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来年2月に定年の松田博資調教師(69)は今年が最後の札幌記念(G2、芝2000メートル、23日)になる。06年はアドマイヤムーン、昨年はハープスターで制し、北海道の競馬ファンに愛され続けてきた“マツパク厩舎”。おごりも気負いもなく、目指すは昨年に続く連覇。ラストイヤーをラストインパクト(牡5)で飾る。
木曜朝、管理馬の体調を確認する松田博師
思い入れがあるのは、勝った2頭だけではない。札幌記念3勝目への意気込みを聞かれると、力強い言葉が返ってきた。「どの馬だって勝ちたいと思ってやってきたからな。それは俺だけじゃないやろ。ここを走って上を目指していくんやから」。ベガの子アドマイヤドンとの02年、仏遠征目前だったブエナビスタの09年…。どれも大切な思い出だ。
毎朝の日課は管理馬の調教、体調を見極めてから、散歩で体調を整えること。栗東でも滞在先でも変わらない。札幌では競馬場から1キロ以上離れた場外市場まで歩く。「大好きだよ。ここの人たち、競馬場の近所の人たちが俺を待っていてくれるし、待ってくれる場所があるんやから。今年で最後だけど」と豪快に笑う。
行きつけのすし店の大将は言う。「先代の頃から毎朝、もう十数年。競馬では松田博厩舎を応援しますよね。先生は競馬のことも話すけど、いつも言うのは『競馬は分からん』って」。
障害騎手として活躍し、調教師転身後はベガ、ハープスターなどの名牝を育て上げてきた。00年札幌のクイーンSではレッドチリペッパーに自らが騎乗して最終追い切り。「あのころは自分で乗ったからレースでも指示を出したけど、今は乗らないからな」。
調教助手、厩務員…。人を信じる流儀の原点は亡くなった父の和要武(とよたけ)さんだという。「俺の一番の財産は佐賀で調教師をしていた父。人生で金を取るか、信用を取るか、どっちかだって教わった。父は信用を取った。俺もそうしてきたつもりや」。
馬主やクラブ会員1人1人のために、牧場から厩舎まで馬にかかわってきた1人1人のために、木曜朝も管理馬の状態把握へ厳しく、優しいまなざしを向けてきた。ラストインパクトには「ここでいい競馬をして、秋にG1を狙っていきたいさ。飛躍のきっかけにしたい」と大きな期待をかける。ファンの温かい声援を受け、松田博厩舎が最後の札幌記念に挑む。【木南友輔】
<松田博師の札幌記念 過去2度Vのコメント>
▼06年アドマイヤムーン 4角までは後方の馬群にいたが、直線では外から異次元の末脚を見せて抜け出した。ただ1頭の3歳馬が古馬をねじ伏せて勝利。「ここでいい勝負ができなければ、次どうもこうもないからな。格好をつけてくれて良かった」
▼14年ハープスター 後方2番手から3角過ぎで動き、直線で抜け出し。食い下がるゴールドシップを振り切り、3/4馬身抑えてゴール。「まあ、良かったわな」