうですよねぇ(笑)。母親にすごい苦労をかけてきたんで、また迷惑はかけられないなって。そうしたら、近所に小さい頃から知ってる兄貴分的な人が東京のテレビ制作会社のディレクターをやっていて。話を聞いてもらったら「まずADになって、そこから芸人になればいいじゃん」と。テレビの中身を知ろうと思ってADになりました。

――テレビ制作会社に入ったんですね。

 そうです。9ヵ月間、働いてました。

――ADをやめた理由も面白いんですよね。


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