さて、集団的自衛権に対するメディアの反応はどうだろうか。「読売新聞」「産経新聞」は賛成、一方、「朝日新聞」「毎日新聞」、そして「東京新聞」は反対だ。はっきりと分かれている。
僕は、「中立」報道というものは不可能だと思っている。だから、新聞各社が立場を鮮明にして、自由に意見を戦わせているいまの状況は、健全であると見ている。
そんななか、月刊誌『WiLL』が、目を引く論文を掲載した。「日本を悪魔化する朝日新聞」。書いたのは「産経新聞」の古森義久さんである。古森さんは、「朝日新聞」の報道は、「外部の要因はすべて無視、脅威や危険はみな自分たち日本側にあるとするのだ」という。すなわち「日本は悪魔だ」という理念のもとに、主張を展開していると指摘しているのだ。
たしかに「朝日新聞」の報道は、一貫している。たとえば、「集団的自衛権を行使できるようになる」ことを、「戦争をする」と報じる。「首相の靖国神社参拝」については、「軍国主義賛美」だから「反対だ」と論じている。
それでも各社が立場を鮮明にして、報道することは健全なことだ、というのが僕の考えだ。とはいえ、「朝日新聞」「毎日新聞」「東京新聞」のこうした報道姿勢が、日に日にリアリティを失っていることもまた事実である。
「集団的自衛権の行使は国際法で認められています。どうして日本だけが勝手に『禁止』だと自国を縛り、行使できる国に変えようとする政治家を悪者扱いするんでしょう。こんなに国民が国を信用していない国は、他にないんじゃないでしょうか」
戦争を知らない世代の僕の番組スタッフが、こう言っていた。彼の意見はよくわかる。そして、彼のような人が、いまの「朝日新聞」「毎日新聞」「東京新聞」にリアリティをまったく感じなくなっているのだろう。
だが、「けれど」と思うことがある。僕たち戦争を知っている世代は、国家が平気でウソをつくのを目の当たりにしてきた。戦争に負けた瞬間、コロっと態度を変える大人たちを見てきたのだ。そのような経験をしてきた僕たちにとって、「国を信用」するのは非常に難しいことだ。