Omasuki Fightの北米MMA抄訳コラム。今回のテーマは目前に迫ったUFC182のジョン・ジョーンズvsダニエル・コーミエ。これを読めば試合が100倍楽しめます!!





◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯
試し読み可能! 
非会員でも購入できる大好評インタビュー詰め合わせセット! par11は大好評インタビュー78万字が540円!!  http://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar697901

①【ヤマヨシかく語りき】
山本宜久17000字「ヒクソンと戦ってるとき放送禁止用語が聞こえてきたんです……」
「高田さんとの最後の会話はいまでも忘れられないですね……」

②小佐野景浩の「プロレス歴史発見」ジャンボ鶴田
「馬場さんの信頼を失い全日社長の座が消えたジャンボは怪物になったんです」

③K−1のビッグマウス、魂の叫び! 木村“フィリップ”ミノル
「いまの格闘技界はお客さんの目線を気にしすぎです。クソですよ!」


④【総合格闘技が生まれた時代シリーズ】ターザン山本
「佐山サトル、前田日明、船木誠勝、石井館長がプロ格という怪物を作ったんですよ!」

⑤サブミッションアーツレスリグとは何か? 
「強い奴はだいたい友達」麻生秀孝は格闘技界のゴッドファーザーだった!!

⑥地下格闘技の英雄が語る“チカカク”の恐るべし実態――渋谷莉孔
「覆面を被って1vs2で戦ったこともありますよ」 

⑦「プロレス桃源郷へのいざない」小泉悦次さん■アナタはなぜブログを更新するのか②
昭和のクラシックプロレスを追求するプロレス考古学ブロガーのプロレス観とは?


◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯



13日を境に、ヤツはこれまでとは別人になる」

ジョーンズ対コーミエ、決戦ムード最高潮!



今週末のUFC182「ジョン・ジョーンズ vs. ダニエル・コーミエ」は、間違いなく近年のUFCで、最も期待度の高い試合の1つだ。ビッグファイトに必要な要素はすべてそろっている――2人の強力なキャラ、2人の全盛期の無敗のファイター、賭けられた本物のタイトル。事前の下馬評は若い王者がわずかに有利ながら、理論上はるかに強力なレスリング力を持つコーミエにも充分にチャンスがあると信じる理由がある。ジョーンズには身長差6インチ、リーチ差12インチという圧倒的な体格差があり、アレクサンダー・グスタフソンを除いて、ジョーンズとのリーチ差問題を解決できた選手はかつていない。しかし、コーミエが距離を詰めることができなかった選手もまた、これまでに存在しない。


コーミエはこれまでのMMAキャリアで1ラウンドも落としたことがなく、守勢に回ったことすらない。テイクダウンされたり、ノックダウンされたこともない。ヘビー級出身ということもあり、大男との対戦経験はジョーンズより豊富で、かつては毎日のように、ケイン・ベラスケスとスパーリングをしていたのだ。


試合のプロモーションも申し分ない。昨年8月、ラスベガスのMGMグランドガーデンホテルのロビーでのステアダウンで、ジョーンズが額をおしつけ、コーミエがジョーンズの胸を突き返す。その刹那、UFC広報のデイブ・ショーラー氏がまるで紙相撲の力士のように背景に吹き飛ばされた。靴が飛び交い、ジョーンズは狂乱の咆吼。当日夜のESPN Sports Center番組で思いがけなく収録され、後に公開された両者による「殺してやる」という脅迫発言の応酬。ジョーンズのケガによる試合の延期。FightPassで生中継されたネバダ州アスレティック・コミッションでの乱闘劇の申し開き。その結果課せられたボランティア活動―――これらの経緯をコラージュのように振り返るだけで、決戦ムードが否が応でも高まる。

コーミエは、ジョーンズの印象について次のように語っている。

 「何か大きなひどいことをされたとか、そういうことではないんだ。むしろ、時間がたつにつれて、ジョーンズがなにかしら気に障ることをしてくることに気がつく。小さなことが積み重なり、私のことやレスリングのことを小馬鹿にしていると感じるようになってきたんだ。本人に悪意があるのかどうかもわからない。ただ、『ああ、面倒くさい。なんなんだこいつは?』という感じなんだ」


 「『チェール・ソネン対アンデウソン・シウバ』を会場で観戦していたときのことだ。ヤツは私のところにやってきて、握手を求めた。私は握手に応じながら、『よろしい。なかなかいいヤツじゃないか』と思った」


 「でも次の瞬間ヤツは、『あのー、ライトヘビーに落としてくるつもりなんすか?』と聞いてきた。だから私は『そのつもりだが』と答えた。するとヤツは、『そうですか。じゃあ、いつでもやってやりますよ』と言うんだ。えっ?訳がわからない。こちらはまだ何も言っていないというのに。ヤツはだいたいいつもこんな風なんだ」


 「メールが来れば、『かかってきなさい』なんてことが書いてあって目を疑う。けしてアホな男ではないんだろうが、どうも面倒くさい。その手のことをしょっちゅうやって来られると、やがてこいつは悪人だと思うようになってくるんだ」


ジョーンズの記憶による、コーミエとの初対面時の会話はこんな風だったという。


ジョーンズ 「あなたがケイン・ベラスケスのレスリングコーチなんですか?あなたはレスリングがとても強いと聞いています」


コーミエ 「ああ、私はオリンピックレスラーだからね」


ジョーンズ 「でも僕はあなたのことをいつでもテイクダウンできますよ」


コーミエ 「キミはいったい誰としゃべっているのか、わかっているのかね?」


ジョーンズはただふざけていただけだというが、「あれ以来、ずっと嫌われていると感じている。もっとも、全般的に言って僕も彼のことは好きになれないし、一緒に仕事をする人全員を好きになる必要はないだろう」と語っている。

今回の試合に先立つインタビューや記者会見でも、ジョーンズはどうも一言余計な、ムダに敵を増やしそうな天然系のトラッシュトークを炸裂させている。

 「コーミエの前回の試合はダン・ヘンダーソン戦だっただろ。50歳のおっさんに勝ったあとで、絶好調の27歳のアスリートと戦うわけだ。ダン・ヘンダーソンに勝った程度で安心して、ライトヘビー級を制することができると思っているのなら、コーミエは悲しい男だよ」


 「ダニエル・コーミエはもうずっと前から、僕と戦いたがってきた。で、60歳のジジイのダン・ヘンダーソンを倒した後、マイクを取って僕のことを挑発したんだ。それなら希望をかなえてやろう。よほど痛い目にあいたいんだろう」


 「コーミエは自分の体格をうまく使っていると思うよ。あんなに背が低くて太っているのにね。まあでも、ああいう体型ではアスリートだとはいえないね。そのわりには、レスリングでもMMAでも、良くやっているほうだと思うよ」


 「僕が思うに、コーミエというのは、似たような体格の人にとっての希望の星なんじゃないかな。こんな体型でも偉大なことを成し遂げることができるんだ、という。気持ちの持ち方次第、体の使い方次第ということなんだろうね」



こうしたジョーンズの天然ヒールに対抗して、コーミエは実に見事なベビーフェイスの舌戦を返している。


 「これまで私は、オリンピック以上にビッグな出来事なんて、あるわけがないと思ってきた。アメリカの代表7人のうちの1人として戦うんだ。でもこの試合はそれよりビッグだ。注目度はうんと高いし、金銭的にも人生が一変するほどだ」


 「振り返れば、2011年のNCAAトーナメント決勝で、米カレッジレスラー史上最強の男、カエル・サンダーソンに負けた。2004年のアテネ五輪では、希代のヘビー級レスラー、ハジムラト・ガツァロフ(ロシア)に負けた。当時は、負けたのは、自分がまだチャンピオンにふさわしくなかったからだろうと思っていた。でも今になって気がついた。もしあのとき自分が勝っていたら、いまの自分はここにいない。すべては、13日に私がUFCチャンピオンになるために必要な敗戦だったんだ」


 「ジョンはこれから落ちていくことになる。私に負ければ、ジョンにはすぐに再戦の機会が与えられるだろう。そのことは別に構わない。ただ、ジョンは落ちていく。どういう意味かというと、ヤツは自分が負けるわけがない、向かうところ敵なしだと信じ込んでいる。しかしいったん、自分にも負けることがあるんだ、と言うことを理解したら、ジョンは『その他大勢』のところまで落ちていくことになるんだ。そうなると、10連勝はもうできない。今後のジョンは、勝ったり負けたりしながら、答えを求めてさまようことになる。ヘビー級に移ったり、またライトヘビーに戻ってきたりする。私の目標は、ただジョンに勝ってベルトを奪取するだけでなく、ヤツのキャリアを停滞させることにある。いったん負ければ、ヤツの頭の中には疑問や不信が渦巻き、その迷いはけして晴れることがない。13日を境に、ジョンはこれまでとは別人になる」


おもしろいことにジョーンズも、単に勝つだけでなく、コーミエのキャリアを低迷させそうなゲームプランを口にしている。


 「あまりにレスリングの練習に集中してきたから、レスリング対応はほとんど完璧になった。心理的にも技術的にも完全に対応して、試合中にもレスリングが無意識で出るんじゃないかと思う。だから僕はダニエル・コーミエとレスリングをする。僕のプランは、彼にテイクダウンをトライさせてヘトヘトにしてやることだ。そして、僕がコーミエからテイクダウンを取る。いまや僕の方が能力が高いんじゃないかと思っている。だから、あえてダニエルの強みで勝負してやる」


ジョーンズのコーチ、グレッグ・ジャクソンは、コーミエの強みについて、ゲームプランについて、次のように語っている。


 「コーミエのレスリング力は明らかに大きな脅威だ。それに彼にはすさまじいスピードとパワーもある。特にあのスピードに関しては、あんな体重の男があれほど早く動くと言うことは、世間の人はほとんど理解できないくらいだと思う」


 「ただ私の見たところ、彼がこのMMA業界の中で最もうまいのは、時間の使い方なんだ。テイクダウンをとり、ダメージを与え、フィニッシュしようとする。そこで彼は気がつくんだ。『残り時間2分か。このラウンドは確実に取っているな』。そう思うと彼はますます動き続ける。そのラウンドを絶対に落とさない。そういうところが非常に頭がいいんだ。こういうことをちゃんと考えることができる選手は本当に少ない。ほとんどの選手は、その場その場で精一杯で、残り時間なんかわかっちゃいない。でもダニエルはずっと時計を見ている。ボカスカ殴っていたと思ったら、時計を見る。『よし、あと1分半だな』などと考えて、また動き回りながらジャブか何かを打つ」


 「たいした話に聞こえないかもしれないが、4ラウンドあたりまでそんな調子でやられると、大変なことになってしまうんだ。僅差でタイトルを持って行かれかねない。だからダニエルについては、技術の高さだけではなくて、頭の良さにも注意しないといけない」


 「ゲームプランとしては、ダニエルをテイクダウンするつもりだ。全局面で圧倒する。孫子は、常に敵の弱みにつけ込めと教えているけれど、私はそれは正しくないと思っている。こちらに十分な能力があるなら、相手の強みをつぶした方が、相手の心はウンと早く壊れる」


 「格闘技って恐ろしいだろう?試合では、対戦相手はキミの防護壁をぶっ壊しに来るわけだ。キミにも自信があるだろう。『ピンチになっても、こうすれば勝てる』というものがあるだろう。その防護壁が、いきなり出先にぶち壊されてみろ。心理的にはもう、勝負は積んでいるんだよ。心は加速度的にドンドン折れていく。ただ試合を諦めるだけではすまないぞ。心が折れると言うことは、自分には敵の攻撃をしのぐことができないと認めるということなんだ。だからこそ場合によっては、相手の強みを叩くことが重要なんだよ」



レスリングオブザーバーは、この大会のPPV売上数を70万~75万件と予想している。2014年のPPVで最も売上数が多かったのは、クリス・ワイドマン、ロンダ・ラウジーが登場したUFC17554万件だった。昨年のどの大会よりも、期待感が熱く高まるビッグマッチのゴングがまもなく鳴る!



(文 高橋テツヤ Omasuki Fight


(出所)

David St. Martin, Morning Report: Jon Jones unimpressed with Daniel Cormier's win over '50-60' year-old Dan Henderson, Dec 29 2014, MMA Fighting


Shaun Al-Shatti, Can Jon Jones outwrestle Daniel Cormier? He's going to try..., Dec 22 2014, MMA Fighting


A.J. Perez, He is the Bad Guy, Jon Jones is OK with That, Dec 29, 2014, UFC.com


Marc Raimondi, Jon Jones on 'thicker' Daniel Cormier: 'His body type doesn’t scream athlete', Dec 30 2014, MMA Fighting


Chuck Mindenhall, For Jon Jones and Daniel Cormier, no hyperbole needed, Dec 30 2014, MMA Fighting


Kevin Iole, Despite hype, Daniel Cormier’s pursuit of Jon Jones’ UFC belt isn’t personal, Dec 30, 2014, Yahoo Sports


Shaun Al-Shatti, Jon Jones compares fighting Daniel Cormier to fighting Chael Sonnen, Dec 25 2014, MMA Fighting


David St. Martin, Morning Report: Daniel Cormier plans to 'rid MMA of Jon Jones' at UFC 182, Dec 18 2014, MMA Fighting