講演などで、日本各地を訪れる機会がある。先週は熊本へ行ってきた。先日は青森にも行った。
地方の街を訪ねると、僕はいつも思うことがある。
どこの商店街も「シャッター通り」になっている、と痛感するのだ。

地域の活性化は、地方だけの問題ではないだろう。深刻な状況の街は首都圏にもある。
日本の人口は、これからますます減っていくのだ。
本当に地域活性化を、真剣に考えなければならない時期にきているのだ。

先日、僕が担当するラジオ番組に、おもしろい投書があった。
ニューヨークに住む男性リスナーから、こんな提案があったのだ。
「例えば、AKB48のメンバーが、47都道府県をそれぞれ担当する。
一人ひとりが各県の盛り上げ隊長になって、さびれた商店街にいきなり顔を出す。
そして、『その商店街の売り上げが1000万円上がったら握手会を開きます』と発表すれば、
ファンがCDではなく生活用品や食料品を買いに行くだろう」
という内容だ。おもしろいアイデアだと僕は思う。

AKB48のファンは、総選挙のためにCDを100枚、200枚も買う人もいるという。
そういうファンたちがそのうちの一部だけでも、商店街で買い物するようにしたら、
すごい金額になるだろう。それだけではない。
テレビで活躍する人気者が来るという「非日常性」が、街に活気を呼ぶのではないか。

AKB48はこのような「地域フランチャイズ」を意識している。
「AKB」は秋葉原、「SKE」は名古屋の栄、「NMB」は大阪の難波、「HKT」は博多で
「JKT」はジャカルタ……。それぞれの地域に密着して、活動するという発想だ。

先日、インドネシアのジャカルタでJKT48のコンサートを見た。
現地の活気たるや素晴らしいものだった。ジャカルタの若者がJKT48に熱狂しているのである。
このような現象が、これから世界中の街でも起きていくのだろう。

かつてプロ野球は、パ・リーグは首都圏と関西が本拠地の球団ばかりだった。
だが、いまは球団本拠地が地方に散らばっている。
ソフトバンクは福岡、日本ハムは札幌、楽天は仙台に本拠地を置いている。
地域サービスに努力したこともあり、これらの球団の本拠地移転は成功しているといっていい。
昔は「人気のセ、実力のパ」などと言ったものだが、いまや人気だってセ・リーグに
負けていない。観客動員数も差がなくなっている。

「おらが街の球団」があれば応援したくなるように、「おらが街のアイドル」がいれば
応援したくなるはずだ。そして、それこそが地域の活性化に一役買うのだ。

『AKB48の戦略! 秋元康の仕事術』という本で、僕は秋元さんにいろいろな話を聞いた。
この本のなかで秋元さんは、次のような話をしていた。
AKBをオープンソースにしてそれぞれの専門家が「AKBはこう使えばいい」と工夫して、
改良してひろがっていくことがおもしろい、と。
いろいろなシェフに料理してもらい、新しい魅力を引き出してほしい、とも語っていた。
そのために、どんな人とも組むと。

そんな秋元さんだから、このアイデアを理解してくれるのではないか。
もし、彼がプロデュースしてくれるとすれば、きっとおもしろい仕掛けを考え出してくれる
だろうと僕は思う。

『AKB48の戦略! 秋元康の仕事術』では、AKB48を題材としながら、秋元康の
ヒットのノウハウをすべて聞き出した。
いわば、ヒットメーカーの「企業秘密」を僕は聞きまくったのだ。
あまり語ることのない秋元さんだが、僕のぶしつけに、意地悪な質問にも逃げも
はぐらかしもせずに答えてくれた。
その意味で、プロデュース術、発想術、企画術といった、“ヒットメーカー・秋元康”の
頭の中身がすべて詰まった本になったと思う。

そしてこの「企業秘密」は、現状を変えなければいけない、改革をしなければ
いけない人たちには、とても役立つノウハウだと思う。
ビジネスパーソンにも、役人にも商店街の人たちにも、十分に役立つだろう。
ぜひ手にとって読んでほしい。必ずや仕事のヒントを見つけることができるだろう、
と僕は思う。

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