細菌兵器などを投下した後に無傷で帰還する。
2004年に”折返しルール”を導入した『鳥人間コンテスト』に
その可能性を見た我が国の防衛省技術研究本部は
毎年琵琶湖で行われる同大会の優勝候補チームに対し
密かに多額の軍事予算をつぎ込んでる。
言わば次の戦争は滋賀県から始まるのだ。」
(後藤しがひと著『戦争と平和堂』より)
というデマを飛ばして久しい私にとって
滋賀県は「群馬県」に次ぐ標的と言っていいだろう!
両県の共通点と言えば
「海がない」だ!
ところが群馬県民と違い
滋賀県民は
「我が県には海がある!」
と言って聞かない!
もちろん琵琶湖の事を言っているのだろう!
いくら「あれは海じゃない」と説得しても
決して理解してはくれない!
その理由を深く調査してみたところ
私は驚くべき事実を突き止める事となった!
親から”海だ”と教えられ信じていた子供が
「いや?
あれはたぶん海ちゃうで・・・。」
と疑問を持ち始めるのが小学五年生と言われている!
そこで滋賀県民は小学五年生になると
強制的に全員「うみのこ」に乗せられる!
「うみのこ」とは
滋賀県民以外は決して乗船できないとされる船舶で
「学習船」
という他では聞いた事のない船種に分類されている!
「うみのこ」に乗船した小学五年生達は
湖上での宿泊を強いられ
翌日まで家に帰る事はできない!
恐らくはそこで
「ここは海だ!」
という強烈な洗脳が施されるのだろう!
その証拠として成人した滋賀県民に
「”うみのこ”に乗って何をした?」
と尋ねるとほぼ全員が
「なにしたかなぁ?
覚えてないわ!
けどめっちゃ楽しかったで!」
と答える!
彼らは船上で
”琵琶湖は海だ”という情報だけを埋め込まれ
他の記憶はなんらかの方法で消されているのだ!
あなたも滋賀県民に会ったら
試しに尋ねてみるといい!
「滋賀の人々はバランス感覚に優れており
少し押したぐらいでは倒れない。
理由は彼らが常に
琵琶湖と他県のわずかな隙間を歩いて暮らしているからだ。」
(後藤びわひと著『24人のビリー・ミシガンとビアンカ』より)
推定407歳と言われる「末成由美」嬢!
懐かしの”まいど先輩”こと「ストリーク吉本」君!
世界の「桂三度」!
私のワークショップ生徒から落語家になった
「月亭八織(つきてい・はおり)」!
劇団「空晴(からっぱれ)」の「上瀧昇一郎」!
私の友人にも滋賀県民は多く
やはりそれぞれが琵琶湖という
”架空の海”を信じて生きている!
「滋賀県民を見分けるにはまず耳を澄ます事だ。
彼らは言葉の語尾に微妙な特徴を持っている。
本来であれば”おはようございます”という日本語を
滋賀県民は
”おはようございバス”
と発音している。
最近知ったのだが滋賀県民同士の場合
”おはようございギル”
という挨拶もあるようだ。」
(後藤ふなひと著『運動靴と黒い外来魚』より)
滋賀県民が最終兵器としてよく口にする言葉が
「琵琶湖の水止めたるぞ!」だ!
彼らはそれによって古都・京都へ供給される水を遮断し
京都人達が
「お喉がからからどすえ!
助けとーくれやす!」
と滋賀県にひれ伏す姿を想像しているらしい!
ところが!
地質学的に推測すると
琵琶湖から京都への水の流れを止めれば
琵琶湖の水位は著しく上昇し
やがて県内の主要商業地はもちろん
ほぼ全ての居住エリアが水没する事になる!
そして最後には
映画『母と暮せば』のエンドロールに匹敵するほどの
衝撃のラストシーンが待っている!
琵琶湖からあふれ出した水は
山の谷間を見つけ出し
やっぱり京都に流れて行くのだそうだ!
つまり彼らが最終兵器と崇める「琵琶湖遮断作戦」は
”結局京都に水を与える上で自分達は死滅する”
という壮大なるお馬鹿さんでしかないのだ!
前日まではとても暖かかった!
「伊勢崎大王ファーム」で群馬にいた時などは
多少の雨はあったものの
5月だと言うのにまるで夏のような日差しだった!
そこに落とし穴があった!
群馬から帰阪してわずか数日後
Tシャツに上下のジャージで「クロックス」サンダル
という極めて軽装で
私は「昆虫王チョロ君」の車に乗った!
そこからワークショップ「Royal Plant」のチンピラ野郎
「やまーん」の家に寄り
テントやバーベキュー台や折りたたみ椅子といった
数々のキャンプ用具を車に積み込み
3人で琵琶湖を目指した!
当初の予定では男女を含め
もっと多くのメンバーで
「琵琶湖でキャンプをしよう!」
と盛り上がったのだが
どういうわけか次第に盛り下がり
いざ実行となった時には
この親父3人しか参加者がいなくなっていた!
まぁいい!
今更はめを外した野外での騒ぎを期待する年齢でもない!
親父3人で静かに楽しく食事と酒でも楽しめば
それでいいではないか!
火を囲んで
男同士でしかできない
過去の恋愛話や悪事の懺悔などができたら
充分な”ひろぎ”となる事だろう!
途中のスーパーマーケットで
食材と大量のビールを買い込んだ!
食材の保冷と焼酎などをロックで飲む事を目的に
氷も購入してクーラーボックスに詰めた!
琵琶湖に近づくにつれ
素敵な農村風景へと変わり
”チョロ号”は広大な田んぼと畑の中を走り続けた!
田舎で育った私は
その景色をどうにも気に入り
「ちょいと車を止めて降ろしてくれ!」
と頼んだ!
この時点で「ん?」と思った!
気温が変だった!
ずいぶん寒かった!
見上げた雲は
あまり我々を歓迎していない事を告げていた!
しかしこの私を育てたのは
両親の愛情と「山形」の寒さだ!
暑さにはめっぽう弱いが
その程度の寒さなどひろぎの邪魔にはならない!
むしろ喜ばしい事だった!
琵琶湖ほとりのキャンプ場に到着し
テントの設営に取り掛かった!
先程停車した田んぼよりも
湖水を通過して吹いて来る風は冷たかった!
上空の雲は私に小声で言っていた!
「やっと来たな後藤ひろひと・・・。」
わいわい楽しく作業した後に
やがて立派なテントが完成した!
さっそく火を起こして
飲み始めようという事になった!
じっとしていたら少々寒いし
ビールなど飲めば更に冷えるのだが
それもまた一興ではないか!
だが・・・
大量に買い込んだビールのうち
私はこの写真の物を含めて
結局2本しか飲めない事など
知る由もない!
かつては調理人でもあった”やまーん”が
前日からしっかりとたれに漬けてくれた
スペアリブは絶品だった!
寒い寒いと笑いながら酒を飲み
素手で掴んだ肋骨をしゃぶる!
これぞ男のキャンプだ!
寒さが何だ!
いっぱい喋って
いっぱい笑えば
そんなものは微塵にも感じるまい!
しかし!
チョロ君からも笑顔は激減していった!
だめだ。
寒い。
猛烈に寒い。
日が落ちるにつれ気温はどんどん下がっていった!
笑い声どころか
話し声まで無くなっていった!
3人はただじっと黙って火に当たった!
風はどんどん強くなり
何度も食器が飛ばされた!
やがて座っていなければ
椅子までがひっくり返されるようになった!
風が運ぶ冷気は明らかに温度を下げており
やがては
いかに寒さに強い私でも我慢できない
猛烈な寒さへと変わっていった!
キャンプ隊長やまーんからは
「寝袋を持っていなければ
毛布が一枚あれば大丈夫!」
と聞かされていたので
私はその指示に従った!
私はたまらずその毛布を取り出してかぶった!
凍える手でスマートフォンを見てみると
琵琶湖周辺には強風注意報が出されていた!
湖であるはずの琵琶湖の湖面には
『仁義なき戦い』のサントラが聴こえてきそうなほどの
高波が立っていた!
その波を起こす寒風が
容赦なく我々の体力を奪っていった!
常人であればこの時点でキャンプなど中止だ!
3人共大人だ!
旅館に泊まるお金ぐらいは持っている!
車に乗って近所の温泉旅館に避難しよう!
そうだ!
それがいい!
・・・だめだ!
みんな既にずいぶんとお酒を飲んでしまった!
車など運転はできない!
この気象下に徒歩で旅館を探すなど
それこそ完全な自殺行為だ!
とにかくテントの中に避難しよう!
ばっはばっはと音を鳴らすテントの中で
我々はどうにか寒さをしのいだ!
琵琶湖は荒れ
恐ろしいような波音が
我々の小声の会話をかき消した!
あまりの寒さのせいで
写真を見ると
我々の表情には狂気が宿り始めている!
自分はちゃっかり寝袋を持っていたやまーんは
そこからぐーぐー眠りやがった!
寒さと轟音で眠れなかった私とチョロ君は
少しでも状況が変わっていないかと外に出た!
状況は大きく変わっていた!
その寒さは馬鹿馬鹿しいほどまで威力を増していた!
スマートフォンで気温を調べると
12℃と表示されていた!
気温と湿度と風速で体感温度を算出する
「ミスナール計算式」というものがある!
これによって
例えば
気温32℃
湿度70%
の部屋で
扇風機を強(3.9m/secとする)で回すと
体感温度が27.6℃と計算される!
ではやってみよう!
気温12℃!
雨もぽつりぽつりと降っていた!
土砂降りでの湿度が90%ぐらいだ!
琵琶湖のほとりという事も考慮すれば
ここは80%としてみよう!
気象庁のデータで
その日の琵琶湖周辺での最大風速を調べたところ
瞬間で19m/secだったそうだ!
気象庁によれば
あと1m/secで表記が”強風”から”暴風”に変わる!
それらのデータを揃えて入力すれば
ミスナール計算を行ってくれるサイトがある!
さっそく3つの数値を入力し
「計算」というボタンを押してみた!
そしてその時の我々がどういう境遇にあったのかを
今になってやっと理解した!
この温度は冷蔵庫でいうところの
パーシャル室と同位である!
肉類や魚類の保存最適温度だ!
火にいくら薪をくべても
吹き付ける強風で多量の酸素が送り込まれ
数分で灰になってしまう!
防寒具は毛布一枚!
体感温度は-2.9℃!
泣くな!
寝るな!
死ぬな!
広能昌三め!
何が”時代はパーシャルだ”!
なんなんだこのキャンプは!
これが果たして行楽と言えるのか!
いや!
これは恐らく罰だ!
私は滋賀県を馬鹿にし過ぎたのだ!
その怒りが今こうしてぶつけられているのだ!
お前など来るな!
琵琶湖はお前を歓迎しない!
群馬ではちやほやされたかもしれないが
ここではそうはいかない!
滋賀県はお前の所には行けない!
だがお前が滋賀県に来たのならば
決して楽しい思いなどさせるものか!
お前の慰霊碑は琵琶湖に建つのだ!
テントの中でいくつもの悪夢を見た!
末成由美から琵琶湖に引きずり込まれ
月亭八織から赤こんにゃくを喉に押し込まれ
上瀧昇一郎が演じる一人芝居
『ムカデ退治だよ昇一郎』が
延々終わらないそんな悪夢が続いた!
私はこの夢から覚める事はないのだと予感した!
このまま私は滋賀県の怒りによって
琵琶湖の底へと沈んでいくのだと感じた・・・。
だが・・・。
起きたらめっちゃ晴れていた!
やってくれたな滋賀県め!
今日からもっと馬鹿にしてやる!
たいそうひろいだ滋賀県なのであった!